欲望の経済史
4回は
産業革命から始まる技術革新が
経済に及ぼした影響
を検証します




<技術革新の重要性>

冒頭にアメリカのベンチャー企業家が

人は常に 技術革新による効率化 生産性の向上を
求めている

我々は 常に効率的破壊を追求し
効率的ない古い産業の駆逐を目論んでいる

イノベーションこそが 消費者をハッピーにする

このような今起きている変化は
人類という種の進化と言える

と 技術革新 イノベーションの重要性を強調します



誇らしげにそう語る姿は
なんだか新興宗教の教祖様のような勢いでした!(笑)

 
<産業革命がもたらしたもの>

技術革新は
18世紀イギリスでの織物蒸気機械の誕生に端を発します

機械の誕生により 生産力は飛躍的に向上しましたが

一方で新技術の出現により
人々の仕事が消えてしまいました

そして 技術は富を生み
これまでの社会の在り方を根本的に変えていったのです



ベルリンの経済ジャーナリスト 
ウルリケ・ヘイルマンは

産業革命は 資本主義そのものだ 

と述べます

産業革命が起こる前の封建制では
集団の在り方が規定されていて
地方の土地に農作人が縛られ
都市の職人も親方に規定されていました

しかし産業革命は 封建性社会を崩壊させ
資本主義社会を生み出した

機械や技術への投資により
経済成長を生み出すシステムとなり
土地を離れた農民が都市に出て労働者となった

このように
産業革命により全く新たな社会構造が
出来上がったのです

 
ここで登場するのがカール・マルクスです



労働者が
産業革命が生んだシステムに
反旗を翻したラダイト運動の対象は

実は機械という「物質的な生産手段」ではなく
「社会的な搾取形態」であったが
労働者たちはそれに気がつかなかった

と 新たに生まれた
「資本家と労働者の格差」を指摘します

そして労働者たちのパブでの議論から
労働組合が生まれたのです




計量経済史を専門とする
UCデービスのグレゴリー・クラークさんは

産業革命が人々に

*享受した富で よい品物を買うか? 

*働く時間を減らすか?

という 二者選択を提示したが 

人々が選んだのは 物を買うことだった

その結果 人々はもっと働く運命を
現在に至るまで背負うことになったのです

産業革命がもたらしたものは

*イノベーション

*大規模化 効率化

*過酷な労働

に他ならない と指摘します




確かに産業革命は
人々に過酷な労働を強いましたが
多くの富ももたらしました

産業革命により
競争により物の価格が低下して
最終的には労働者が利益を得たのです

イギリスでは1800年からの100年間で
労働者が得る賃金や生活の質は最も向上しました

社会全体に富が行きわたったのです



一方 資本家や発明家は
暴利をむさぼらず 利益を社会に還元しました

このように
イギリスの産業革命は民主的な革命だったのです

結果的には人々の雇用も奪われなかった

つまり 産業革命がもたらしたものは
一夜で劇的に変わった革命のような
短期間の劇的な変化ではなく
緩やかな持続的な成長だったのです

しかし 産業革命を契機に
世界に大きな格差が生まれたのも事実です

産業革命を成し遂げた国々は
ますます富みましたが
アフリカやアジアの国は以前より貧しくなった


<ドイツの猛追>

ドイツは
国を挙げてイギリスの技術を盗み模倣しました

1870年までに模倣しつくし 同じ水準に並び
そこから独自の開発を始めたのです

化学 光学 自動車 航空機 ラジオ
などはドイツの発明です

そして
国家が科学技術を指導し 産業を育てていくという
独自の第二次産業革命を成し遂げ
国力を増していきました

なんだか
日本のやり方の先駆けをしていたようですね(苦笑)

 
<アメリカでの大衆消費社会の幕開け>

アメリカは20世紀に入り
大量生産 大量消費の時代を迎えます

自動車社会のフォードは
流れ作業によるオートメーション化を進め
車の価格を下げることに成功します 



そして 重要なことは
労働者の賃金を上げたのです



労働者は社会では購買者であり
労働者の賃金を上げることは
社会の人々の購買力を増大させ 顧客を増やし
不況を克服する

というコンセプトに基づいたもので

労働者に賃金が支払われず 購買力がなければ
技術革新そのものが機能しない

事業の目的は
消費者への供給だけでなく
消費者を創造することでもある

と主張しました

多くの企業がフォードのコンセプトに共鳴し
こうしたことで アメリカ社会では
大量の需要と供給が生み出されたのです



ウルリケ・ヘイルマンは

資本主義社会の核となる原理は
大量の消費財によりけん引されること

資本主義のメカニズムは
大量生産 大量消費を促すこと

と指摘し

それにより「大量消費社会」が形成されたとします



このように
技術革新と大量消費・市場の創造が両輪となり
資本主義は加速していきます

大衆消費社会の幕開けは
豊かな中流意識の定着をもたらします



技術が 大衆を生み 中流階級を生んだのです

 
<現代の技術革新は社会を分断する?>

では
第4次産業革命と呼ばれている現代の技術革新は
社会にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?

イギリスのケインズ研究者の
ロバート・スキデルスキーさんは
ロボット AIなどの現代の技術革新が及ぼす影響について

*短期的には より安い労働市場へシフト
 長期的には 失業
 を もたらしていく

*製造業の雇用がなくなり
 人々はより労働集約型の所得の低いサービス業へ
 移行せざるを得なくなる

*人々の労働時間は減るであろう

と予測します

そして 今後50年間で
技術による自動化が大きな社会問題になる
警鐘を鳴らします

なかなか悲観的な予測ですね

 

ダニエル・コーエンは

技術が人間に否応なく変化をもたらす構造が
時代を超えて繰り返される 
と指摘し

1968年のフランスの5月革命では
資本主義が労働者に反復作業をさせて
人間をロボット化していることが問題視された

現代では
反復作業はロボットが行うようになったが
代わりに 創造力を追い求めることが
人間の新たな義務となってきた

マルクスの言葉に習えば
人間の創造力が搾取されている

かつての体力の搾取が
創造力の搾取に移行したに過ぎない

そこには相変わらずストレスがあり
剰余労働 搾取は
またも最大限まで押し上げられている

現代の技術革新は 進歩には違いないが
矛盾を抱え極端な状況を生んでいることに
変わりはないと解析します



技術が
人々の欲望のあり方を変え
社会のルールを変える

というわけです

現代社会がおかれた状況は
産業革命の頃とは
かなり趣が異なっているようですね

日々の生活のなかで
無意識に新たな技術の恩恵に浸っていると
ここで解説されていたようなことは
考えたこともありませんでした

ちょっとびっくりしました

  
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