脇田先生の講演の続きを紹介します

ついで
国立感染研が行われている感染状況の解析について
報告されました

@最近の感染状況

若年層を中心として
接待をともなう飲食店 居酒屋などでの
会食・飲み会を介した感染拡大が継続している

クラスターが発生する場所は
3密や大声を発する状況であって

近隣のスーパーでの買い物
通勤時の公共交通機関 オフィスなどでは
感染は拡大していない

最近の感染状況について説明する図

よく患者さんから
満員電車での感染リスクについて聞かれますが
今後は このスライドを
お見せすることにしましょう


@7月以降の感染の特徴

6月までと比較して
男性が増え 無症状の人が増えている

男性が増え 無症状の人が増えていることを示すグラフ

20歳代が多く 高齢者が少ない

20歳代が多く 高齢者が少ないことを示すグラフ

重篤な肺炎が減少している

重篤な肺炎が減少していることを示すグラフ

こうした傾向が見られる原因として

*若年層での感染が多く
 重症者の増加は緩やかなこと

*早期に診断されていること

*重症化予防治療が一定の効果を上げていること

*院内感染・施設内感染が抑制されていること

といった原因が考えられているそうです

実際に病院で治療にあたっている方からも
これまでの治療に関する情報の積み重ねにより
早期の抗ウイルス治療や
重症化予防の治療に手応えがあると聞きます

重症化させない 死なせない治療が
スタンダード化できつつあるのかもしれません


前回 ご紹介したウイルス株の変異についても
解説されました

@ウイルスの推移

1~2月は 武漢型

3月からは ヨーロッパ型で
4月に第1波の感染拡大が起こり

5~6月に収束傾向を示したけれど
ヨーロッパ株は残存していて
7月から 新たに感染者が増加している

ウイルス株の変化の推移を示す図

6月中旬から
ヨーロッパ株が変異した株が 
突然 顕在化して
この株に感染した患者さんが全国で増えている

6月中旬からヨーロッパ株が増えていることを示す図

この変異が
どのような影響を及ぼしているかについては
言及されませんでした


最後に
ワクチンと治療薬について概観されました

@ワクチン開発の問題

*効果を評価するための動物モデルの不在

*SARS MERSのワクチンで問題となったADEも含めた
 有効性と安全性への最大限の注意が必要なこと

*短期間で大量に安価に供給するという課題

*優先接種順位の検討

*国際的なワクチン配分のスキーム作り

を 問題点として挙げられました

ワクチン開発の問題点をまとめた表

ワクチンが現実的な話題になるには
もう少し時間がかかりそうですね


@治療薬の開発

感染研では
既存の薬剤の抗ウイルス活性の検討や
化合物ライブラリーから約3200種類の化合物を選択して
その抗ウイルス活性の検討をされているそうです

治療薬の開発について説明する図

その結果 話題になっている
抗マラリア薬のクロロキン
抗HIV薬のロビナビル(カレトラ)
抗インフルエンザ薬のファビピラビル(アビガン)は
抗ウイルス効果をそれほど示さないけれど

あまり話題になっていない
抗HIV薬のプロテアーゼ阻害薬のネルフィナビル
白血球減少の治療に用いられるセファランチン
抗ウイルス効果を示すことが明らかにされ

ネルフィナビル セファランチンの抗ウイルス効果について説明する図

特にネルフィナビルは
早期治療によりウイルス量を大幅に抑制し
ウイルス排除までの日数を抑制できるので
共同研究が進められているそうです

ネルフィナビルの効果を示す図


@まとめ

最後に まとめとして

まとめを示すスライド

*感染が拡大しやすい場所を避けることで
 クラスター発生が防止できる

*経済活動 人の移動の活発化により
 感染が再拡大してしまう

*重症化の防止は一定程度可能になってきた

といった現状の下に

*戦略的な検査拡大が必要

*広く有効な抗ウイルス薬の開発が必要

*開発中のワクチンの 有効性 安全性に
 最大限の注意が必要

と今後の課題についてまとめられました
高橋医院