糖尿病の足病変
糖尿病では 大血管障害により 足にさまざまな病変が生じやすい ので 注意が必要です というのも 下肢への血行が障害されると 歩行障害や潰瘍 壊疽を起こし 重症化すると 下肢の切断につながってしまうからです @特徴 *潰瘍の有病率は 0.7% 欧米では1.5~10% *再発が多い *7~20%が下肢切断に至ってしまう (非糖尿病患者さんの8倍 アメリカでは下肢切断の60%以上が糖尿病) *下肢切断者の生存率は低い このように 頻度はそれほど高くありませんが ひとたびなってしまうと 下肢の切断という 命に関わるリスクを背負うことになります 下肢切断後の5年以内の死亡率は なんと約70%にも及びます @他の合併症のリスクファクターになる ご多分に漏れず 下肢の合併症も 他の合併症のリスクファクターになります 総死亡率は 1.89倍 心筋梗塞のリスクは 2.22倍 脳梗塞のリスクは 1.14倍 にそれぞれ増加します また うつ病 感染症 慢性腎障害も 増えることが報告されています つまり 下肢の病変が存在するということは 細小血管症 動脈硬化症が 進行した結果と考えられる さまざまな全身の合併症を有していることが 示唆されるので 充分な検査を行うことが推奨されます @病因 以下の3つの要因が関与しています *血管障害 血流が悪いので白血球などが集まりにくく 小さな傷でも化膿しやすくなり 壊疽が起こり 末梢動脈疾患(PAD)合併による虚血性潰瘍では 神経性潰瘍より切断率 予後が悪いです *神経障害 知覚神経が麻痺して痛みを感じないので 病変に気付かず 傷や感染を放置して悪化し 壊疽が起こってしまいます 血管障害よりも 頻度としては多いと考えられています *感染症 足の化膿によって生じる局所の感染から 全身に菌が回ってしまい とても危険な病態になってしまいます @誘因 意外なことに 靴擦れが最も多く69%で 熱症が19% ついで 外傷 感染症 乾燥・亀裂などが 誘因となります 前述したように 知覚が鈍麻していますから 靴擦れや火傷の痛みに気がつかず 放置されてしまうのです @できやすい場所 *甲 くるぶし の 靴擦れ *足裏 踵 の まめ *指裏 の ウオノメ *爪 の 真菌症 *指の間 の 水虫 こうした部位に出来やすいので注意が必要です また 深爪によって菌が入ることもありますから 要注意です @治療 *血管障害には 内科的には 末梢循環改善薬が用いられ 外科的には バルーン療法 バイパス術などが行われます また 血管の再生を促す再生治療 血管増殖を促す遺伝子治療などの先進医療も 試みられています *神経障害には 抗菌剤の投与が対症療法的に行われ 病変部の安静 免荷 保護も行われています @対策 足の定期的な観察による 早期発見 フットケアが大切です 特に 皮膚の状態 変形のチェックが重要で 指の間の観察も忘れてはなりません 発赤 乾燥 肥厚 角化 ウオノメ 白癬症 爪の病変 水疱 潰瘍 などの有無を確認します また 歩行時に足を引きずるようなことがあると 太い血管に動脈硬化性の変化が生じている可能性がありますから そうしたことがある場合 すぐに医療機関を受診してください
高橋医院