グローバリズムと国家の葛藤
欲望の経済史 第2回はグローバリズムと国家の関係に フォーカスをあてます グローバリズム 最近は 現代社会を悪くした 諸悪の根源のような言われ方もされますが どのようにして生まれてきたのでしょう? <自由か保護か?> 冒頭で イギリス上院議員でケインズ研究の第1人者の ロバート・スキデルスキーさんが 現代経済を牛耳る自由貿易は正しいか? と 問われます グローバリズムを支える自由貿易に対し 世界各地で抵抗が始まっている 先進国の一部の人々には 外国からの安価な労働力により雇用が失われ 資本は国外に流出し現地の産業は空洞化していることに 強い喪失感があるというのです そして グローバル市場を 誰もコントロールできない なぜなら コントロールの役目を果す国際政府はないから と 危惧します <グローバリズムの誕生> グローバリズムが生まれた歴史的背景を探る過程で まず大航海時代の争いに フォーカスがあてられます 当時 イギリスが他の国々から頭一つ飛び抜けられたのは 東インド会社があったからで 東インド会社は 行政機関の性格も帯びていて 半官半民の国家と企業が手を結んだような組織でした 現在も続く東インド会社の現社長 ザンジーブ・メフタさんは 400年前の東インド会社が 世界で最初に設立されたグローバル企業で 英語を世界の共通語にしたのも東インド会社で 18世紀までに 東インド会社の貿易によって世界がつながった 現代に続く文明の潜在意識に 東インド会社の価値観が染み込んでいる と語ります なるほど 英語が世界共通語になったのは 東インド会社の影響なのですね 東インド会社が行っていた貿易とは 安い場所で買い 高い場所で売ることで 空間による価値の差異を利用した錬金術に 他ならない 空間の移動により 商品に希少性という価値を持たせることができた と指摘します <重商主義の出現と 近代国家・ナショナリズムの萌芽> ここで生まれてくるのが 貿易黒字至上主義の重商主義です 貿易で貨幣を獲得して国を富ませることを 第一義とする思想 オックスフォードのケビン・オウロークさんは 重商主義における軍事力の重要性を指摘します 国家は 力を持ち裕福であるべき と信じられている 国が裕福になると 軍事力を使って貿易を統制するから 国際的パワーバランスが変わる ここで 近代国家という枠組みが 否が応にも強く認識されるようになります そして 植民地や貿易ルートを胃のままに独占するため 国家間での軍事的競争が繰り広げられます まさに 国家の間での 金を生む空間をめぐる攻防です 富を得るには軍事力が必要 軍事力を得るには富が必要 というサイクルが 当時の人々の世界観となります つまり 国がどれだけ 軍拡に使える金や銀を持っているかが重要で こうした貿易拡大をめぐる国家間の競争のなかで 人々の心の中にナショナリズム・愛国心が生まれてくる というのです 重商主義は 危険で乱暴な政治経済システムであり 今の世の中でも完全になくなったわけではなく ときに顔を変えて再出現してくると 警鐘を鳴らします <株の出現> そしていよいよ「株」というものが 世の中に現われてきます 1602年 オランダ東インド会社が 世界で初めて 株券を発行しました 株の出現により 富裕層だけでなく 一般の人々も株券を買えるようになり そのため出資量が増え 株式市場も生まれました 富裕層だけでなく あらゆる階層 庶民の欲望も 経済活動に反映されるようになったのです また 株券は少量から買えたので リスクを分散出来るという利点もありました こうして貿易のためにアジアに向うの船関連の雇用も増え 街での香辛料などの輸入品の消費も増え ついに17世紀半ばに オランダがイギリスを追い抜き イギリスとオランダの貿易をめぐる国家間の闘争が 起きるに至ったのです ちなみに 株の出現は やがて投機を生み出します オランダでは 人々が貿易によって得た豊かな金が チューリップの球根に投機され チューリップ・バブルが展開されます そして当時のオランダでは 現実のニュースが 投機にどんな影響を及ぼすかが 議論され 投機の世界は現実のニュースとは無関係に動く という事実が 明らかにされました 大きく影響するのは 現実に起きていることではなく 投機家の思惑そのものである そして チューリップ・バブルが弾け オランダ経済は没落していく うーん 17世紀のオランダでは なんとも先駆的な研究が成されていたのですね そして 後の時代の人間は そこから何ひとつ学んでいない なんとも皮肉なものです(苦笑) <現代でも重商主義は生きている> さて 重商主義者にとって 安全保障はとても大きな関心事で 経済的ナショナリズムという概念が生まれてきます 重商主義の考えを持つ国家は 企業と似ていて さまざまな冷酷な戦略を練って 相手国を出し抜こうとしたりします やがて 1930年代の貿易戦争は 世界大戦を引き起こします つまり 重商主義を背景にした貿易戦争により 国と国が協力できなくなるのは とても危険なのです こうした重商主義は トランプが掲げる保護主義な経済政策や イギリスのEU離脱などにより 現代社会で再び頭角を現しつつあります 国の外側の世界に 富を求める欲望 国の内側で 富を守ろうとする欲望 このふたつがせめぎ合っているのが 現代の政治経済とも言えます 貿易戦争が起こりつつある グローバリズムの台頭により起こった資本主義の揺れが 経済の論理と政治の論理の相克を招き 危うく不安定な状況が展開されている と 番組の最後にメッセージが語られます 今の時代って そんなにリスキーな状況なのでしょうか? 確かに報道では 米中貿易戦争などが話題になっています 呑気な書き手は あまりシリアスに考えたことがないけれど(苦笑) でも 最近のニュースを見ていて アメリカが中国に仕掛けた 関税掛けごっこは 結局ブーメランのようにアメリカ経済に 悪い影響を与えているようで うーん 経済のグローバル化は もう動かしようのないシステムになっているのでは? と思いました
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