骨粗鬆症の解説をしてきましたが
最後に最近注目されている 
骨に関する話題を紹介します

筋肉が
マイオカインと呼ばれるホルモン様物質を産生して
全身の臓器に影響を及ぼしていることを
紹介しましたが

なんと骨も
ホルモン様物質を産生していることが
明らかになりました




骨細胞

*スクレロチン

*FGF23

*RANKL


骨芽細胞

*オステオカルシン

*オステオポンチン

という種類のホルモン様物質を
それぞれ産生しています

そして これらの骨ホルモンが
全身の臓器に作用して
さまざまな影響を及ぼしているのです



@スクレロスチン

骨細胞が分泌します

骨芽細胞の数を減らして
骨形成を強力に抑制します



若くして発症する骨粗鬆症では
スクレロスチンの増加がみられます


骨細胞には
骨にかかる衝撃を感知する働きがあり
衝撃の有無により
新しい骨を作るペースを決めています

運動せず 
骨に衝撃がかからない生活を続けていると
骨細胞がスクレロスチンをたくさん産生して
骨芽細胞数を減らして骨を弱くしてしまうので 
注意が必要です

骨量は 25歳くらいを過ぎると
加齢のために減少していきますが
それでも意識的に運動で骨に刺激を与えると
スクレロスチンの値が下がり
骨量を上げることができます


@オステオカルシン

骨芽細胞が産生する
骨基質タンパク
(非コラーゲン性カルシウム結合タンパク質)ですが

一部は血中に分泌されて 下図で示されるように
全身でさまざまな作用を発揮します




筋肉運動による刺激により
骨芽細胞でのオステオカルシン産生が
増強されます


老化による記憶力 筋力 生殖力の低下
への関与が報告されていますが

不安 鬱を抑制するとの報告もあります


精巣に働きかけ
男性ホルモンのテストステロンの合成を
促進します


また 糖代謝 脂質代謝にも関与しますが
これについてはあとで詳しく説明します


@オステオポンチン

骨芽細胞をはじめ
さまざまな細胞が産生・分泌します

免疫細胞の量を維持する作用があり

老化でオステオポンチン産生が減少すると
骨髄内での免疫細胞産生が減少して
免疫力が低下します



逆に 必要以上に産生されると
慢性炎症が起きて病気が発症しますが
この場合は
骨芽細胞よりT細胞による産生が主なようです


@FGF23

骨細胞が産生し

主に腎臓に作用して
リン酸の排泄・再吸収の調節により
リン代謝を制御し
血中リン濃度を低下させるように作用します

また
副甲状腺ホルモン(PTH)の産生・分泌を抑制します




慢性腎疾患(CKD)で高値を示し
CKDの進行 骨折 インスリン抵抗性
心血管イベント 動脈硬化など
さまざまな病的状態の発症・進展に関与することが
報告されています



@RANKL

成人では 主に骨細胞が産生・分泌し

破骨細胞の分化を決定する因子で
骨代謝を厳密に制御しています


それ以外にも 多彩な機能を有し

*リンパ節形成

*胸腺髄質上皮細胞の分化

*体温調節

*代謝制御

*乳腺の成熟や癌化 骨転移

*毛髪発育 筋肉制御

などに関与し



自己免疫疾患の発症の原因となる
免疫自己寛容の成立や破綻にも関与しています

また 糖尿病 動脈硬化の発症・進展にも
関わっています




RANKLが病態形成に関与する病気では
完全ヒト型抗RANKL抗体を用いた
治療法が確立されていて
骨粗鬆症 がんの骨転移など骨破壊に対する有効性も
実証されています



このように
骨がホルモン様物質を産生して
全身に影響を及ぼすなんて

書き手が医学生・研修医の頃は
まだ発見されておらず
全く教わりませんでした


書き手が興味深いと思ったことは

スクレロチンでは
運動による骨刺激により
産生が規定されていることで

こうした現象が
他のホルモン様物質でも起こり得るのか?

上述したように
オステオカルシンは筋肉の運動で
産生が増強されます

オステオカルシンは
糖や脂質の代謝に影響を及ぼしますから
運動によるその産生増強は
運動の糖代謝 脂質代謝の改善効果の機序を
説明するもので とても興味深いです

また RANKLも 
糖や脂質の代謝に影響しますから
運動により産生が変化するか
興味深いです


次回は
これらの骨が産生するホルモン様物質と
糖 脂質代謝との関連を解説します

 

高橋医院