ルドンは後半生になり 
がらりと作風を変化させます

40代後半から 
明るく 色彩豊かな画風になったのです

それまで描いていた 
暗くどんよりとした世界を抜け出して

鮮やかな色彩を 
これでもかとばかりに用いるようになります

この大きなギャップには 驚かされます

明るく色彩豊かな画風の作品

ルドンは自ら 
色彩と結婚した と語っていたそうです


どうしてルドンは 
突然 色彩を多用するようになったのでしょう?

解説者の方々は その理由について

内面から外部へ
メッセージを伝えたいと思うように
なったのではないか?

色彩の中に描かれる女性1

黒の時代にも 
描いていたのは 光を感じる黒だった

常に光は感じていたが
黒の時代は 
色彩はいつでも使えると考えていたのではないか

色彩の中に描かれる女性2

などと 推測しておられます


満を持して 色彩の世界に登場してきた 
ということなのでしょうか?

でも 書き手は
ルドンの色彩は 印象派のそれとは 
大きく違うように感じます

色に 思いが込められた感じ 
深みがあるようで

単純に一筋縄では味わいきれない色彩 
のように思われます

抽象的な色彩図

例えば 展覧会の解説でも指摘されていましたが

彼は 色彩あふれる作品のなかで
ワンポイントの枝や花などを 
赤で描きこんでいることが多く
色になんらかの意味を持たせようとしたのではないか 
とも思うのです

ワンポイントの枝や花などを 赤で描きこんだ作品

ご贔屓筋が故の 
深読みのしすぎでしょうか?(苦笑)


で いよいよこの企画展の目玉とも言える

グラン・ブーケ の登場です

グラン・ブーケ

この作品は 高さ2.5mの巨大なパステル画
ルドンが60歳のときに描かれました

まずは 見上げるようなその大きさに 
圧倒されます

グラン・ブーケの見上げるような大きさ

そして 暗い展示室のなかで
まるで後ろからライトをあてているかのように 
光輝いて見えるのです

パステル画だから ということもあるでしょうが
その あふれる色彩と輝きに 
再度 圧倒されてしまいます

あふれる色彩と輝き

この作品は 
1900年にブルゴーニュのドムシー男爵が
自らの城館の食堂に掛ける 
装飾画シリーズとして発注し
ルドンが1年半かけて描いた16点の連作の1点です

連作の他の15点は 
既にオルセー美術館が所有していましたが

このグラン・ブーケだけは
ずっと城館にとどまり 
一般公開されていませんでした

それを 2008年に 
三菱一号館美術館が購入しました

購入の際のいきさつを 
企画展のカタログのなかで
美術館の高橋館長が語られていますが

美術館の高橋館長の写真

うす暗い城館の食堂で 初めてこの絵画を見たとき

なんとしてでも 購入しなければならない!! 

と 直観的に思われたそうです

そして今や 
この美術館の”顔”となっています

出会いは そんなものですよね(笑)


さて この企画展では 
他の15点もオルセーから借りてきて
ドムシー城の食堂の模様を再現しようとしています

ドムシー城の食堂の模様

他の15点も 
穏やかな色彩で描かれていて美しいのですが

やはりグラン・ブーケは 
連作の中で異彩を放っています

淡いパステル調 ゴージャスさ 鮮やかな色彩

高橋館長は 
ミステリアスさ 神々しさ を感じる
と表現されていました


必ずしも描写的ではなく
現実に存在しない 不思議なもの 
花らしきものも描かれていますが

ルドンお得意の 見えないものを見る 画風が
このインパクトの大きい作品においても
しっかりと踏襲されているようです

見ていて 飽きません!


ドムシー男爵は 
ルドンの作品をとても気に入り
パトロンのような存在として
ルドンをイタリアへの美術探訪の旅に 
連れていったりもしました

彼は 奥様の肖像画も ルドンに描かせていますが

これが よく見る肖像画の構図とは大違いで

画面の半分以上を 
淡い何も描かれていない色彩の空間が占めていて

まさに ルドンの世界!

画面の半分以上を 淡い何も描かれていない色彩の空間

この肖像画 
奥様は 気に入ったのでしょうか?(笑)


帰りに売店で ルドンの自伝を購入してきました

ルドンの自伝の表紙

パラパラと読み始めていますが 
なかなか面白そうです
読み終わったら ブログで紹介します(笑)

集中して観たので ちょっと疲れて
美術館の3階から前の広場を見下ろすと
皐月の新緑がとてもきれいでした

美術館の前の新緑


高橋医院