糖尿病と食後高脂血症の悪しき関係
糖尿病があると 食後高中性脂肪血症が起こりやすくなるので厄介です <糖尿病で食後高脂血症になる理由> 食事から得られた中性脂肪(TG)は カイロミクロン カイロミクロンレムナントに 多く含まれますが この両者は 通常 リポタンパクリパーゼ(LPL)により代謝されます LPLは インスリンにより 遺伝子発現が増強し活性化もされますが 糖尿病で インスリン分泌が低下していると LPL産生量が少なくなり 活性化もされないので その結果 カイロミクロン カイロミクロンレムナントが 代謝されず血中に留まり 食後高TG血症になります また インスリンの作用が低下していると 小腸での脂質の吸収が促進され カイロミクロンの合成も促進されます このように 糖尿病やインスリン抵抗性があると *カイロミクロンの合成が亢進し *カイロミクロンの分解が滞る ので 食後高TG血症が起こりやすくなります 実際に 糖尿病患者さんや メタボリックシンドロームの方では かなり高頻度に食後高TG血症の存在が認められます 前回説明したように 食後高TG血症ではsdLDLも増加しますから その合併により 糖尿病やメタボにおける動脈硬化進展のリスクが 増加してしまいます <糖尿病と脂質異常症の関連> 糖尿病患者さんにおける 脂質異常症について検討すると 糖尿病では 高LDL-C血症より 高TG血症・低HDL血症の頻度が高いことが 明らかにされています 糖尿病患者さんでは 健康な方と比べて TGを多く含むカイロミクロンが5倍以上増加しています また 前述したように 食後高TG血症ではHDLが低下しますから 低HDL血症が高頻度に合併しても不思議ではありません このように 食後高血糖と食後高脂血症は インスリン抵抗性等による インスリン作用の低下を共通の基盤として起き 両者が合併することも多いので 「食後代謝異常」 という疾患概念も生まれつつあります いずれにせよ 食後高脂血症と食後高血糖の両方が合わさると より血管内皮障害がひどくなり 相乗的に動脈硬化が進展することは明らかですが どちらがより危険かという検討では 食後高脂血症の方が 血管内皮機能をより大きく低下させる との報告もあります 食後高脂血症の方が 食後高血糖よりも持続時間が長く より長時間にわたって悪影響を及ぼすためと 考えられています 今日の話をまとめると 糖尿病の患者さんは 高TG血症や 低HDL-C血症がないか注意され たとえ空腹時のTG値が正常であっても 食後TG値が高くないか注意する必要がありますし 逆に 空腹時TG値や食後TG値が高い方は 空腹時高血糖 食後高血糖がないか 注意される必要があるでしょう 食後高脂血症と食後高血糖は 腐れ縁コンビなのです 心配な方は 空腹時だけでなく 食後2時間の血糖値 中性脂肪値を 一度測定されてみることをお勧めします
高橋医院