欲望の経済史シリーズは
ついにバブルに話題が及びます

タイトルは

大衆の夢のあとさき・繰り返すバブル

繰り返すバブル

なんとなく 身近になってきました(笑)

<投資から投機へ>

1900年代 好景気に沸くアメリカでは
人々の旺盛な欲望が
土地・株式に流れ出し始めます

投資が
社会に価値を生む本来の目的から
マネーの増殖のみを目的とする投機へと
加熱したのです

投資と投機の違いの説明1
投資と投機の違いの説明2

アヤシイ匂いが 漂ってきました(笑)


<世界恐慌>

以前にも登場したことがある ルチル・シャルマは
1929年の世界恐慌を例に挙げ

世界恐慌に慌てふためく人たち

あの時は
1週間で国家予算10年分の富が失われたが

黄金の20年代に余った金が投資から投機へ流れ
まさにバブル景気のハシリとなったと
解析します

そして 大衆の欲望が恐慌を呼び起こし
その恐慌の先にナチスの台頭がもたらされた

と警鐘を鳴らします

 大衆の欲望が恐慌を呼び起こした というメッセージ

ここで登場してくるのがケインズです

ケインズの写真

彼は経済にまつわる大衆心理の分析を行い
次のような著作を著し政策を唱えました

@貨幣改革論

財産が急激に変動し始めると
人々は冷静さを失い

地道な利益でなく
瞬時に巨大な利益を得ることを考え始め
遠い将来の事業の安定より
手早い金儲けを優先するようになる

こうした人々の感情の揺れが
市場の揺れにつながり
不安と熱狂が繰り返されるようになる

そこに飲み込まれないバランス感覚が重要だが

では 
秩序をもたらす方法はあるのだろうか?

金融政策の重要性を示すメッセージ


@恐慌対策

失業を防ぐには
市場・民間の自由競争だけに任せていたらダメで

政府の金融市場への介入により
金利を下げて社会に金を循環させる

こうすることにより
企業の借り入れによる設備投資が増えて
新たな雇用を生み出せる

財政政策の重要性を示すメッセージ

@雇用 利子 および 貨幣の一般理論

起業家の冒険的な野心・衝動がないと
投資は発達しない

投資を左右するのは
合理的な判断を超えた活動である

同時に
政府による活性化 公共事業も必要である


一方で 民衆の不安が経済を左右する

人々の未来についての知識は
実に曖昧で不確実なものであり
枠組みそのものを揺さぶるルール変更が
ときに起こり得るが

いかなる統計的解析も
それを予測することはできない

結局 混乱のもとになるのは
人々の強欲と
それにともなう集団的な不安なのでしょうか?


一方 ロバート・スキデルスキーは

ケインズは
社会を物質的な富の意味からだけでなく
倫理的な側面・生きる意味からも考え
経済学にとどまらない思想体系を有していた

と ケインズの別の側面を指摘し

経済学には
数式だけでは理解できない側面がある
人々の心理も考えないといけない

と強調します


<株式市場が示す価値とは?>

ここで セドラチェックは
株式市場の本質とは? 
と問います

これは 以前のシリーズでも紹介されましたが
彼は「市場の本質は美人投票である」
と例えたケインズを引用します

市場の本質は美人投票である というメッセージ

自分の好みでなく
他の多くの人が好くであろう会社に投資する

つまり 他人の欲望を模様するという
不安定な大衆心理が 市場の本質にほかならない

本当に優良な企業が選ばれるわけでは
決してなく
大衆の欲望にそったものが良しとされる

そして 往々にして
そうした流れは止まらなくなりバブルにつながる

だから 
株式市場では本当の価値は計れない
と結論付けます

また
世界は本質的に不確実で 未来は知り得ない
と強調します

リスクは計算可能だが 不確実性は計算できない
リスクと不確実性を混同したら
危険な世界が待っている

と 市場に参加する心得を披露します

リスクと不確実性は同じではない というメッセージ

不確実性はリスクを上回る存在で
人には制御不可能なもの

まさに
世の中の不条理のようなものなのでしょうか?


