うつ病と混同しやすい病気について説明します

<抑うつ障害を示す類縁疾患>

@うつ病

これまで説明してきたように

*ほとんど毎日 憂うつ感がひどく 
 何をしても面白くない

*無気力な状態が続き 
 身体的に不快な症状もある

という基本的な症状がベースにあります


@気分変調症

*うつ病ほどひどい症状ではない

*慢性的なうつ状態が2年以上も続き
 なかなか正常な気分に回復しない

*全人口の3~5%

*30代をはじめとする若い人に多く
 20歳未満で抑うつ障害を示す場合は
 ほとんどが気分変調症

*憂うつ感 気力のなさ 集中力の低下 絶望感
*食欲 睡眠の変調
 などの症状を示す

*性格的な弱さとみられてしまいがちで
 就学 就業の妨げになることもある

*うつ病に移行しやすい

*早目にきちんと治療することが大切

気分変調症について説明する図


@非定型うつ病

*うつではある

*過眠 過食など 非定型的な症状を示す

*対人面では過敏

といった特徴を有しています

非定型うつ病について説明する図


<非典型的なうつ>

典型的な症状を示さないうつ病のタイプがあり
これらには 抗うつ薬が効果を示す場合があります

@新型うつ病 非定型うつ病

これまでの典型例ではない 軽いうつ病

うつ病の啓発が進んだ結果として
医療機関の受診率が上がると
入院するほど重い患者さんよりは
外来レベルで対応できるような軽い患者さんが増えます

うつ病の30%ほどを占め

若年者に多く
10~40代の女性に多いです

新型うつについて説明する図

*全体に軽症で
 訴える症状は軽症のうつ病と判断が難しい
仕事や学業上の困難をきっかけに発症する

午後から夜間にかけて症状が強くなる

*仕事では抑うつ的になり
 仕事を回避する傾向があるけれど
 余暇は楽しく過ごせる

気分反応性が強く 良いことがあると舞い上がり
 良くないことがあると落ち込む

まわりの状況に気分が左右されやすく
 ささいなことでひどく落ち込み
 激しく泣くこともある

*食欲は過食傾向で
 むちゃ食いをして体重増加する

*1日中眠くてたまらず 10時間以上寝る

ひどい倦怠感で 極端に疲れやすく
 体が鉛のように感じる

新型うつの症状をまとめた図

他人からの批判 拒絶に過敏で
 いつもチヤホヤされていないと傷ついたり
 拒絶を恐れて対人関係を避ける傾向がある

*境界型パーソナリテイ障害に似ているが
 衝動性の高まり 他人を操ろうとする行動は見られない

病前性格として
成熟度が低く 規範や秩序あるいは他者への配慮に乏しい
などが指摘されています

わがままな人 と思われやすい

うつ病に比べて
抗うつ薬の効果が弱く
軽症ながら難治な病態といえます

摂食障害 境界型パーソナリテイ障害
などとの鑑別が重要です


@仮面うつ

気分が憂うつだとは それほど感じない代わり

「眠れない」「食べられない」という
身体症状が前面に出てくる場合で

自律神経失調症と診断されることもあります

仮面うつについて説明する図

抗うつ薬の服用によって状態が良くなる人がいます

なりやすい人は

*自分の心の動きを敏感にとらえられず
 言葉の旨く表現できない

*自分の気持ちを他人に話したがらない

*世間の実務的なことは良く気が付いて対応できる

*他者の心の動きを捉えることが苦手

といった特徴があります


@季節性うつ

冬にうつになりやすく
夏は元気になるというパターンがあります

日本では年間の日照量の差があまり大きくないので
季節性の患者さんは
あまり多くはないと推定されます

季節性うつについて説明する図


もっと緯度が高い地域では
日照量の差が非常に大きいので
季節性タイプも注目されやすくなります

日照量の低下により メラトニンの分泌が変動して
生体のリズムが崩れて 気分に影響すると
推定されています


ちなみに書き手は
夏は白夜でほとんど1日中明るいけれど
冬は午前9時頃にやっと明るくなり
午後2時には暗くなる
という環境のスウエーデンに留学していましたが

最初の冬は
ちょうど実験が上手くいっていなかったこともあり
まさに「季節性うつ」になりかけました!


@「産後」のうつ病

産後4週以内に発症するうつ病で

産婦の約10%程度でおこり
10日ほどで回復しますが
15%は本格的なうつ病に移行します

産後のうつについて説明する図

*ホルモンの変化
*分娩の疲労
*子育てに対する不安
*授乳などによる睡眠不足

などの要因が重なることが
発症に影響していると考えられています

産後のうつの原因をまとめた図
高橋医院