男の弱さ 女の哀しさ
女性はX染色体を2個持ち 男性は X染色体を1個 Y染色体を1個 持っている この差は 実はとても大きいのです というのも 前回説明したように X染色体上には 生命活動に必須な遺伝子が数多く存在しています もし X染色体上のそうした重要な遺伝子に 変異が生じて働かなくなったら 重大な病気が生じてしまいます <女性の賢さ> しかし 女性はX染色体を 父親由来 母親由来 の 計2個持っています ですから どちらかのX染色体にに異常があっても 他方がリカバーして 病気の発症を防ぐことができます えっ? わかったようで わからないぞ と 戸惑われている方も多いでしょうから もう少し詳しく説明します 繰り返しますが 女性は 父親由来 母親由来の 2個のX染色体を持っています しかし 2個のX染色体のうちの片方は 発生初期にランダムに不活化され その遺伝子は働かなくなります この現象は 2個のX染色体から過剰な量の遺伝子が発現して 余計なダブリが生じてしまうのを 抑制するために生ずると考えられています 生体にとっては 必要な遺伝子が無いのは困りますが 必要以上にあっても かえって困るのです ポイン トは 母親由来 父親由来 の2個のX染色体 上の図の ピンクのX と ブルーのX の どちらが不活性化されるかは 細胞によってランダムに起こることで つまり 女性の体の中には *母親由来のX染色体が 不活化されている細胞 と *父親由来のX染色体が 不活化されている細胞 が 同数ずつ存在しているわけです こうした現象により 女性では X染色体に存在する遺伝子の働きが 担保されるのです どういうことかというと 父親由来 母親由来の2個のX染色体の どちらかに遺伝子異常があっても 異常がない方のX染色体の遺伝子が 正常に働くいている細胞が 女性の体には半数存在しているので 個体としては X染色体遺伝子の異常により生ずる病気の発症が 防御できるのです 女性の賢さです <男性の弱さ> しかし 男性はX染色体を1個しか持っていません ですから そのX染色体の遺伝子に異常があったら 女性のようにリカバーすることができず 病気を発症してしまいます つまり男性は X染色体の遺伝子の異常による病気になりやすい こうした病気は 伴性劣性遺伝病と呼ばれ 筋ジストロフィー 無γグロブリン血症 血友病 色覚異常 などがあり いずれも 男性が発症し 女性は発症しません 男の弱さです <女性の哀しさ> 男子が伴性劣性遺伝病を発症するのは お父さんが伴性劣性遺伝病でない場合は お母さんがX染色体の遺伝子異常を 有していることによります このように 遺伝子異常があるX染色体を1個有している女性を 保因者と言いますが お父さんが健常で お母さんが保因者だと 生まれてくる女子は発症せず (50%は保因者になりますが) 一方 生まれてくる男子の 50%は発症してしまいます また 女性が保因者ではなくても パートナーが伴性劣性遺伝病の患者さんだと 生まれてくる男子は正常でも 女子は保因者となり 孫以下の代で 病気を発症させてしまうリスクがあります どういうことかというと お母さんは健常なので 2個のX染色体はいずれも異常ありませんが お父さんが患者さんだと お父さんのX染色体は異常があります すると 生まれてくる子供は 男子は 母親の正常なX染色体を受継ぐので健常ですが 女子は 父親の異常なX染色体と 母親の正常なX染色体を受継ぐので 上記に説明したように リカバーにより病気は発症しませんが 受継いだ父親の異常なX染色体の保因者となって 次の世代に伝えてしまう つまり その保因者のお母さんから生まれた女の子が 成長して結婚して子供を作るとき 上記で説明したような状況になるのです 男の子の孫が 発症するリスクがある 女性は 自らが伴性劣性遺伝病 を発症することはありませんが X染色体上にある原因遺伝子の 保因者 キャリアとなり 子孫にリスクを継いでしまう 女性の哀しさです 近親相姦がマズいのは こうした理由によるもので ヨーロッパの王室では 近親相姦が繰り返された結果 ハプスブルグ家では 知的障害をもった子供が数多く生まれ ロマノフ王朝では 血友病に苦しむ跡取りが多く その悩みをラスプーチンなどにつけこまれ 結果としてロシア革命が達成される 原因のひとつにもなりました ということで 男(Y染色体)は 単純に弱いだけだけれど 女(X染色体)は 賢いけれど 執拗で 哀しいのです、、、 ちょっと 短 絡かつ煽情的な表現でしたでしょうか?(苦笑)
高橋医院