中央区・内科・高橋医院の
食事と健康に関する情報


ドパミンは 
中枢神経系に存在する神経伝達物質で

交感神経系のホルモンの
アドレナリン ノルアドレナリンの前駆体でもあり

運動調節 ホルモン調節 
快の感情 意欲 学習
に関わる脳内物質です

ドパミンの構造図

<ドパミンは 報酬系食欲や依存を起こさせる>

前回紹介した
中脳腹側被蓋野と大脳基底核の側坐核が司る
食欲の報酬系調節系
このドパミンが仕切っています

報酬系の説明図

そして 
厄介な依存性が生じる機序にも 
ドパミンは深く関わっています

ドパミンの依存性形成への関与を示す図

報酬系調節系の基本は
中脳腹側被蓋野で ドパミンが合成されて
それが側坐核へ投射されることです

中脳腹側被蓋野で ドパミンが合成されて側坐核へ投射されることを示す図

側坐核がドパミンを受取ることが 
快楽の中心となりますが

側坐核は受け取ったドパミンを放出して
前頭連合野 扁桃体 帯状回 視床下部 海馬
などの脳の部位に
情報を伝えます

ドパミンの放出を示す図

<ドパミンシグナルの制御のメカニズム>

報酬系調節系のドパミンシグナルには 
さまざまな物質が影響を与えます

大脳皮質の前頭連合野で
喜ばしい体験・経験を感じると
中脳腹側被蓋野に興奮性のグルタミン酸を送り 
ドパミンを作らせます

アルコール ニコチン コカイン アンフェタミンなどは
ドパミンの産生や作用を増強させますが

ドパミン放出を制御する物質をまとめた図

食欲抑制作用があるレプチンは 
ドパミンニューロンを抑制します

レプチンの受容体は
中脳腹側被蓋野にも多く発現していて

レプチン刺激により 
ドパミン放出量が減って 
側坐核のドパミン濃度が減り
快楽は抑制されます

食欲制御ニューロンの放出物によるドパミン制御の詳細を示す図

摂食中枢の食欲促進系の
オレキシンニューロンは
中脳腹側被蓋野の
ドパミンニューロンを活性化しますが

摂食中枢のもう1種類の食欲促進系ニューロンの
MCH
逆に側坐核のドパミン系を抑制し
オレキシンによるドパミンニューロン活性化も
抑制します

恒常性調節系による
快楽系の制御機構は複雑です

<依存性の発生とドパミンの枯渇>

厄介な依存性の発生には 
ドパミンの枯渇が関与しています

過剰な快感・快楽刺激が持続すると
ドパミン受容体の減少 
ドパミンシグナル強度の低下
が起こり

ドパミンによる側坐核への報酬刺激が
減弱してしまいます

依存症に人では脳内のドパミンが減少していることを示す図

このため
以前と同じ報酬を得るためには 
より多くのドパミン分泌が必要になり
よりたくさん食べないといけなくなります

こうして 依存性が形成されてしまいます

ちなみに 
食欲の依存性は 薬物のそれを凌駕するもので
ラットの実験では 
薬物依存は3日で消失しますが
食欲依存は2週間たっても残存します

恐ろしいものです

一方 肥満したヒトでは
ドパミンの放出や 
ドパミン受容体発現が 
低下しています

肥満したヒトでは脳内のドパミンの放出 ドパミン受容体発現が低下していることを示す図

中脳腹側被蓋野から側坐核に放出される
ドパミン量が少ないので
摂食終了後も 
なかなか快感・満足感が得られず
その結果 
よりたくさん食べるようになってしまいます

肥満のヒトは 
まさに食欲依存性になっているわけですね

<食事内容が報酬系・依存に影響を及ぼす>

食事内容も 
報酬系調節系に影響を及ぼします

ジャンクフードや高脂肪食を食べていると
報酬系におけるドパミン合成・分泌が
低下してしまい

食べても満足が得られない 
まさに依存性の状態になり

ますます 
ジャンクフードや高脂肪食を
食べ続けることになります

ジャンクフードや高脂肪食による報酬系におけるドパミン合成・分泌低下を示す図

以前 
砂糖に対する習慣性・依存性を紹介しましたが
砂糖の常習的な過剰摂取でも
同じような報酬系の変化が
起きているのかもしれません

糖質依存のメカニズムを示す図

逆に 
健康的な食事は 報酬系を鍛える
とされています

減量プログラムで半年間 
健康で低カロリーな食品を食べ続けた人は
報酬系領域でのドパミン合成・分泌が増えて
ヘルシーな食品を食べたときの報酬が増加し 
喜びを示すようになりました

それと同時に 
不健康な高カロリー食品への報酬は
低下したそうです

健康的な食事は報酬系領域でのドパミン合成・分泌を増やすことを示す図

ジャンクフードや高脂肪食の
何がどのように 
報酬系でのドパミン合成・分泌を低下させ

健康で低カロリーな食品の
何がどのように 
報酬系でのドパミン合成・分泌を低下させるのか

とても興味深いところです
高橋医院