NHKはこれまでに

マネーワールド・資本主義の未来

欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき

欲望の民主主義

ザ・トゥルース(真実)世界を変えた金融工学

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時

といった

現代社会に暮らす私達が 
無意識にどっぷりとつかっている
資本主義経済 民主主義を
「欲望」という視点から俯瞰しようとする
とても面白い番組を提供していますが

またしても

欲望の経済史 ~ルールが変わる時~

という 
経済史を欲望の視点から解析する番組を
6回シリーズで放送しました

今日は その第1回をレポートしようと思います

欲望の経済史 のテレビ映像

時が富を生む魔術 

と題した1回目は

現代経済の基盤ともなっている 
「利子という仕組み」が
どのようにして誕生し 発展したか
解説しました

 
<利子の誕生>

利子が生まれたのは
商業や貿易で 当時の世界をリードしていた
中世イタリアでした

当時は 
ほとんどの宗教で利子は禁止されており

キリスト教の聖書にも
貸した金に見返りを求めるな」
「高い利子を獲るものは地獄に落ちる」
と 利子への警句が書かれています

貸した金に見返りを求めるな という警句

しかし
実社会では 利子は暗黙の了解だったようで
人々の欲望が神の教えを破った 
とされています


ベルリンの女性経済ジャーナリストの
ウイルケ・ヘルマンは

利子は
人類が定住生活を始めた1万年前から存在していた
4000年前のイラクのメソポタミア文明には
利子の記録がある

と述べ 
利子への欲望は根源的なものなのか?
と問いかけます

 
<利子の必要性>

どうして 
利子というシステムが必要になったのか?

それは 経済成長のために
借入金が必要だったからです

借入金は 
何もないところから生まれた金で

借入金がなければ 
経済発展に必須の労働者の雇用 設備の拡大は
できませませんでした

つまり 
経済成長は 貨幣の貸し借り 利子
によって実現されるもので

利子は
資本主義システムを促進させるうえで
不可欠だったのです

<利子は危険だ>

ここで これまでのシリーズに何回も登場してきた
チェコのマクロ経済ストラテジストの
トーマス・セドラチェク現れて
いつもながらの興味深い自説を披露します

全ての宗教 哲学者の間で 
利子は否定的なものとされていた

利子は忌むべきもので 禁断の果実である

富を生む一方で 
問題をひき起こす元凶となる

利子は禁断の果実 というメッセージ

しかし ユダヤ教は 例外でした

金融業を生業とすることが多いユダヤ人は
仲間とその他の差異を強く意識する風潮があり
異邦人への利子は認めるが 仲間への利子はダメ 
としていました

こうしたことから 
ベニスの商人と揶揄され
歴史的にも 反ユダヤの風潮が生まれ
継続していきます

そしてセドラチェクは 
シェイクスピアの言葉を借り

債務に気をつけろ 負債は身を亡ぼす

と 忠告します

利子はアルコールに似ている

どちらもエネルギーを
タイムトラベルさせることが出来るが

時間を先延ばししているだけで
気をつけないと 今でなく将来に 
二日酔いや負債で苦しむことになる

いつもながらの 
わかったような わからないような比喩です(笑)

 
現代社会は 借金に依存し過ぎている

そして 借金が大きすぎて問題なのは
もっと借金をして解決しようとする
現在 多くの国で行われている経済政策である

また 消費によって金をまわそうとするのもリスクで

2008年のリーマン・ショックは
過剰な投資 過剰な消費であるにもかかわらず
危機を解決するために
もっと投資 もっと消費することと考えていたために
起こった悲劇である

新たなリーマンショックへの警鐘を鳴らすニューズウイーク誌の表紙

それなのに
政府の借金はさらに増え
火で火を消そうとしている

結局 
欲望は満たされることを望まず
増殖することを望む

人の欲望というものは
当初の欲望の対象を手に入れても
新たにもっと良いものを欲する

欲望は増殖することを望む と警鐘するセドラチェック

セドラチェクは このように
欲望に対して最大限の警句を発します

 
<利子の拡大・為替の誕生>

さて
15世紀のフィレンツェにルネサンスの花を開かせ 
わが世の春を謳歌したメディチ家は

利子の拡大の基礎を築き
ヨーロッパ各地に金融ネットワークを
形成しました

そして
教会が命ずる利子の禁止をかいくぐるために
ヨーロッパネットワークを使い
為替により利益を生み出すことを
発案したのです

空間の差異が富を生む というメッセージ

時間でなく 空間の差異

すなわち国と国の間の貨幣価格の差異を利用して
儲けることを思いついた

こうして
時間(利子)と 空間(為替)の差を
それぞれ利用して莫大な富を生む

うーん 色々と考えつくものですね!(笑)

しかし コジモは
教会に寄進もしていて真に信心深かったそうです

富を貯めこむことは 罪と考えられており
自分の富を 
貧しい人や教会に分け与えなければならないと
考えていました

それは
神に許しを得る方法でもあり 
死後に天国に行くためでもありました

そして 罪の意識から 
芸術家の擁護も行ったのです

それが ルネサンス芸術として花開きます


<利子の公認>

さて 16世紀になると
いよいよキリスト教が利子を認めるようになります

ジャン・カルヴァンが起こした宗教改革により
プロテスタントは 利子を認め
5%までならOKとするようになりました

但し 貧困者への貸し付けはダメ 
5%を超える高利貸もダメで
違反すると元金没収され 制裁金が科されました


プロテスタントは
カトリックの利子の禁止は 偽善だった
裏では何らかの形で利子はまかり通っていた
と告発し

偽善を止め 公正に立ち返る姿勢を
強調したのです


一方 カトリックでは
1745年のローマ教皇ベネディクト14世の回勅で
利子が公認されました

時間に価格がある
という考え方が広がり始め 利子が認められたのです

時間に価値がある というメッセージ

こうして 利子がついに闇の社会から出て 
表の社会で公認されました

そして現代では利子は
資本主義のあらゆる経済活動のシステムに組み込まれ
浸透しています

利子により 
金の流れがダイナミックに動き始め
経済の動きが活発になったのです


セドラチェックは 最後にこう語ります

欲望は 満たされることを望まず 
増殖することを望む

ヒトの欲望の本質は
手に入れたものに満足せず
常にもっと良いものを欲することにある

果てしない欲望を示す人

いやはや
ホント 欲望って厄介ですね!(苦笑)

 
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