中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報


太る原因は糖質の過剰摂取なので
ワルモノは糖質で 
脂質ではない

前回ご紹介したように
最近のダイエット本では 
そうした文言をよく目にしますが

でも

ちょっと前までは 
脂肪の摂りすぎに注意! 
と言われていましたよね?

そう 反論される読み手の方は
少なくないと思います

そこで 
タイムリーに新たなネタ本として(笑)登場するのが
ロカボダイエットの提唱者の 
山田悟先生が書かれた

カロリー制限の大罪 

という本です

カロリー制限の大罪 という本の表紙

この本で山田先生は
これまでの通説の 
カロリー制限 脂質制限の意義 について再考されます

まず 脂質制限に関してですが

確かに脂質はワルモノ扱いされていました

脂質の多い食事を注意する警告


アメリカでは 
急増した肥満の原因が脂質と考えられ
1977年に 
政府が脂質の摂取を控えるように勧告しましたが

残念なことにその成果は見られず

むしろ 
脂質の代わりに糖質の摂取が増え 
肥満者が急増してしまいました

脂質制限しても肥満者が増えたことを示すグラフ


一方 日本では
ここ数十年 
食生活の変化により脂質摂取が増加したなかで
さまざまな生活習慣病の患者さんが増加したことから

アメリカと同様 
脂質が肥満の原因と見做されて
脂質制限食が一般的な健康食として
扱われてきました

しかし

脂質摂取制限をしても
糖尿病の患者は急増していることが
明らかになり

やはり

脂質摂取制限による糖質摂取増加が
糖尿病の増加に関与しているのではないかと 
推測され始めました

肥満の原因は脂質でなく糖質だったことを示す図

さらに 
さまざまなダイエット方法を比較する研究において

脂質制限が 
体重減少 心血管病変の発症率の低下に寄与しない

ことが明らかにされました

イスラエルで行われた 
DIRECT試験 という
脂質制限食 糖質制限食 地中海食の効果を
比較検討した研究では

DIRECT試験の概要


脂質制限食は
糖質制限 地中海食に比し 
最も体重が減らなかったのです

脂質制限しても体重が減らないことを明らかにしたグラフ

こうしたことから
2012年のアメリカ糖尿病協会のレビューにおいても
2011年のアメリカ心臓協会の科学声明においても

脂質制限食の意義は認められない 

と評されるに至っています

日々の食事で脂質を制限しても
血中コレステロールは下がらないし
血糖管理 心血管疾患リスク 肥満 
を改善させない

体重減少効果に関しても
脂質制限より糖質制限の方が 
効果があり

脂質制限では 
むしろ基礎的な代謝が低下してしまうリスクがある

そこで 
2015年に発表されたアメリカ食事摂取基準では

*コレステロール摂取量は
 血中コレステロール濃度や心臓病発症率と
 関係しない

*したがって 
 これまで記されてきた脂質摂取の上限を
 撤廃する

*カロリー比率35%以上であっても 
 脂質の摂取は健康上の利益をもたらす

という

これまでの 
脂質がワルモノという“定説”を
覆す宣言がなされました

従来言われてきたような
卵は1日に1個までにしましょう 
といったしばりは
なくなったのです

脂質制限の撤廃を報道する記事

以前にも説明しましたが

最近は  脂質に関しては 
量より質  が問われています

*動脈硬化を起こしやすいとされる
 飽和脂肪酸はなるべく避ける

トランス脂肪酸はダメ

*体に良いとされるω3不飽和脂肪酸を
 たくさん摂りましょう

などなど

「コレステロールは悪玉」説の誤解を訴えるポスター

そして 糖質と 脂質・タンパク質の違い も
強調されています

*三大栄養素のなかでは 
 糖質が主に食後血糖値を上げる

三大栄養素のなかでは 糖質が主に食後血糖値を上げることを明らかにしたグラフ


*脂質・タンパク質は 
 食後血糖を上げにくくする

脂質・タンパク質は 食後血糖を上げにくくすることを明らかにしたグラフ

*脂質・タンパク質は 
 代謝を上げるので 
 多少カロリーが増えても問題ない
 = 血糖管理のためには 脂質制限はしない方が良い

というコンセプトです

脂質に関する考え方が 
大きく変化しているのです


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