中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報


ヒトの体の
重要なエネルギー源である糖質

炭素(C)の環状構造に 
水素(H)酸素(O)が
結合しています

糖質の構造式

今日は 糖質の種類と機能について解説します


<糖質の種類>

糖質は 
分子を構成する単糖類の数により
下記のように分類されます

*基本単位である 単糖類

*単糖類が2個結合した 二糖類

*単糖類が3~9個結合した オリゴ糖

*単糖類が10~1000個結合した 多糖類

糖質の分類表

単糖の数珠のつながりの数が
増えていくイメージです

糖質の構造のイメージ像

単糖類の仲間は

*ブドウ糖

*果糖

*ガラクトース

*ペントース

単糖類の図示


ペントース(五炭糖)
ブドウ糖から作られる
核酸(DNAなど)の構成成分です

糖はDNAの形成にも関わっているのです

二糖類の仲間は

*ショ糖(砂糖):ブドウ糖と果糖の結合物

*麦芽糖:ブドウ糖2分子の結合物
     でんぷんがアミラーゼで消化されて生じる

*乳糖:ブドウ糖とガラクトースの結合物

二糖類の図示

オリゴ糖は 何種類かありますが

オリゴ糖の図示

腸内でビフィズス菌に食べられることで
ビフィズス菌を増やし
腸内細菌叢のプロファイルを
善玉菌優位に改善します


オリゴ糖が腸内細菌の善玉菌のエサになることを示す図

このあたりは 腸内細菌叢の解説をご覧ください

多糖類の代表は
 グリコーゲン食物繊維

グリコーゲンは
貯蔵エネルギーとして肝臓や筋肉に蓄えられます

グリコーゲンが貯蔵エネルギーとして肝臓や筋肉に蓄えられることを示す図

<食物繊維>

忘れてならないのが
糖質とともに炭水化物のグループにくくられる
食物繊維

糖質はエネルギー源になる栄養素ですが
食物繊維は
エネルギーになりません!

ですから 同じ炭水化物の仲間でも
糖質と食物繊維は 
ずいぶんと趣が異なります

糖質と食物繊維の差異を示す図

水に溶ける水溶性食物繊維

水溶性食物繊維の特性を示す図

溶けない不溶性食物繊維があり

不溶性食物繊維の特性を示す図

前者は 便を軟らかくする作用
後者は 便の量を増やす作用

があり 相互作用により排便を容易にします

また セルロースを含んでいるので
消化酵素を持たないヒトは
食物繊維を消化できませんが

水溶性食物繊維は腸内細菌の餌となり

腸内細菌により分解されて
酪酸 酢酸 プロピオン酸などの 短鎖脂肪酸 
の産生が促進されます

これらの物質は
腸内細菌の代謝産物と呼ばれ
さまざまな重要な生体機能を発揮します


腸内細菌により水溶性食物繊維が代謝され短鎖脂肪酸が産生されることを示す図

短鎖脂肪酸

*食欲抑制ホルモン分泌

*脂質代謝制御

*抗炎症作用

などさまざまな生理活性を有していて
最近 各分野でとても注目されています

短鎖脂肪酸が発揮するさまざまな生理活性

<エネルギー源としての糖質・血糖の制御>

@糖質はエネルギー源として重要で
 運動時は主に糖質が消費されます

但し 
1gあたり4kcalのエネルギーしか産生できず

グリコーゲンの貯蔵量も
せいぜい12~16時間の絶食に
耐えられる程度の分量です

効率が悪く 長続きしない

ここが
エネルギー源としての
糖質と脂質の大きな違いです

糖質は脂質よりエネルギー産生量が低いことを示す図

グルコースからのエネルギー産生
既に詳述した 
解糖系TCA回路電子伝達系に依ります


@血糖の調節

糖質を摂取すると
血液中の糖(血糖)が上昇しますが

血糖値は
インスリン等のホルモンによって
厳密に制御されています


インスリンの働きにより

グルコースが過剰なときは
グリコーゲンに変換され
肝臓と筋肉に貯蔵されますが

さらに過剰なときは
前回ご説明したように

グルコースは脂肪酸に変換され
脂肪細胞に中性脂肪として蓄えられます

インスリンが
太らせるホルモンと呼ばれる所以です

血糖を調節するホルモンの種類


一方 
グルカゴン アドレナリン 
成長ホルモン 甲状腺ホルモン 糖質コルチコイドなどは

血糖を増加させる働きを有するホルモンで

血糖を低下させるホルモンがインスリンだけなのに
上昇させるホルモンが何種類もあるのは

厳しい食環境下で暮らしていた人類の祖先
栄養素を充分に摂れなくても 
血糖値を維持できるような
体の仕組みを作り上げたためです


<糖新生>

グリコーゲンの貯蔵量が底をついてしまうと

肝臓では
アミノ酸や乳酸を原料として糖が作られ
この際 筋肉はアミノ酸の供給源になります

これが 糖新生 です

糖新生の説明図


一方 脂肪組織の中性脂肪
血糖上昇作用を持つホルモンが活性化した
ホルモン感受性リパーゼにより
脂肪酸とグリセロールに分解され

グリセロールは
肝臓に運ばれ糖新生の原料に使われ

脂肪酸は
β酸化でアセチルCoAに変換され
TCA回路→電子伝達系を経てATPが作られます

その結果
グルコースからのATP産生をセーブでき
グルコースの消費を抑えることができます

このように
糖質はひたすら
エネルギー源として働くのがメインな仕事で

脂質やタンパク質に比べて
機能はシンプルですが
生体活動には必須で重要な働きをしています

しかし

血糖値のコントロールが上手くいかないと
糖尿病になってしまいますし

過剰なグルコースは脂肪組織で中性脂肪になり
肥満を誘導し
生活習慣病も引き起こしてしまいます

そういう意味では
負の側面も大きい曲者とも言えます

次回 そのあたりを詳しく説明します
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