コロナ新時代への提言・パンデミックに何を思う?
前回のブレマーさんのインタビューに続き いよいよ真打のハラリさんの紹介を始める前に ちょっとブレイク NHKは5月末にも 「コロナ新時代への提言 ~変容する人間 社会 倫理~」 という番組を放送し 哲学の國分功一朗さん 人類学の山極寿一さん 歴史学の飯島渉さん の3人が リモートで個別に自分の意見を語り 他者に質問し 他者からの質問に答えるという まさに“withコロナ時代的”な形式で行われました こういう形式は 討論の迫力や臨場感には欠けるものの 質疑応答は むしろきちんとロジカルな展開になり それはそれで良いかなと思いました <パンデミックに何を思う?> 司会者さんが まず そう問いかけます ゴリラ社会の研究者で 京大の総長をされている山極さんは コロナはしたたか 潜伏期が長く その間に感染し あまり重症化しない 人間が移動し集まりやすい現代社会に うまく適応している と述べられます ごもっともです そして 現代社会の 政治 教育 国際分業化した経済など その在り方の重大な危機をもたらしている 考え直させる機会になるかもしれない とつなげます 哲学者の國分さん これから このブログでも 彼の著書を紹介していく予定ですが 語られる様子は初めて拝見しました 危機に際して経済的格差がより鮮明になった 貧しい国では 衛生もソーシャルデイスタンスも保てない ウイルス感染は平等だが 人々が対処により受ける恩恵は平等ではない と指摘されます <コロナで世界はどう変わったか?> 司会者さんが次にした この質問に対し 國分さんは コロナ後の社会は変わる 他人に対して 感染源ではないかと潜在的に脅威を持つ そのような感覚が残り 人間関係 社会の在り方が変わらざるを得ない と答えます なるほど 人間関係の在り方が変わりますか? そうしたことは考えたことがなかったので 少し驚きました 疾病の歴史を専門にされている 歴史学者の飯島さんは 疾病史観はこれまでも繰り返されてきた 感染症はこれまでにも 人間社会にさまざまな影響を及ぼしてきた たとえばハワイでは 感染症で地元民が死んだので 労働力の維持のためにアジアから多くの移民が入り マスカルチャーが形成された と パンデミックが社会に及ぼす 大きな影響を指摘され ついで ロックダウンについて言及されます 武漢の人口は東京と同じ 湖北省の人口は イギリスやフランスと同じ この大規模の大々的なロックダウンが 粛々と行われたことは驚きで 世界的に大規模な厳格なロックダウンが 同時期に起こったのは歴史上初めてだ と驚かれます 山極さんも ロックダウンについて ロックダウンは人間社会にとって重大な危機だ 人はこれまで 仲間を増やし 移動して他の集団と交流することで 社会を作り 文明を発展させ グローバルな社会ができてきた ロックダウンは それらをすべて否定してしまう コロナにより 人との接触 移動が禁止されて 社会の造り方が根底から覆されている と指摘されます ロックダウンについて そうした視点から考えたことは ありませんでしたが 人が他者と直接的なコンタクトの機会を失い オンラインでの交流がメインとなることは 精神的にも社会的にも 少なからぬ影響を及ぼすことは 充分に想像できます 國分さんは 別の視点から 今のコロナ社会の在り方に疑問を呈されます 人間を単なる駒と見る 疫学的 統計学的見方に違和感がある ひとりひとりの顔が見えず 集団としてとらえられる 死ですら 数字の一部として扱われてしまう 山極さんが賛同し そして問います 今こそ 新しい哲学の時代ではないか? コロナにより 人間が生きる意味が変化するのか?
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