ダイエットの科学1:現代ダイエット科学批判
お盆休みも終わったので ダイエット本の紹介シリーズを再開します 今日から紹介するのは ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く ティム・スペクター先生という ロンドンの老舗大学・キングスカレッジの 遺伝疫学の先生が書かれた本で 原題は The diet myth The real science behind what we eat 2015年に発行され 日本では訳本が2017に出版されました かなり読み応えがある 内容的にも重さも(笑)重量級の本です スペクター先生は 双子の成長過程での健康状態の変化について 遺伝と環境の影響を検討する 双子研究の権威ですが 昔から 栄養学について興味を持たれていて この本を書かれました 最近は 腸内細菌叢・マイクロバイオームに関心があり その方面からの考察も たくさん書かれていますが 腸内細菌叢については 機会を改めて解説しますので 今回はそちら関係の内容の紹介は省きます <現代のダイエット科学への痛烈な批判> 筆者は冒頭に 「ダイエットという神話」という 刺激的なタイトルの章を書いて 現在のダイエットにまつわる 社会の状況を批判します 健康や栄養状態を改善する目的でなく ただ単純に体重を減らすことだけに 重きをおく風潮があり それは伝染病のような大流行で あやしげなものも含めて 3万冊以上の書籍が出版されている しかし 現実的には 世界全体で食事の質が低下している そして ダイエットの研究に関しても 厳しくも批判します 現在 巷に出回っている 無数にあるダイエット情報の ほとんどには科学的裏付けがない まるで新興宗教のようなありさまで 栄養学の研究水準は 他分野よりかなり遅れている 研究手法・方法論の面では *大規模共同研究プロジェクトが少ない *同業者からの批判を恐れて 重要な食物成分についてわざと触れない *観察研究なので バイアスや不備が山ほどある *信頼性の高い無作為比較試験がほとんどない といった大きな欠点がある さらに 栄養学に対する考え方にも問題があり *食物を 栄養素の観点から単純化して分析し過ぎで 食物全体としての複雑さを無視している *物事の全体像を見ずに 人を健康にする唯一の魔法の食材を探したがり 食品を全体で見ず 成分レベルに分解して調べたがる といったスタンスは 間違っているのではないかと指摘します 厳しいご指摘ですが 多くの人々が 巷に溢れる怪しげな情報に惑わされて 余分なお金や時間を費やしているのも 事実だと思います 研究への指摘は かつて研究をしていた者にとっては 耳が痛いところかな?(苦笑)
高橋医院