ジョン・ノイマイアーさんの 
バレエ・椿姫

舞台の一シーン

もうひとつ 驚いたのは
劇中劇というか 
劇中にバレエを組込んでくるのです

それも マノン・レスコー

バレエのマノン・レスコーのシーン

男を破滅させる妖女・ファム・ファタールの
ハシリとされる美少女マノンと 
騎士デ・グリューの 
激しくも哀しい愛の物語

マノン・レスコーのCDジャケット

オペラの椿姫では 
華やかな舞踏会の場面で幕が開きますが

ノイマイアーさんのバレエでは 
プロローグに続いて

ヒロインのマグリットと 
彼女を愛する青年のアルマンが
バレエのマノンを鑑賞する第1幕が展開されます

その後 全てのストーリーを通して
最後に寂しく死んでいくマノンの姿に 
椿姫のヒロイン・マルグリットは
自らの姿を重ねるように 
愛憎をともないながら見入り

最後のシーンでは
マルグリット・マノン・デ・グリューが
一緒に踊るという

現実と幻想が入りまじったシュールな世界が 
繰り広げられるのですよ

マルグリット・マノン・デ・グリューが一緒に踊るシュールな世界が 繰り広げられるシーン

こんな 深みがある凝った演出! 
びっくりしました!


ノイマイアーさんは この演出について

椿姫の原作 デュマの小説が
さまざまな視点から真実を描写する形式をとった 
近代的なもので

語りの観点の多層性という点から 
とても興味深いと考えていて

だからこそ 
映画で表現されるような
記憶の光景を変えて 
フラッシュバックのような手法を用いることが
可能だと思い

そこで 
マノンを物語に組み入れて
マルグリットの思いに 
常にマノンが投影されるような仕組みを考えついた

と 語っておられます

語るノイマイアーさん

うひゃー!! 

ですよね!(笑)

よくぞ そんなアイデアを
思い浮かべることができるものです

そして

こうした演出を施すことにより
セリフも歌もない ダンスのみによって 
物語を語ることが出来る

と 説明します

なるほどです~!

しかも 挿入するのが
マノン・レスコーですよ

大人の世界ですね~(笑)


前回 真夏の夜の夢を見たときに 
ノイマイアーさんは

原作の戯曲の世界を 
忠実にバレエに再現しようとは思っていない

バレエを観た人の
想像力に訴えかけるような世界にしたい

現実の世界と妖精の世界 
意識と無意識の世界は
密接につながっていることを 
観る人にアピールしたい

と語っておられましたが

今回の演出でも 
そうしたコンセプトが
充分に生かされていると感じました

こうしたオリジナリテイーを
随所に散りばめることにより
オペラとは完全に差異化された 

ノイマイアーさんの椿姫の世界は
ホント 見事に観るものを惹きこみました

マルグリットとアルマンがふたりで踊る
ときに情熱的で 
ときに切なく哀しく 
ときに痛々しい数々のシーンは
息を呑むような迫力や美しさがあったし

マルグリットとアルマンがふたりで踊るシーン1
マルグリットとアルマンがふたりで踊るシーン2

舞踏会の場面で踊られる
群舞のコール・ド・バレエは
オレンジ 青 などの 
華やかな衣装の色合いも美しく
群舞も見事で 
充分に楽しめました

群舞のコール・ド・バレエ1
群舞のコール・ド・バレエ2

カーテンコールは
お約束の 観客全員の 
スタンディング・オベーション

最後にノイマイアーさんも 
舞台に登場して応えられていました

うーん これは
ノイマイアー教に 
魅入られてしまうかも?

危ない!(笑)


そうそう 
プログラムノートの最後で
ノイマイアーさんは 
こんなことも語っています

アルマンが 
マルグリットの心をわざと傷つけるために
若い娼婦との親密な関係を見せつける場面こそが
実は最もインパクトのあるシーンであると

マルグリットは傷つき 
彼女を傷つけたことを知ったアルマンは
そのあと 
狂気のような愛を交わす

ヒトという厄介な生き物の 
心の奥に隠れた襞

マルグリットとアルマンがふたりで踊るシーン3

いや~ 大人の世界は 
奥が深いですね!(笑)
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