中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報


脂質は色々な
種類のリポタンパク質にパッケージされて
血液の流れに乗って 
体内を移動することを説明しました

少し繰り返しになりますが 
大切なことなので

ヒトが摂取した食物に含まれる脂質が 
どのように臓器に運ばれるかを
もう一度 具体的に解説しましょう

<中性脂肪の体内での動態>

@食物から摂取した中性脂肪の流れ

食物に含まれる脂質の
大部分は中性脂肪ですが

中性脂肪は
 
膵臓から分泌される分解酵素の
リパーゼにより
脂肪酸グリセロールに分解されて
小腸から吸収され 

小腸上皮細胞内で
中性脂肪に再合成されたあと

さまざまな栄養素から吸収 分解 再合成された中性脂肪が全身を流れる過程の図示

キャリアーのカイロミクロンに取り込まれて
全身に運ばれます

臓器にたどり着いたカイロミクロンは 
中性脂肪を放出して
各組織に存在する
リポタンパクリパーゼにより分解され 
脂肪酸が細胞内に取り込まれます

各臓器に中性脂肪を供給した
カイロミクロンは小さくなり
カイロミクロンレムナントとなり 
肝臓に取り込まれて処理されます

中性脂肪から脂肪酸が蓄積される様子

@肝臓で合成された中性脂肪の流れ

一方 肝臓では 
過剰のグルコースから中性脂肪が合成され
VLDLに取り込まれて 
肝臓から放出されて全身を循環し

さまざまな栄養素から肝臓内で合成された中性脂肪がカイロミクロンとして全身を流れる過程の図示

VLDLの中性脂肪は 
カイロミクロンのときと同様に
脂肪酸として脂肪組織に取り込まれます

VLDLがLDLに変化したり 内部の中性脂肪が脂肪組織に蓄積される過程を示した図

VLDLは中性脂肪を放出して 
小さくなってVLDLレムナントになり
肝臓に戻って処理されますが

一部はLDLになり 
末梢組織 血管壁に取り込まれます

@各臓器に取り込まれた中性脂肪の動態

以上が中性脂肪の体内での流れですが

脂肪組織 筋肉などでは
カイロミクロン VLDLから供給された
中性脂肪が
リポタンパクリパーゼにより分解されて
脂肪酸が生じます

脂肪細胞に取り込まれた脂肪酸は
中性脂肪に再合成され 
皮下脂肪・内臓脂肪として貯蔵され

筋肉に取り込まれた脂肪酸は 
β酸化を経て
ミトコンドリアでのTCA回路・電子伝達系での
ATP産生の原料になります

中性脂肪の体内での動態を
イメージしていただくことができましたか?

<中性脂肪を分解する2種類のリパーゼ

リパーゼは中性脂肪を分解しますが
体内には2種類のリパーゼが存在します

@リポタンパクリパーゼ・LPL

さまざまな組織の
血管内皮細胞の表面に存在し

血中を流れるリポタンパク質を構成する
アポタンパクCⅡにより活性化され
カイロミクロンやVLDL中の
中性脂肪を分解します


リポタンパクリパーゼが中性脂肪を脂肪酸に分解する様子

@ホルモン感受性リパーゼ・HSL

脂肪細胞内に存在し 
ホルモンにより活性化されるタイプです

空腹時には
血糖上昇ホルモン(グルカゴン アドレナリン)
により活性化され
脂肪組織の中性脂肪を 
脂肪酸とグリセロールに分解します

グリセロールは
糖新生の材料として使われ

脂肪酸は
遊離脂肪酸となり血中を移動し
各臓器でβ酸化を受けてATPの材料となります

ホルモン感受性リパーゼが中性脂肪を分解する様子

@インスリンによるリパーゼの活性化

少し話がそれて恐縮ですが
唯一の血糖低下ホルモンであるインスリン

脂肪組織のリポタンパクリパーゼを
活性化
脂肪酸の脂肪組織内への取込みを促進するので
結果的に 脂肪が溜まりやすくなります

一方 

脂肪細胞内のホルモン感受性リパーゼは
抑制するので
脂肪組織の中性脂肪は分解されにくくなり
またしても結果的に
脂肪が溜まりやすくなります

こうしたそれぞれのリパーゼに対する
正反対のトリッキーな性質により
インスリンは肥満を誘導するホルモン
として働くことになるのです

<コレステロールは
 食事から摂られるだけでなく 体内で合成されている>

コレステロール

*食物から
 1日に0.5g摂取され
 0.05~0.2gほどが吸収されます

*肝臓内で
 アセチルCoAを原料として
 HMG-CoA還元酵素により合成されますが
 その量は
 食事から摂取する量よりはるかに多い
 1.5~2.0gです

実は 
食べ物から得られるコレステロールより
体内で合成されるコレステロールの方が
量的にはかなり多いのです

コレステロールの合成過程


コレステロールが
肝臓から血管壁などの臓器に運ばれるか
臓器から血液に取り出され肝臓に戻るかは
LDL・HDLの働きによることは
前回 説明した通りです


でも ちょっと待ってよ

食事から摂る量より 
体内で合成される量の方が多いのなら

食事から摂るコレステロール量 体内で合成されるコレステロール量を比較した図

食事のコレステロールについて
そんなに厳しく言われる必要はないのでは?

そんな疑問を持たれた読み手の方は 
するどい!

次回は そのあたりについて説明します
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