<バブルの危険性>

ウルリケ・ヘルマンが再び登場し
投機について語ります

投機とは
誰かが得をすれば その分 誰かが損をする
ゼロサムゲームである

投機を行うのは
マネーファンドを請け負う大口投資家 ヘッジファンド 銀行
などで
本来は 大衆の関心事ではない

しかし
このバーチャルな投機の世界が
現実社会に大きな影響を及ぼすことが問題で

株の投機だけならまだよいが
更に危険なのは 不動産投機 不動産バブル

日本のバブル崩壊 アメリカのリーマンショックも
全て不動産絡みで
不動産は 国民資産のおよそ半分を占めているので
より危険である

この 不動産価格の異常な高騰 暴落は
実体経済を崩壊させる


かってケインズも
投機の危険性について警鐘を鳴らしていました

投機の渦巻きに翻弄される事態になると
ことは重大である

国の資本の発展がカジノでの賭け事のようになり
何もかもが始末に負えなくなる

 カジノのルーレット

IMFシニアアドバイザーの
バリー・アイケングリーンも
バブルの危険性について語ります

バブル崩壊で 大衆がパニックになると
皆が争うように
株式市場や銀行からお金を引き出すので
株式市場や金融制度経済を不安定化させる

金融関係者が膨らませるバブル風船

こんな危険なバブル

社会主義が崩壊し
世界をグローバル資本主義が牛耳るようになると
互いの欲望を模倣しあうゲームのスピードが
どんどん加速していきました

バブル景気ではしゃぐ人々

そして 金融工学の活躍が拍車をかけ
コントロール不能な怪物に変化していったのです

そして バブルは 突然崩壊する

歴史的に繰り返されるバブル崩壊

2001年には ITバブル崩壊が起こり
2008年に
リーマン サブプライムショックが起こりました

リーマンショックのときの様子


<バブル崩壊は回避できるのか?>

ダニエル・コーエンは
どのような経済モデルなら 未来の危機を予測できるか?
と自問自答し

予測できない と結論します

不安定さは 回避できない
金融危機の予測は 困難である
危機の影響も具体的に予測などできない

 
シャルマとセドラチェクは
バブルとケインズ理論について語ります

金融危機のあとには
必ずケインズ理論が持ち返されるけれど

ケインズ理論は
現在のバブル崩壊でも通用するのか?

彼等は
今の状況はねじれていて ケインズ理論が誇張されている
と解析します

前回の危機から8年経過して
経済は回復しているのに
多くの国の政府はまだ財政赤字を増やし続けている

これは ニセのケインズ主義で
ケインズ理論を悪用して
負債を増やし経済を崖から突き落とそうとしている

これは 間違った危険な政策だ

膨らむ財政赤字の危険性を示す風刺画

そして
危機のときは借金をしても良い
好況のときに貯金するならば
と セドラチェックらしくシニカルに結論付けます

 
一方 オックスフォードで経済史を教える
ケビン・オウロークさんは

悲劇のサイクルは これからも循環していく
なぜなら
人間から欲望が消え去ることはないから

リスクに備えてルールを作り
リスクの大きさ 頻度を 最小限にとどめる努力を
することが大切だが

結局 このルールは
やがて欲望により忘れ去られてしまい
悲劇はまた生じる

バブルは
欲望の乱反射によって起こる泡にすぎない

と バブルに関する議論をまとめます

人間から欲望が消え去ることはないと語るケビンさん

バブルは 避け難い大衆心理の帰結であり
それが故に今後も繰り返すに違いない

強欲と恐怖で繰り返されるバブルを揶揄したイラスト

いやはや 確かに御説ごもっともですが
なんともやりきれないというか
あまりにペシミステイックな結論ですね

 哀しいヒトの性 なのでしょうか?

 

 

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