中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報


引き続き 脂肪酸の分類 
について説明します

前回は炭素の数により分類しましたが
今日は炭素の飽和度によって分類します


さて 炭素の飽和度 とは 
いったい何でしょう?


<飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸>

脂肪酸は 
炭素が横1列に並んだ
基本構造をしていますが

炭素分子は 
他の分子と結合するための
4本の腕を持っています

そして 
となりの炭素分子との結合に

2本の腕を使う場合と 
1本の腕を使う場合があります

2本使う場合は 二重結合 といいます

炭素の二重結合を示した図

そして

*二重結合がない脂肪酸を 飽和脂肪酸

*二重結合がある脂肪酸を 不飽和脂肪酸

と呼びます

二重結合の有無による脂肪酸の分類図
飽和 不飽和の図示

<飽和と不飽和の 安定性の差異>

@二重結合の有無による反応性の差異

*飽和脂肪酸

二重結合がないので
炭素分子は4本の全ての腕を 
水素や隣の炭素との結合に使っていて
反応が飽和状態にある 

*不飽和脂肪酸

二重結合があるので
隣の炭素との結合に使っている
2本の腕の1本は 
水素との結合に使えて
反応が飽和していない 

つまり 
不飽和脂肪酸の方が飽和脂肪酸よりも
水素分子などの他の分子と反応しやすい

不飽和脂肪酸の反応のしやすさを示した図

お~ 有機化学を勉強していた頃を思いだします!(笑)


また 
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は 
構造上も違いがあります

@構造上の違いによる安定性 酸化されやすさの差異

*飽和脂肪酸
 
直線状の構造をしていて 
化学的に安定しています

飽和脂肪酸の構造図

平面的な構造なので 
酸素が入り込みにくいし
炭素の腕は全て水素で満たされているので 
酸素がつけず酸化されにくい

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸の構造図

二重結合の部位で折れ曲がり 
分子間の隙間ができるので流動性が増し
化学的に不安定です

不飽和脂肪酸の不安定性を示した図

その隙間に酸素が入り込み得て
しかも二重結合の腕の1本に
酸素がつき得るので 
酸化されやすい

酸化されると 
他の脂肪の酸化や
正常細胞の傷害が起こってしまい
体にとっては色々と不都合です

不飽和脂肪酸の酸化されやすさを示した図

このように 
二重結合の有無により 
化学的安定性が規定されます

再度 大学の教養課程の有機化学で
分子模型で分子を作りながら 
勉強したのを思いだします!(笑)

分子模型キット

若き日の思い出に浸るのはさておき(苦笑)

これから説明するように
不飽和脂肪酸は 
体に良い脂肪酸なのですが

世の常で 善なるものは 弱い!

体に良い不飽和脂肪酸は 
簡単に酸化されて機能を失ってしまいます

ご多聞にもれず 
脂肪酸の世界も不条理に満ち溢れています(笑)



<飽和脂肪酸が多い食材 不飽和脂肪酸が多い食材>

@飽和脂肪酸

肉 バター クリーム チーズなどの
動物性脂肪に多く
常温で固っています(脂)

霜降り肉の まさに白い脂の部分が 
飽和脂肪酸です

パルミチン酸(炭素数16) 
ステアリン酸(炭素数18)
などが代表例

飽和脂肪酸を多く含む食材

@不飽和脂肪酸

植物油や魚油に多く 
融点が低いので 
常温で液体です(油)

オレイン酸 
リノレン酸 
リノール酸 
EPA DHA
などが代表例です

不飽和脂肪酸を多く含む食材

脂(飽和脂肪酸)と
油(不飽和脂肪酸)の違い
イメージできましたか?

飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸の固まりやすさの差異を示した写真


<飽和は悪玉 不飽和は善玉>

さて 例によって短絡的に(笑)
脂肪酸も善玉と悪玉にわけましょう!


@不飽和脂肪酸は 善玉脂肪酸

コレステロールを上昇させないので 
動脈硬化は引き起こさず
血栓ができるのを予防したり 
血圧を下げたり
体に良い作用をたくさん持っています!


@飽和脂肪酸は 悪玉脂肪酸

過剰摂取により
LDLなどのコレステロール値が上昇するので
動脈硬化を引き起こしてしまいます

飽和脂肪酸が悪玉であることを示す図

肉やバターは 
なるべく控え目にしましょう 
というわけは
悪玉の飽和脂肪酸が多いから

魚や植物油は 
たくさん食べましょう 
というのは
善玉の不飽和脂肪酸が多いから

納得していただけましたか?(笑)

脂肪酸の分類をまとめた図

次回は 善玉の不飽和脂肪酸の種類について解説します
高橋医院