2017年春 ブルックリン
佐野さんの スポークンワーズ の続き ユニオンスクエアで パフォーマンスしていたミュージシャンに 佐野さんは こう問いかけられます 「アーテイストとして 今 いちばん大事にしている気持ちは?」 その答えは 「検閲に対抗する気持ち」 「大きく社会が変わる中で アーテイストがやるべきことは何か?」 その答えは 「ワードとビートで 人々が気がつかないことを 気づかせてあげる」 佐野さんらしい答えですが 2番目の問いへの答え そこまで考えているのか とも思いました まあ トランプが世の中を荒らしまくっている 2017年のNYの路上で こんな問答が行われるのは 旬といえば旬かな?(笑) 番組では 佐野さんがスポークンワーズにたどり着いた バックグラウンドも紹介されました 1950年代のアメリカで 企業 メデイア 近代文明 資本主義 差別 検閲 富といった あらゆる矛盾に反抗の矛先を向けていた ビートと呼ばれる文学者たちへの共感 ボブ・ディランの 言葉とビートによるレジスタンス への共感 そうした共感から生まれた 言葉と音楽の融合のための基礎実験 さらに 1980年代 日本での大ヒットの渦中に その状況から逃避するように 突然NYに移り住んだときに 社会の底辺の若者たちが 自らのアイデンティティを証明するために作った ヒップホップとの衝撃的な出会い そうした土壌のなかから スポークンワーズが生まれてきたそうで なるほど 背景が少しわかったような気がします 10代で感じた言葉へのこだわりを ずっと追求し続けてきたのですね 歳を重ねて さらに表情に色濃くにじみ出るようになった 彼の意志の強さの源を 垣間見た気がしました さて 2001年から スポークンワーズを一緒に作ってきた 佐野さんの盟友とも言えるミュージシャンは 彼ほど メッセージを真剣に鋭く発する人は それほどいない 歌を超えた 広がりと深みを求めている と 佐野さんのことを評します メッセージ性の強さ 確かにそこが 惹きつけられるポイントなのかもしれません 番組のタイトルにもなった Not yet free という曲のなかで 世の中のさまざまな生き方を例示したあと 「君はどっち? 僕はこっち」 と 彼は問い 答えます そう 自分のスタンスは はっきり明示するけれど ヒトに敢えて 自分の意見に従わせようとしない そんな彼の優しさも 惹きつけられるポイントなのでしょう セッションの最後の曲となった What makes us mad? 何が俺たちを狂わせるのか という ちょっと刺激的なタイトルの曲では 俺たちは 3個のダイアモンドを掘り当てて 4個のダイアモンドを失う と アメリカ生まれの エゴなグローバル資本主義を批判します そして 番組のエンディングには NY滞在中に インスピレーションを受けて書き上げた新しい曲 こだま アメリカの友人 日本の友人に の スポークンワーズが流されます 今の分断された世の中でできることは 友達の痛みに寄り添うこと でも 寄り添うことしかできない 僕は問う 君はどこにいるか? 亡びに抗うか? 亡びに酔うか? 亡びを炊きつけるか? 亡びをただ待っているだけの 野蛮な今か? 眼を開いて 前に一歩進むか? 確かに 佐野さんは 「ワードとビートで 人々が気がつかないことを 気づかせてあげる」 ことを トライしているようです でもなあ そんなことを いきなり正面から問われてもなあ いつものように 彼の真摯さをはぐらかすかのように そんなことを思いつつ でも この先も佐野さんのことは フォローしていくのですよ(苦笑) それにしても 今回の番組での佐野さんの表情は 厳しかった 2017年 春のブルックリン まさに あの変人が 好き放題に掻き回している アメリカの街の雰囲気は それまでとは違う何かを 彼に感じさせたのでしょうか?
高橋医院