中央区・内科・高橋医院の
食事と健康に関する情報


肥満 心血管障害 脳血管障害などに
ならないためには
日々の食事について 
どのような注意をすべきか?

炭水化物 脂質 タンパク質の 
三大栄養素のバランスをどうすべきか?

これまでは 
脂質がワルモノ扱いされてきたのに

最近は風向きが変わり 
糖質がワルモノ扱いされているけれど

本当にそれが正しいのか?


新春早々 
そうした内容について解説してきましたが

「はやり悪いのは 脂質でなく 糖質だ」

という内容の研究成果が
昨年の夏に超一流医学誌 Lancet に発表され 
反響を呼びました

PURE(The Prospective Urban Rural Epidemiology)study

と呼ばれるもので

論文が掲載された超一流医学誌 Lancetの表紙

5大陸・18カ国・計13万5千人あまりを対象に
食事内容と全死亡および心血管疾患の関連を検証した
大規模疫学前向きコホート研究です

これまで報告されている研究データのほとんどが
栄養過剰の傾向にある欧米のものであったのに比べ

この研究では 
低所得 中所得 高所得の18カ国を網羅しており
その点でも信頼性の高い研究と評価されています


調査を行った国は

*高収入国3カ国
カナダ スウェーデン アラブ首長国連邦

*中収入国11カ国
アルゼンチン ブラジル チリ 中国 コロンビア イラン
マレーシア パレスチナ ポーランド 南アフリカ トルコ

*低収入国4カ国
バングラデシュ インド パキスタン ジンバブエ で

各国で35〜70歳男女13万5,335人(平均年齢50.3歳)
2003年1月〜13年3月に研究に登録され
2013年3月まで平均7.4年間にわたり 
健康状態が追跡調査されました

登録された人々の食事内容
国ごとの食物摂取頻度調査票(FFQ)を用い
24時間の思い出し法で調査し
それを国ごとの食品成分表を用いて栄養分析を行いました

研究対象の概要を示す表


得られた結果ですが

@炭水化物摂取量の多さは 
 全死亡リスク上昇と関連するが
 総脂質摂取量の多さは 
 逆に全死亡リスク低下と関連する

@全ての種類の脂質
 (飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸)
 において
 摂取量の多さと全死亡リスク低下の関連が見られる

脂質は炭水化物より死亡リスク低下に良い効果がある結果を示すグラフ
上のグラフでは
カーブが上向きだと死亡リスクが上がり 
下向きだと下がりますが

左から4つのグラフは脂質で 
全て 量が増えると下向きになり

右端のグラフは炭水化物で 
量が増えると上向きになります

@炭水化物摂取量の多さは 
 心血管疾患の発症リスク上昇と関連するが 
 総脂質摂取量の多さは 逆に低下と関連し
 全ての種類の脂質で同様の傾向が認められる

脂質は炭水化物より心血管疾患の発症リスク低下に良い効果がある結果を示すグラフ

@非心血管疾患死に対しては 総死亡と同様で 
 炭水化物は正の 
 脂質とタンパク質は負の
 相関が認められる


これらの結果を端的にまとめると

*炭水化物をとるほど 死亡リスクが高くなる

*脂質の摂取量が多いほど 死亡リスクは低下する

ということで

著者らは
エネルギー比率60%以上の炭水化物摂取では 
総死亡率が上昇することから

50〜55%程度の中等度のエネルギー比率の
炭水化物摂取がよいとしています

炭水化物摂取は中等度が良いことが示されたグラフ
上の図では 
バーの位置が右に行くほど死亡率が上がり
炭水化物の量は 
Q1からQ5へと増えていきますが

Q1(炭水化物50%ほど)に比べ
Q4(60%以上)では死亡率が高い

一方 脂質摂取比率が
総死亡や非心血管疾患死 脳卒中の発症
と負に相関していることから

死亡率低減には 
35%程度の高脂肪食が有益だろうとしています

35%程度の高脂肪食が有益であることが示されたグラフ

この結果のインパクトは 大きいです

従来言われていた
脂質がワルモノだから 
脂質の代わりに炭水化物を摂りましょう
という説が 
完全に否定されたわけですから

日本の糖質制限をリードしている
江部先生や山田先生は
この論文の発表を受けて

日本の医療現場などで指導される
カロリー制限食では
糖質量が6割くらいになってしまう

和食は
どうしても糖質量が増えてしまいがちで
従来の日本人の食事では 
糖質6割くらいの割合になってしまう

と 日本の食事療法における問題点を指摘し

こうした研究成果が報告された以上は
わが国の食事摂取基準も改善されるべきであると 
コメントされています


確かに 前回ご説明したように
日本で推奨されている三大栄養素比率では
炭水化物が50~60%になっています
(厳密に言うと 炭水化物60%で 糖質60%ではありませんが)

日本で推奨されている三大栄養素比率を示すグラフ


ですから 今回のデータからすると
日本でも 
これ以上 炭水化物の割合を増やすのは
リスキーかもしれません


さて これまで見てきたように 最近は

カロリー制限 脂質制限 糖質制限

それぞれについて
さまざまな評価がなされていて

いったい何を指標にして 
どうダイエットすればいいのか

読み手の皆さんは
戸惑っておられるかもしれません

カロリー制限と糖質制限の論争を示す図
脂質制限と糖質制限の論争を示す図

書き手が思うに

まず カロリー制限は 必要だと思います

いくら糖質を控えても
脂質を必要以上にたくさん摂れば
体内でエネルギー過多になり必ず太る

カロリー制限の必要性を示すイラスト

だから 細かいカロリー計算はしなくてもいいから
いつも腹8分目を心掛けるようにする


次に 栄養素のバランスを考える

糖質過多による
食後高血糖 グルコーススパイクを防ぎ 
中性脂肪の蓄積を防ぐため

糖質の量を制限したり
野菜やお肉を糖質を食べる前や一緒に食べて 
糖の吸収を遅らせる

そうした注意は重要だと思います

脂質に関しても
良い脂 悪い脂の違いを意識して
摂るようにする

栄養素のバランスの重要性を説くポスター

最後に 
書き手自身への自戒の意味も込めて 書きますが

カロリー とか 糖質 とか 脂質 とか
どれかひとつが悪いとされると 
そればかり排除しがちになります

逆に それ以外のものには 
甘くなってしまう

視野が狭くなってしまいがちです

狭い分野だけに集中している人の姿

なにごとも大切なのは バランスなので
カロリーにも 糖質にも 脂質の内容にも
気を配ることが大切でしょう


そして いちばん大切なのは 継続できること!

継続の重要性を説くイラスト

無理なダイエットは 続きません!

読み手の皆さんも 膨大な情報に迷わされず
ご自分の生活パターンに合った 
効果的なダイエット方法を
試行錯誤しながら見つけてください!


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