老化を制御する重要な因子のひとつが 
テロメア です

<テロメアとは?>

テロメアは 
細胞の分裂をつかさどる分子で

染色体の端に存在して 
染色体の端を守る役目をしています

テロメアの染色体上の存在位置を示す図

その本体は 
TTAGGGという単位(塩基配列)の
繰り返しです

TTAGGGという塩基配列を示す図

細胞が分裂するたびに
テロメアが1単位ずつ切り取られ
短くなっていきます

ですから 
細胞分裂の回数を
カウントしている物質とも言えます


テロメアが短くなくなると 
細胞が分裂できなくなります

これが細胞老化の本態と考えられていて

出生時には10000単位あるテロメアが
5000単位に短縮すると 
寿命が終わると考えられています

テロメアが短くなくなると 細胞が分裂できなくなることを示す図

<病気とテロメアの関係>

病気になると 
テロメアが短縮しますし

テロメアが短縮すると 
病気になりやすくなります

病気で臓器が傷害されると
死んだ細胞を補うために細胞分裂が増え 
テロメアが短縮します

臓器の細胞のテロメア短縮が限界になると
臓器の寿命が尽きてしまいます

テロメアが短縮すると

*膀胱がん 肺がん 
 などになりやすい

*心筋梗塞 脳卒中の
 リスクが増える

*動脈硬化 糖尿病が悪化する

*感染症に罹りやすくなる

といったことが報告されています


<テロメアの短縮に関与する因子>

テロメアが短くなることには 
どのような因子が関与しているのでしょう?

@テロメアは 
 肥満 喫煙 運動不足で短くなります

肥満だとテロメア長が短いことを示すグラフ
 
@運動をすると テロメアの長さが伸びます

運動が体に良いとされているのは 
こうした効果もあるからです

@酸化ストレスもテロメアを短くさせます

酸化ストレスの蓄積により 
テロメア長が短縮し

活性酸素は 
テロメアのGGGを分解して壊すことが
明らかにされています

さらに酸化ストレスは
テロメアのDNAに障害を及ぼします

酸化ストレスが生体に及ぼす悪影響は
テロメアの短縮が 
大きなひとつの原因と考えられるわけです
酸化ストレスなど テロメア長を短縮させる原因をまとめた図

<テロメラーゼ>

生体内には 
テロメラーゼという酵素があります

短くなったテロメアを
再生して伸ばす働きを有する酵素で

通常の体細胞では 
その発現が封印されています

テロメラーゼがテロメアを修復する図

しかし 
がん細胞では過剰に発現しているのです

がん細胞は 
無限に増殖することが可能なので
がんはどんどん大きくなっていきますが

その理由は
テロメアを伸ばすテロメラーゼの活性が
高まっているために
細胞が老化しないからと考えられています

ですから 
テロメラーゼ活性の抑制物質は
がん治療薬の有望な候補になります

正常な細胞の老化と 
がん細胞の異常な増殖が
テロメアという共通の物質を介して行われている現象は
なかなか興味深いです


<テロメアの短縮を防げば長生きできる?>

老化防止という観点からは

テロメアが短くならなければ
長生きできる

というアイデアが生まれてきます

実際に 
長寿のヒトは
テロメアが長いことが確認されています

また
長寿遺伝子を活性化する作用がある
抗酸化物質の摂取 
運動 
カロリー制限
などにより
テロメアの短縮速度が低下することが
報告されています

もちろん 細胞の老化は
テロメアだけで
規定されるわけではありませんが

運動やカロリー制限といった 
健康に良いと言われていることの作用機序に
テロメアの短縮を防ぐことが
関与している可能性は大きいようです
高橋医院