糖尿病の合併症の解説を続けてきました

今日は合併症ではありませんが
糖尿病の病態進展に深く関与する
高血圧との関連について説明します


<糖尿病と高血圧は互いに悪影響を及ぼしあう>

@糖尿病の患者さんには 高血圧が多い

糖尿病では高血圧が多いことを示すグラフ

@高血圧の患者さんには 糖尿病が多い

逆もまた真なりで 
高血圧の患者さんでは糖尿病が多い

高血圧では糖尿病が多いことを示すグラフ

糖尿病と高血圧は 
つるんで悪さをすることが多いのです


糖尿病と高血圧は悪影響を及ぼすことを示す図

<両者の合併は糖尿病の合併症のリスクを増す>

@ともに大血管症のリスク要因になります

*両者が合併すると 
 発症頻度が増加し予後が悪化します

糖尿病 高血圧が両方あると大血管症のリスクが増えることを示す図

*糖尿病では
 10mmHgの血圧上昇により 
 大血管症死亡率が18%増え

 10mmHgの低下により
 糖尿病関連死が15% 
 心筋梗塞発生リスクが11%
 低下します


糖尿病の血圧のコントロールで糖尿病関連死 心筋梗塞発生リスクが減ることを示すグラフ

@両者の合併は 細小血管症のリスク要因にもなります

*高血圧により 細小血管症の増悪しますが
 特に網膜症の初期の変化に関与していることが重要です

*高血圧の是正により 
 腎症の進展が予防され
 降圧剤のアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬
 アンギオテンシン変換酵素阻害薬
 による治療が有用です


<糖尿病患者さんの高血圧の治療>

@糖尿病そのものが 
 心血管疾患発症のハイリスクファクターなので
 高血圧の より早期からの治療開始 が
 必要になります

@治療を開始する値は 
 糖尿病がない場合に比べて厳しく

*診察室で測定する血圧が
 130/80 mmHg以上が治療対象となり

*130~139 mmHgでは 
 生活習慣改善を3ヶ月試みて
 改善しないと降圧剤の投与を開始します

*140/90 mmHg以上では 
 直ちに降圧剤の投与を開始します

*家庭で測定する血圧なら 
 125/75 mmHg以上で治療を開始します

治療についてまとめた図

@降圧剤

*第一選択としては
 アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬 
 アンギオテンシン変換酵素阻害薬
 が用いられます

こられの薬は 血圧を下げるだけでなく
腎臓などの臓器の保護作用や 
インスリン抵抗性の改善作用などを
併せ持っているからです

*第二選択として
カルシウム拮抗薬
または 
少量利尿薬の併用 が用いられます

蛋白尿減少には利尿薬
eGFR保持にはカルシウム拮抗薬
の併用が有効とされています

*上記の2種類の併用でうまくいかない場合は 3種類を併用します

こうした治療により
血圧を130/80 mmHg未満に維持することを
目標にします

糖尿病患者さんは 心血管疾患を発症しないように
より厳しい血圧管理が求められるわけです


高橋医院