クラシックもモダンも
エイフマン・バレエの 振り付けやダンサーの動きは とても特徴的でした そもそもエイフマン・バレエ団のダンサーは 身長が男性184cm 女性173cm以上で こんな高身長のバレエ団は 世界でも類を見ないそうです その高身長から繰り出される アクロバティックなほどの大胆な動きが 本当に衝撃的なのです 男性の頭上に高く放り上げられた女性が 空中で一回転して 再び男性に抱きとめられる まるでサーカスのような動きは 見応えがあります また 男性が女性を高く掲げるリフトが高く 掲げられている時間が長いので まるで女性が空中浮遊しているように 見えるのですよ さらに そのようなリフトが連続して何回も 群舞で行われたりすると まさに圧巻です エイフマン・バレエ団で レッスンを受けたことがある日本人ダンサーは エイフマンの男性ダンサーの上半身の体格は 普通のダンサーとは違い筋肉隆々で 常に鍛えておかないと レッスンができないのです とにかく体力が凄まじくて 筋力 体力など もう次元がちょっと違う気がしました エイフマンさんの振付は 全身をくまなく使い どんな振付よりも 力強いというか エネルギッシュでパワーを求められます 「もっと大きくきく」 「もっとダイナミックに」 「とにかくスケールを大きく」 と言われました と語っています 確かに 本当にエネルギッシュで力強い でも それだけではないのが エイフマン・バレエのすごいところです ダンサーは 自らの肢体の可動性を極端にまで拡大し アクロバティックに踊りますが しっとりと情緒的にも踊れるのです クラシック・バレエの 基礎的な動きがしっかりしていて その上にダイナミックな動きが加わると 見るものの心を揺さぶります エイフマンの作品では 不条理な愛情関係が 俗っぽくなく 美しく 切なく描かれている と評価されているそうですが それは今回の2作品を見て納得しました それは エイフマンさんの 観る者の心に刺さるような振り付けに 依るところが大きいと言われています 観客に間断なく攻撃を仕掛け その感情を鷲掴みにして 情緒により理性に訴えかける振り付け 確かにうなずけます まさに「心理バレエ」の源となる振り付けと 言えるでしょう 前述の日本人ダンサーは エイフマンさんの振り付けについて まず 物語を理解したうえで 振り付けに入る 心理的な指導より 振付を身につけることで表現ができている 振付が全てを語り それが表現になっている と語っています 最後に エイフマン・バレエのもうひとつの大きな魅力は アダプテーションの面白さと言われています 文学作品や芸術家の人生の 知られていなかった側面を バレエにすることで 新たに発見し明らかにしようと努めているのです チャイコフスキーの生涯をモチーフにした作品も レパートリーのなかにあるようです そうした作品では 物語を単に説明するのではなく 登場人物の心理 感情の流れのみを紡いでいく 小説では 言葉を用いて長々と吐露される思いは 心理バレエの身体表現により 一気に強いインパクトとして伝えられ 主要な登場人物の気持ちの変化を ひとつひとつの踊りの差異により明確にすることで 物語の流れを 鮮やかに浮かび上がらせているのです こうして 原作とは異なる 新たな解釈や発見が得られる 確かに バレエのアンナ・カレーニナは 小説と比べて アンナと夫のカレーニンの関係が より詳細かつ強烈に描かれているように感じました そして もう一度 小説を読み返してみたくなりました そうしたら また新たな発見があるのかもしれません うーん ボリス・エイフマン 畏るべし! こんな才能に巡り合えて 本当にラッキーでしたし 彼の他の作品も見てみたくなりました 最後に蛇足です ロシアのバレエ界では モスクワのボリショイ劇場 サンクトペテルブルグのマリインスキー劇場 の二つのバレエ団が ヒエラルキーのトップに君臨していて バレエ学校を出たばかりの 若いダンサーの多くは そのどちらかへの入団を目指すので エイフマンバレエに入団するのは ボリショイやマリインスキーを落ちた人が 多いそうです しかし そうした人たちは往々にして エイフマン入団後に 才能が開花するとのこと エイフマンさんも 老舗バレエ団のお眼鏡にかからなかった人の方が 個性があって育て甲斐があると 言われていました 既成の価値観にとらわれない エイフマンバレエのオリジナルな雰囲気が 新しい才能を花開かせるのでしょう 妙に納得するお話でした!
高橋医院