エマージングウイルス
ヒトに感染して病気を起こさせる 新たなウイルスとして注目されているのが エマージングウイルスです <エマージングウイルス> 野生動物に感染して共存し 病気を起こさなかったウイルスが なんらかのきっかけで突然変異を起こし ヒトに感染するようになり 病気を起こすことがあります そうしたウイルスは エマージングウイルスと呼ばれます 一般に ウイルスが 自然宿主以外の別の動物種に感染すると 重症な病気を起こすことがよくあります <エマージングウイルスのオリジナル宿主としての野生動物> @げっ歯類 179種類のウイルスが生息し 68種がヒトに感染し ラッサ熱などの病気を起こします
ヒトは 尿などの排泄物に触れて感染します @コウモリ 137種類のウイルスが生息し 61種がヒトに感染し マールブルグ エボラ SARS MERSなどの病気を起こします エマージングウイルスの多くが コウモリ由来です 新型コロナウイルスも コウモリ由来ではないかと推測されています @節足動物 蚊やダニが 吸血により動物やヒトに感染を広げます 黄熱ウイルス 日本脳炎ウイルス ウエストナイルウイルス デングウイルス ジカウイルス などが感染します <現代はエマージングウイルスによる病気が増えている> エマージングウイルスの感染により ヒトが新たな病気を発症することが増えています その原因として 以下のようなことが推測されています *野生動物の輸入 ネズミ オオコオモリ カモ 野鳥 げっ歯類などが 食用などで輸入されることが多く それらの動物の体内で共存していたウイルスが ヒトに感染して マールブルグ病などを発症します
*公衆衛生の破綻 エボラ出血熱などの原因と考えられます *ダム開発 森林開発 それによりヒトと家畜の大移動が起こり 従来は森の中で潜んでいた ウイルスと共存している動物が ヒトの社会に現れてきます *気象変化 エルニーニョ ウエストナイル熱の原因と考えられます *グローバリゼーション パンデミックを起こすウイルスが 世界中に拡散する原因と考えられます *近代畜産 大規模養鶏 高病原性鳥インフルエンザウイルスの 発生の原因と考えられます
このように 現代社会の構造的な変化が エマージングウイルスによる病気の増加に 深く関与します 医学的見地からの対処だけでは 根本的な解決につながらない可能性があり 社会的な対処も重要と考えられます こうしたことを人類が認識し 価値観を変えて 対処しない限り 未知のエマージングウイルスとの戦いは続くと 警告する研究者が少なくありません
高橋医院