栄養素代謝の日内変動
中央区・内科・高橋医院の 健康のための栄養学に関する情報 ヒトの体では 睡眠をはじめとして さまざまな機能で日内変動が見られますが 食べた食物の消化吸収 吸収された栄養素の代謝も その活動に日内変動が見られます 具体的に見ていきましょう <小腸における栄養素の吸収> *糖の吸収に携わる Sglt1 Glut2 Glut5などの糖輸送体遺伝子 *タンパク質の取込みに関わる Pept1遺伝子 *脂肪の吸収に関わる DGAT/FABP apoB/MTPなどの輸送体遺伝子 などで 定時の食事開始時間の前から 発現量の増加がみられ 摂食後の各栄養素の吸収が 調子よく進むようになっています <吸収された糖や脂質の代謝> エネルギー代謝 糖新生・分解 脂肪合成・分解 などを大元で牛耳る マスター転写因子の *PPARαβγ *SREBP-1c *REV-ERBαβ などの発現量に 日内変動が見られます これらのマスター転写因子は 各種栄養素の代謝に関与する 多くの代謝関連因子の発現に影響を及ぼすため その日内変動の変化は 代謝全体に大きな影響を及ぼすことになります <脂質代謝> 重要な脂質代謝関連遺伝子の発現が 日内変動を呈します *中性脂肪合成系の アセチルCoA合成酵素(ACS) *中性脂肪分解系の 脂肪組織TGリパーゼ(ATGL) ホルモン感受性リパーゼ(HSL) *コレステロール合成系の 律速酵素であるHMGCoA還元酵素 *コレステロール分解系の 律速酵素コレステロール7α水酸化酵素(CYP7A1) これらの酵素の多くは 夜間に活動性が高く 昼間には低い ですから ヒトの体は夜に脂肪を貯めこみやすい <アデイポカイン> 脂肪細胞から分泌されるレプチンなどの アデイポカインも その分泌パターンに日内変動を認めます レプチンは 暗い時期に上昇し 明るくなると低下します <糖の代謝> 血糖上昇に反応して 適切にインスリンが分泌されることが重要ですが 体内時計の乱れにより 適切なインスリン反応が生じなくなること が明らかにされています <ミトコンドリアでのエネルギー産生> 脂質や糖質は代謝されて 最終的にミトコンドリアでエネルギーに変換されますが そこで活躍する重要な分子の発現にも 日内変動が見られ ATP産生量にも日内変動があります ATP産生に関わる AMPK NAD/NADHバランス などの発現量が日内変動を示すからです 一方 ミトコンドリアの活性化に関わる 重要な分子のPCG-1αも その活性化レベルに日内変動を認めます このように @食物を食べて 腸で消化吸収して @肝臓などで吸収した栄養素を代謝して @細胞内のミトコンドリアで エネルギーに変換する といった 食物の栄養素を代謝して エネルギーに変換する全ての過程において そのキーとなる因子の発現に 日内変動が見られるのです だから いつ どんな内容の食事を摂ったかによって 栄養素の代謝のされ方 エネルギーへの変換のされ方が異なってくる だったら いつ どんな栄養素を摂取すれば良いのか? そして どうしてそんな日内変動が起こるのか? 今日の解説で生じてきたそんな疑問に 次回以降お答えしていきます
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