うつ病の患者さんの脳内で生じている病態と
それを改善させる薬について説明します

<脳内の神経伝達物質の減少>

脳の神経細胞における情報の伝わり方に
異変が生じています

具体的には 脳内での情報伝達を行う

*セロトニン

*ノルアドレナリン

*ドパミン

といった神経伝達物質の量が減って
情報がうまく伝わらないため
さまざまな症状があらわれます


正常状態での脳内の神経伝達物質の動態の説明図

うつ病で神経伝達物質の量が減少していることの説明図

これら3種類の神経伝達物質は
それぞれ固有の働きを有しています

3種類の神経伝達物質のそれぞれ固有の働きを示す図

@セロトニンは 調整・抑制型

睡眠や体温調節 時差ぼけの解消などの生理機能
歩行や咀嚼、呼吸などのリズム運動
消化管の運動などを促すはたらき
を行い

起きているときには常にシナプスに分泌され
覚醒状態を維持して 心のバランスをとります

欠乏すると
感情 意欲 食欲の低下
不安感の高まり
などが起こります

太陽の光を浴びたり 睡眠をとったり
肉・牛乳・納豆など
たんぱく質(必須アミノ酸)を含む食品の摂取で
作られる量が増えます


@ノルアドレナリンは 興奮型

俊敏な運動を可能にする
気分を高揚させる
といった働きをして

欠乏すると
気力 判断力 集中力の低下
活動性の低下
などが起こります


@ドパミンは 快楽・興奮型

身体をスムーズに動かす
やる気 意欲を起こさせる
目標を達成したときの満足感、興奮などを作り出す
といった働きをして

欠乏すると
楽しみの喪失が起こります


不安には
セロトニンとノルアドレナリンが関与し

活動性の低下には
ノルアドレナリンとドパミンが関与し

食欲・性欲の低下には
ドパミンとセロトニンが関与します

うつ病のさまざまな症状と各神経伝達物質の関連を示す図

健康なときは
これらが脳内でバランスを保って分泌され
脳や体の機能・活動を上手にコントロールしています


各神経伝達物質のバランスを示す図

しかし
親しい人との離別 過労などのショックな出来事や
過剰なストレスが引き金となって
神経伝達物質のバランスが崩れると
うつ病の症状となってあらわれるのです


<神経伝達物質を増やす再取り込み阻害薬>

セロトニン ノルアドレナリンなどの神経伝達物質は
送り手側の神経細胞の末端から
受け手側の神経細胞の末端に
単純に送り出されているのではありません

シナプスには
受け手側で受け取られなかった神経伝達物質を
もう1度送り手側に戻すシステム(再取り込み)があり

送り手の神経細胞にも
その受容体が存在しています

神経伝達物質の再取り込みを示す図

この再取り込みの受容体をふさいで
再取り込みの機能を下げて
シナプス間隙に神経伝達物質を増やそうとするのが
再取り込み阻害薬です

再取り込み阻害薬の作用機序を示す図


@SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

現在は第1選択薬として使われています

選択的セロトニン再取り込み阻害薬の作用機序を示す図


@SNRI(セロトニン ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

有効性はSSRIよりソフトです

セロトニン ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の作用機序を示す図


@NaSSA(ノルアドレナリン作動性 特異的セロトニン作動性)

1日1回の服用ですみます

ノルアドレナリン作動性 特異的セロトニン作動性薬の作用機序を示す図


なお うつ病の治療に古くから用いられている
三環系 四環系の抑うつ薬
現在では
SSRI SNRIが効かない時に使われています

三環系 四環系の抑うつ薬の使用基準を説明する図

王内の

高橋医院