今日は 糖尿病における 
脂質異常症 肥満との関連について説明します

<脂質異常症>

@脂質異常症は 糖尿病の大血管症のリスク要因になります

高LDL-C血症は 冠動脈疾患発症の強いリスク要因で
 リスクが22%増加します

低HDL-C血症だと
 白人では 心筋梗塞のリスクが19%増加します

 日本人では
 心筋梗塞は関連しませんが 
 脳血管疾患のリスクは2倍に増加します

高中性脂肪血症に関しては
 冠動脈疾患増加に関連するという研究と 
 しないという研究があります

脂質異常症は大血管症のリスク要因であることを示す図

細小血管症のリスク要因にもなります

高中性脂肪血症だと
 腎症進展は2.01倍 
 網膜症進展は2.3倍に増加し
 血圧 糖代謝とは独立した
 進展リスク要因とされています

低HDL-C血症だと 
 腎症の進展リスクが増加し

*高HDL-C血症だと 
 細小血管症のリスクを低下させ 
 腎症の進展を低減します

TG/HDL-C比が高値だと 
 全ての細小血管症の進展リスクが高くなります


このように

HDL-C低値は 
 大血管症 細小血管症 いずれものリスク要因

LDL-C高値は 
 大血管症のリスク要因

中性脂肪高値は 
 細小血管症のリスク要因

となります

脂質異常症は細小血管症のリスク要因であることを示す図

@薬物治療

高LDL-C血症の治療に用いられる
 スタチン系薬は 
 心血管症の発症を抑制し 生命予後を改善します
 
 心血管症発症率は21%減少 
 死亡率も9%減少します

高中性脂肪血症の治療に用いられる
 フィブラート系薬
 非致死性心血管症の発症を24%抑制します


治療目標値は

*高LDL-C血症は

 糖尿病では 120mg/dL未満

 冠動脈疾患の既往がある方
 細小血管症合併例 血糖コントロール不良例 喫煙者 メタボの方は
 100mg/dL未満にコントロールします

*HDL-Cは
 40mg/dL以上が目標

*中性脂肪は
 150mg/dL未満が目標です

糖尿病がある際の脂質異常症の治療管理目標を示した表

@食事療法

多価不飽和脂肪酸 水溶性食物繊維は 
 LDL-Cを低下させるので
 摂取が推奨されます

@運動療法

有酸素運動 無酸素運動 いずれも
 血圧を下げ LDL-Cを低下させ 
 HDL-Cを上昇させるので 推奨されます

*両者の間で有意差はなく いずれかだけでも有用ですが
 組合せて行うとより効果的です


<肥満>

糖尿病と肥満は 切っても切り離せないほどの腐れ縁です

肥満と糖尿病の病態形成の深い関係を示す図
肥満と糖尿病の相互の合併率の高さを示すグラフ

@肥満をともなう糖尿病では 減量の意義があります

日本人では 軽度の肥満でも糖代謝異常のリスクが高まります

5%の減量で 糖尿病への移行を58%減少できます

8%の減量で HbA1cは7.3%から6.3%に減少できます

減量による血糖改善効果を示すグラフ

@薬物療法

*インスリン SU薬は 
 肥満を助長するリスクがありますから
 肥満の糖尿病の方には 
 まずメトホルミンが治療薬として用いられます

 メトホルミンは 大血管症の予防にも有効です

GLP-1受容体作動薬は 肥満症治療薬となり得ます

GLP-1の減量効果を示す図

SGLT2阻害薬も 減量効果が期待されます

SGLT2阻害薬の減量効果を示す図

いずれも メトホルミンとの併用も有効です
高橋医院