生活習慣病とうつ病の関連
うつ病の存在により 日常生活がどのように影響を受けるか うつ病と生活習慣病が どのように互いに影響を及ぼし合うか 説明します <うつ病が 生活習慣 身体機能に及ぼす影響> @うつ病の生活習慣への影響 *喫煙リスクが 1.7倍高まります *過剰飲酒のリスクが 4倍高まります *非活動的な生活を送るリスクが 1.6倍高まります @うつ病の生活機能 身体機能への影響 *高齢者では 日常生活動作(ADL)障害リスクが 1.4倍高まります *身体機能障害リスクは 1.5倍高まります *うつ病治療により 高齢者の生活機能 身体機能は改善します このように うつ病により 生活習慣が悪化し 生活機能 ADLは低下します <うつ病の生活習慣病への影響> @うつ病の生活習慣病の発症への影響 うつ病は 生活習慣病の発症リスクを 1.5~2倍高めます 各疾患の発症のリスク比は 以下に示すごとくで *高血圧症 1.49 *心疾患 1.56 *糖尿病 1.59 *COPD 1.76 *喘息 1.78 *関節炎 1.94 (リスク比) うつ病と不安障害がともにあると 発症リスクはさらに高まります @うつ病が生活習慣病患者の予後に及ぼす影響 *心身機能低下が 2.48倍と増悪します *健康関連QOLが60と 著しく低下させます *死亡リスクを 1.9倍高めます @うつ病が生活習慣病患者の生活習慣に及ぼす影響 *身体活動の減少 摂食行動の変化 *喫煙 アルコールの増加 *治療薬のアドビアランスが3倍低下します などにより 経過や予後に悪影響を及ぼします @うつ病治療が生活習慣病の経過 治療効果に及ぼす影響 抗うつ薬の治療により うつ病だけでなく 併存する生活習慣病の改善も見られることが 明らかにされています <うつ病と生活習慣病の 共通の病的背景> @うつ病と生活習慣病の共通する病態 *免疫 神経内分泌の異常 *慢性炎症 *食生活の乱れ *身体活動の低下 *飲酒・喫煙の増加 これらが いずれの病気でもともに見られます @うつ病が生活習慣病の発症・進展に及ぼす影響の生物学的機序 うつ病は 下記に示す生物学的機序により 生活習慣病の病態に悪影響を及ぼし その発症リスクを高めることが明らかにされています *副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) コルチゾールが上昇する *自律神経の機能異常(心拍変動の低下)を認める *CRP IL-6 TNFが上昇 *内臓脂肪が増加 さらに慢性的なストレスはうつ病を惹起しますが その際に *神経伝達物質を低下させる *ストレス反応によりコルチゾールを亢進させる *炎症反応が増悪する *細胞老化 アポトーシスを促進する といった病態が形成され 生活習慣病の発症が促されます <生活習慣病のうつ病への影響> @生活習慣病の うつ病への影響 生活習慣病患者のうつ病発症リスクは 健常人と比べると2~3倍高く うつ病の合併頻度は13~24%です *糖尿病では 1.96倍 9.3%の合併率 *高血圧では 2倍 8.0%の合併率 *冠動脈疾患では 2.3倍 9.3%の合併率 *脳血管疾患では 3.15倍 11.4%の合併率 *COPDでは 3.21倍 15.4%の合併率 *腎不全では 3.56倍 17.0%の合併率 併存する生活習慣病の数が増えるほど うつ病の発症リスクが上がり 重症度は高くなり 自殺リスクも高まります しかし 生活習慣病の数は うつ病の治療効果には影響を及ぼしません また 生活習慣病が悪化すると QOLが低下して うつ病の症状を悪化させる という悪循環が形成されてしまいます @生活習慣の うつ病発症リスクへの影響 *過剰な飲酒は リスクを2.48倍高めます *1日30分以上の運動は リスクを48%低下させます @生活習慣病を合併したうつ病の治療 生活習慣病を合併していても 抗うつ薬は高い有効性を示します
高橋医院