山中先生と西浦先生の対談を紹介しましたが

専門家委員会の活動から
少し身をひかれて研究に戻られた西浦先生が
ニューズウイークや毎日新聞の
単独インタビューに応えられていて
それがなかなか面白いので紹介します

西浦先生のニューズウイークのインタビュー記事
西浦先生の毎日新聞のインタビュー記事


西浦先生は4/15に
日本がこのまま何の対策も打たずにいると
84万人が重症化し 42万人が死亡するという
衝撃的な被害想定を発表され
とてもとても大きな話題になりました

敢えてあの発表を行われた理由について

「対策をしないと こういう感染症だ」
ということを
一般の人が知らないのは科学的におかしいと思う

と語られます

4/15に発表された被害想定のスライド


そして

リスク評価については
アンダーリアクト(控えめに言う)よりは
オーバーリアクト(大げさに言う)して話をすべきだが

新型コロナウイルスの流行の本質は
接触を止めないといけないものであり
そのための行動変容には 被害想定は不可欠なので
あの発表はしなければならなかったし
オーバーリアクトではなかったと思っている

と振り返られます


発表前には 厚労省の官僚から
「被害想定に関連するものはパニックが起こる
 人が恐れることになるし
 厚労省の歴史としてやったことがない」
と 相当強く反対されたそうですが
信念を持って発表に踏み切られたそうです


しかし「42万人の死亡」という文言のみが
クローズアップされ
その前提条件やメッセージの真意から外れて
数字が独り歩きしてしまった
と 残念そうに語られます

あの発表のだいぶ後に
分析チームのリーダーである押谷先生に

「感染症の流行は
 早期に徹底的に対策をすれば被害は減るものだし
 流行対策は大変だけれども
 ハイリスクの接触が減れば
 想定される死亡者の桁数がひとつずつ減るものだから
 頑張りましょう
 というメッセージが全然なかったし 励ましがなかった」

と注意されたそうです

押谷先生と西浦先生

西浦先生は 押谷先生のアドバイスを受けて
コミュニケーションをする上での課題として認識しなければ
と痛感されたそうです


そして 次のように論を展開されます

科学的事実と
それを政策に生かすことの間には
オペレーションの研究があります

科学的なエッセンスを捉えたら
どのように政策に返していくかが大事だけれど

その伝え方 コミュニケーションが
かなり重要だと実感しました

その過程には
コミュニケーションのプロの介在が必須です

コミュニケーションのプロ

科学的推論により なぜその結論になったのか
その理由や根拠を
きちんと国民に説明することが重要だし

情報をきちんと公開すること
判断の理由なども含めて
簡潔に分かりやすく説明すること
の重要性が問われている時だと思う

と まとめられています


公衆衛生や社会疫学の研究は
必然的に社会とつながるので
そのような科学以外のファクターも
考慮していかなければならないのですね

書き手にとって
“あなたの知らない世界”でしたが
そこにコミュニケーションのプロの介在が必須だ
というアイデアがとても印象的でした

押谷先生の
「励ましがなかった」というアドバイスも
なるほど~と思いましたし

次元が異なりますが
患者さんと接する日々の臨床の場でも
同じことが言えるなと
ある意味で耳が痛い感じがしました(苦笑)

 

高橋医院