うつ病と肥満・糖尿病の関連
最近は うつ病と糖尿病 肥満の関連が 注目されています <糖尿病とうつ病> @糖尿病におけるうつ病 合併頻度は10~30%で 非糖尿病の人より2倍も高く 糖尿病は うつ病の発症リスクを24%高めます @うつ病における糖尿病 うつ病は 糖尿病の発症リスクを60%高めます また 血糖コントロールを有意に悪化させ 長期的なHbA1cコントロールも 有意に悪化させます 細小血管障害の発症リスクが1.3倍 大血管障害の発症リスクが1.2倍 それぞれ高まり 糖尿病による総死亡リスクが 1.5倍高まり 心血管死亡リスクが 1.4倍高まります うつ病では 糖尿病の食事療法 運動療法のセルフケア 服薬 定期的な検査のアドビアランスが 有意に低下しますから そうしたことが 糖尿病の管理不全につながると考えられます また 低血糖発作が起こるまでの時間が有意に短縮し その頻度を高め リスクを高めます この原因は不明ですが 糖尿病治療薬の服薬アドビアランスの低下が関与すると 推測されています @うつ病と糖尿病の共通の病態 うつ病と糖尿病では *ストレスで惹起される 副腎皮質機能亢進 交感神経系亢進 炎症性サイトカインの増加 *肥満 運動不足 喫煙などの 不健康なライフスタイル などが共通して認められます うつ病では インスリン抵抗性がみられることが明らかにされているので 糖尿病へのうつ病の合併により インスリン抵抗性がさらに増悪し 糖代謝に悪影響を及ぼすと考えられています @糖尿病のうつ病の発症 経過への影響 糖尿病では 脳へのインスリン移行が低下するので 海馬 扁桃体 前頭前皮質の神経保護作用が減弱して うつ病の発症 経過への影響を及ぼす可能性があります @糖尿病を合併するうつ病への抗うつ薬治療 うつ病を改善させるのみならず 血糖コントロールを有意に改善させます 生活改善指導 心理療法の併用が うつ病の改善 血糖コントロール 治療アドビアランスの維持・向上に ともにより有効であることが明らかにされています <肥満・メタボとうつ病> @肥満・メタボにおけるうつ病 うつ病発症リスクは 肥満者23%で非肥満者より2倍高く メタボでは非メタボより1.42倍高い 腹部肥満があると うつ病の発症リスクが1.38倍高まることも 報告されています また男性では メタボの構成要素が多いほど うつ病の発症リスクが高まります @うつ病における肥満 メタボ うつ病は 肥満の発症リスクを1.58倍高め メタボの発症リスクを1.52倍高めます @相互の治療への影響 うつ病があると 肥満に対する食事・運動療法の 体重減少効果が低下し 肥満があるうつ病患者では 抗うつ薬の治療効果が減弱します @肥満がうつ病発症を高める機序 肥満では 肥大化脂肪細胞からの炎症性サイトカイン増加により Sickness Behavior症候群 (運動低下 食欲低下 疲労感 気分の落ち込み)を 惹起して うつ病の発症リスクを高めます また 肥満 メタボで起こる慢性炎症が セロトニン合成を減少させ それにより うつ病の発症リスクが高まります 一方 うつ病になると 脂肪細胞の蓄積が促進して 脂肪が原因の炎症をさらに増強し 悪循環が形成されてしまいます @うつ病が肥満 メタボの病態に及ぼす影響 慢性的ストレス うつ病による慢性炎症が 糖質コルチコイド受容体の感受性低下 糖質コルチコイドの過分泌を誘導し インスリン抵抗性が惹起されます また ストレスで亢進した交感神経系が マクロファージを介して炎症反応を活性化し カテコールアミンは脂肪細胞を活性化して 炎症反応を増大させます うつ病で生じる こうした病態により 肥満 メタボの発症リスクが高まります @両方を合併した患者の治療による影響 肥満に対する食事・運動療法が うつ症状を改善させるという報告がありますが 肥満の改善 体重減少とうつ症状の改善の 有意な相関は認められていません 一方 うつ病への 抗うつ薬・認知行動療法と肥満改善指導は うつ症状の改善に加え 血圧 脂質・糖代謝の改善傾向を示すことが 明らかにされています
高橋医院