うつ病の薬物治療について説明します

@初期治療の効果

*ほかの精神疾患の合併がないと診断されるうつ病は
 抗うつ薬が有効であることが多く 
 高い割合で完治します

*抗うつ薬は
 最初は少量から使い始め
 症状の改善率は60%ほどです

*第1選択薬での寛解率は36.8%で
 増量 併用などにより
 最終的に60%に至ります

*第1選択薬を増量しても効果がないときは
 薬剤の変更を検討します

*第1選択薬が効かない場合も
 増量 他の薬への切り替えなどで
 最終的には90%くらいで
 うつ状態から脱せられます



抗うつ薬の使い方を示す図


@再発予防
再発予防のため
 抗うつ薬療法や精神療法は
 十分に行う必要があります

*再発率は 
 第1選択薬で寛解が得られた場合40%で
 増量 併用などを行うと
 そうしたステップを重ねるごとに
 再発率は高まります

*症状がわずかでも残っていると
 完全に消えた完全寛解と比較して
 再発までの期間が3倍短く 
 早期再発リスクは3.7倍高いです

*寛解後も4~6か月間は
 急性期と同容量で回復期治療を行い
 その後に再発予防として
 1~2年の維持期治療を行うのが望ましい
 とされます

*回復期治療は
 再燃リスクを46%低下させ
 維持期治療は
 再発リスクを44%抑制します

再発予防について説明する図

@薬物抵抗性

何種類かの薬を試してみても
薬の効きが悪い人が1~2割ほどいると
推定されています


@薬の種類

*三環系 四環系

古くから使われている薬で
今は SSRI SNRIが効かない時に使われます

三環系 四環系の使い方を説明する図

現在は主に
神経伝達物質の再取り込み阻害薬が使用されています

*SSRI
(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

*SNRI
(セロトニン ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

*NaSSA
(ノルアドレナリン作動性 特異的セロトニン作動性)


@副作用

SSRIは 比較的副作用が少ないのですが
頭痛 下痢 嘔気などは 
よくみられます

抗うつ薬の副作用をまとめた表

薬を飲み始めた時期に強く現れます

@中止後症候群  

抗うつ薬を急に中止 大幅に減量すると 
めまい しびれ 振戦  発汗 
悪夢 悪心嘔吐 興奮 不安焦燥 
などの症状が現れるので 
1~2か月かけて徐々に減量していきます 

@セロトニン症候群

服用開始時や増量時に起こり
かえって不安感やイライラ感が
強くなったようにみえます

見当識障害 混乱する
発熱 下痢 発汗
興奮 イライラする 動き回る

といった症状で 10~20%に現れます

中止後症候群などについてまとめた図表

@アクテイベーション症候群

SSRIで見られることが多く
服用開始時 増量時によく認められます

衝動性が強くなり 自殺に走ることもあり
怒りっぽくなり 
暴言・暴力につながることもあります


@うつ病の不眠 不安 焦燥感へのベンゾジアゼピン系の併用

ベンゾジアゼピン系薬剤は速効性があるので
抗うつ薬が効いてくるまでの
短期間の補助薬としての役割があります

ゾルピテム エスゾピクロンが有効
SSRIとクロナゼパムの併用が有効
です

ただし
当初の一定期間(4~8週)の使用に留め
漫然とした長期投与はやめるべきで

ベンゾジアゼピン系薬剤の
依存性 認知機能障害 
SASの悪化 奇異反応などを避けるようにします


@気分安定薬

躁状態をおさめるのが主たる作用ですが
最近は 抗うつ薬の効果増強効果が
期待されています

デパケン テグレトール などが使われ
リーマス(リチウム)は 
躁うつの波をなくす効果が高いですが
副作用も多いです


@薬物治療のポイント

効果があらわれるまでに
2~4週間かかるので

薬を服用してすぐに症状が軽くならないからといって
焦る必要はなく
自分の判断で勝手に服用をやめてもいけません

少量からはじめ
様子をみながら少しずつ増やしていくのが一般的なので
薬の量が増えたからといって
病気が重くなっていると心配する必要はありません

2か月以上服用を継続し 症状が安定してくると
自分の判断で
薬の減量 服用の中止を
してしまうことがありますが
これは絶対に行ってはいけません

抗うつ薬は 突然飲むのをやめると
頭痛やめまい 疲れ 不安などの症状が
あらわれることがあるので

薬を中止するときは
ゆっくり時間をかけて
飲む量を減らしていく必要があります

また 
中止による再燃 再発のリスクも大きいので
要注意です
高橋医院