生活習慣病予防で医療費は削減できるのか?
経産省が展開しようとしている 自己責任に訴えかける 生活習慣病の予防により 国家財政を圧迫している医療費の増加を 本当に削減できるのか? そこにも議論があるようです 予防をしても 医療費の総額は削減できず むしろ増えてしまう可能性もある というのが これまでの医療経済学の常識だそうです 効果的な予防医療は 健康を増進させることはできますが 予防費用と 最終的に健康を害して必要となる治療費を あわせた総医療費は増加してしまう というのです こうした“常識”に対して 経産省は次のように反論します 生活習慣病の増加が 大きな問題となっている現代において 予防を推進するとともに 医療のあり方も 当然変えるべきです 現行の医療では ほとんどの医者は 出来上がった病気に対して 薬を出すだけで済ませています そうでなくて 病気にならないための予防に力を注げば 「この病気にはこの薬」 といった従来の医療とは 全く違った効果が期待できる また 従来の生活習慣病の予防は あくまで希望者のみを 対象としてきたため 結果的に 健康な人や 健康に関心のある人しか参加せず 医療費の削減には つながりませんでした 医療費を減らすのであれば 重症化の一歩手前にいる人を 対象にする必要があります 御説ごもっともだと思います 当院も そうしたスタンスで 日々の診療を行っていますが まだまだ 病気にならないように指導するより 病気になってしまった方を 治療する方が 圧倒的に多いのは事実です 医療経済の専門家は こうした状況について 次のように語ります 予防医療を重視して 健康寿命を延ばすことには 「国民への強制やペナルティーを伴わない限り」 賛成です しかし 予防医療による医療費削減効果は ほとんど確認されていません 逆に社会的な費用を計算すると 長期的には医療費が増える という結果が出ています 健康改善による医療費削減が 長生きすることによる 医療費増加により 相殺されるからです 効果的な予防医療は 国民の健康を増進すると同時に 総医療費(治療と予防をあわせた費用) を増やす 予防であっても 医療や介護サービスは 人間により提供されますから そんなに安くはできません 「良かろう 高かろう」なんですよ そして 予防を医療費抑制の手段として使うことの 危険性も指摘されます 予防や健康寿命を延ばすことには賛成です しかしそのやり方には 疑問がありますし 医療費抑制の手段として 使うべきではない 背後にある政治的な狙いについては 危うさを感じます 金銭的なインセンティブで 人々に健康的な習慣を 身につけてもらおうとする多数の実験でも 効果がないことが分かっています 心配しているのは インセンティブが強化された場合 それが事実上の強制やペナルティーに転化し 結果的に「生活習慣病」などの患者の 差別・排除につながる危険があることです 政策が経産省主導で 練られていることについては 経産省と厚労省には スタンスの違いがあります 経産省は 予防医療で医療費が抑制できると 主張していますが 厚労省は そのような甘い主張はしていません また 経産省は 個人の生活習慣を改善する 「個人アプローチ」だけを 主張していますが 厚労省はそれと 「環境改善アプローチ」の両方を 進めようとしています この2点については 厚労省が正しいと言えます と指摘されています 厚労省さん 経産省が突っ走らないように頑張ってね という感じ?(笑)
高橋医院