糖質の罠
中央区・内科・高橋医院の 健康のための栄養学に関する情報 前回は *糖質の種類 *エネルギー源としての糖質の役割 *血糖調節の仕組み など 糖質についての一般論を説明しましたが 現代社会で大きな問題になっているのが 肥満や糖尿病です そこで 糖質は肥満や糖尿病にどのように関与しているか? 今日は 糖質の負の側面を解説します <砂糖と果糖:血糖値を上昇させやすい危険な糖質> 以前ご説明したように 食後の急峻な血糖値上昇と それにともなう急峻なインスリン分泌は 糖尿病の発症リスクになると 考えられています ですから 糖質の吸収を遅らせる食物や食べ方が 推奨されています 糖質には 単糖類 二糖類 多糖類 があることを説明しましたが 速やかに吸収されて 急激に血糖値を上げるのは 単糖類と二糖類です 特に 単糖類のブドウ糖と果糖がつながった 二糖類のショ糖(砂糖)は 最も急峻に血糖値を上げます 砂糖が忌み嫌われるのは そうした理由に依るものです @果糖の危険性 果物に多く含まれる果糖は 健康的なイメージがある果物に含まれているため なんとなく良いイメージを持ちますが 実は 果糖はショ糖よりたちが悪いのです まず ブドウ糖よりエネルギーになりにくいので 中性脂肪に変換されやすい また 肝臓にダイレクトに運ばれて代謝されますから 脂肪肝の原因になりやすい ブドウ糖に比べて 内臓脂肪や皮下脂肪もためやすい さらに 脂肪肝だけでなく 糖尿病や生活習慣病や 癌の発生にも ブドウ糖より深く関与するとされています このように 果糖は 侮れないのですよ 果物は 体に良いとされる フルーツジュースやスムージーなどで 簡単に大量に摂れてしまうので 要注意です <糖質中毒> 最近は「糖質中毒」という概念も 提唱されています 甘いものを食べたり飲んだりして 血糖値が30分ほどで急上昇して最高点に達すると 脳内麻薬のエンドルフィン ドーパミンが分泌され 幸せな気分になります しかし 90分ほどでインスリンが過剰に出て 反応性低血糖になると 反応してアドレナリンが分泌され そのために イライラしてきて 再び砂糖が欲しくなります こうした血糖値 インスリンの 急激な上昇と下降 ジェットコースター状態が続くと 糖質中毒になると考えられています 甘い飲み物は急激に血糖値を上げるので 特に要注意です <過剰な血糖が肥満を導く> 肥満と糖質の関係は 過剰な糖質が脂肪に変換されるのが ポイントです 既に何度も説明しましたが 大事な点なので繰り返します 糖質を過剰に摂ると まずグリコーゲンとして貯蔵されますが グリコーゲンの貯蔵容量は少ないので すぐに満杯になり さらに過剰な糖質は 中性脂肪として脂肪組織に蓄えられます これが肥満になる現象の本態ですが 早期に貯蔵糖質のグリコーゲンから 中性脂肪に切り替えられるのは 立派な理由があります それは 糖質より脂質の方が 単位重量当たりが産生できるエネルギー量が 高いからです 糖質は1gあたり4kcal 脂質は9kcal 糖質より脂質として蓄えていた方が 効率よくエネルギー産生できます これは 食糧難で飢餓と戦っていたご先祖様が作り出した体質ですが 現代の飽食の時代には この体質が仇になり肥満や糖尿病が増えているのは 以前にご紹介した通りです <すべてはご先祖様のせい?> ちなみに 食糧難にあえいでいたご先祖様にとって 甘いものは滅多に食べられない とても貴重な贅沢品でした ですから上述したように ヒトは甘いものを食べると 脳の中で幸せ感を感じるようになりました そして このご先祖様の脳を引継いだ現代人も やはり甘いものを食べると とても幸せな気分になり 甘いものを食べないでいると とても甘いものが欲しくなります だから 肥満の方も糖尿病の方も 甘いものがやめられない またしても ご先祖様伝来の脳の仕組みが 現代では仇となっているわけです だからといって ご先祖様のせいにして 甘いものを食べたり飲んだりし続けたら 草葉の陰でご先祖様は泣いているでしょう 難しいのは承知の上で 敢えて肥満や糖尿病の方々には 自分の意志の力で 頑張るしかない と エールを送りたいと思います もちろん 自戒も込めてです(苦笑)
高橋医院