新型コロナウイルス・感染防御と経済活動のバランス維持に必須なPCR検査
今週 7/21の 「感染防御か経済活動か?」 というタイトルのブログで ドイツでは 感染症学者と経済学者がコラボして 死者数を一定以下に下げながら GDPを最大化するためには 社会の人々の行動制限を どれくらいの期間 どのような度合いで行うのが良いか を検討し 実行再生産数が0.75になる程度に 経済活動を抑えるのが 最終的な経済損失が最も少なくてすみ 感染も早期収束できると予測される と報告されたことを紹介しました なるほどなあ と思っていたのですが この件に関する日本での検討について 政府が7月に設置した 「新型コロナウイルス感染症対策分科会」に 新たに経済の専門家として メンバー入りされた小林慶一郎先生が AERAや東洋経済のインタビューで語っておられます <PCR検査は 経済活動と感染制御を両立させるための唯一の手段> 小林先生らは ドイツでの知見をもとに分析され 行動制限は 8割接触削減でなく5割接触削減を3ヶ月間行い それに 積極的な検査・隔離療養の長期的実施を組み合わせることが 最も効果的であるだろう との結論を得られたそうです 5割の接触削減を3ヶ月間か うーん 3ヶ月というのが微妙な期間ですね でも こうして具体的に期間を提示されれば 頑張れるかな? 小林先生のインタビューで興味深かったのが 分析結果でも述べられていたように 積極的な検査・隔離療養の長期的実施の必要性を 強調されたことです AERAでのインタビューで 日本ではPCR検査数がG7のなかで最も少ないことを指摘され PCR検査は やろうと思えばできたはずで 物理的にもできたはずなのに それができなかったというのは 政策の方向性としてどこかに問題があったのではないでしょうか と疑問を呈されます 先生は PCR検査を重視される理由を説明されます 感染のリスクが高いと 人々の経済活動が委縮して経済が回らない どうすれば感染リスクを下げられるかと考えると PCR検査をして陽性者を隔離するしかない PCR検査と隔離は 経済活動と感染制御を両立させるための唯一の手段で これができないと 経済活動と感染制御は あちら立てればこちらが立たずの 二項対立になってしまう と語られます <感染症専門家の感覚 経済学者の感覚> そして分科会で実際に感染症の専門家たちと議論され 感染症の専門家の皆さんの感覚としては 検査をして隔離するという行為を「悪」と感じているようで 間違って隔離したら大変な人権侵害になるため 躊躇されているようだ それはプロとしての倫理観から来るものでしょうが 経済の専門家とはかなり感覚が異なる と感想を述べられています そうなのかな~? まあ日本の感染症対策行政は 過去に大きな誤りを犯していますからね 特に厚労省サイドには トラウマから来るものがあるかもしれません それにしても 書き手のような現場の臨床医が持つ感覚と 感染制御政策を考える公衆衛生や感染症の専門家の感覚は 微妙に違うと思いますが 経済学者さんの感覚は さらに異なるのですね 不謹慎な表現かもしれませんが とても面白いと思いました 小林先生のこのご意見について 尾身先生や岡部先生のご意見をお聞きしたいものです <この冬 どうするか?> 一方 小林先生は 現場の臨床医のようなことも語られます 今冬にインフルとコロナを峻別できないと 医療現場ではコロナが怖くてインフルの検査もできなくなる 発熱患者の検査ができないまま コロナが感染拡大したらとんでもないことになってしまう だから1日に10~20万件規模の検査能力を 確保すべきだと思う おっしゃる通りだと思います 書き手も この冬にインフルエンザが流行し始めたときに 発熱の患者さんが来られたらどうしよう と考えています まず最初に 唾液で新型コロナのPCR検査をして 結果が出るまで解熱剤で対処して 陰性ならインフルの検査をする という順番かなと考えていますが そのためにもPCRの検査能力の確保は重要だと思います <経済学者らしいお話> ちなみに小林先生は 経済学者らしく コロナ後の社会では 生き残れる企業と 生き残れない企業が出てくるはずで 政府は後者に対して 早く転業や廃業を促すような補助金を出すべきで いつか元通りのビジネスができる というふうに考えるのは厳しい とか 今は コロナの影響で実体経済のパフォーマンスが悪いため 金融緩和政策であぶれた資金の逃げ道として マネーが国債や株式に向かっている面があるけれど アフターコロナで異例の金融政策が手じまいとなると 株バブルの崩壊が起きかねない といった興味深い指摘もされていますが このあたりは また別の機会に詳しく紹介しようと思います
高橋医院