やせたければ脂肪をたくさんとりなさいダイエットにまつわる20の落とし穴」
という副題がついたこの本は

やせたければ脂肪をたくさんとりなさいの表紙

ジョン・ブリファという
食事療法・健康管理を専門とする
イギリスの医師が2012年に書き 
日本では2014年に翻訳が出ました

原題は Escape the diet trap

まさにタイトルに示されたように
これまでのダイエット法の誤りを指摘し
本当に効果的な方法について語っています

原題は
特に脂肪について強調していませんが

邦題は
「脂肪をたくさんとりなさい」

内容をよく鑑みた 
キャッチーな邦題です!


<カロリー重視は間違い>

果糖中毒でも指摘されていましたが

食べる量を減らして
 運動量を増やせば良い」

という
カロリー重視の
従来の減量法は間違いだと
最初に否定します

カロリー重視は間違いであることを示す図

効果がないどころか 
脂肪の蓄積を促してしまうので
肥満を招き 不健康な生活を導いている

ヒトの体には
脂肪量を一定に保とうとする
ホメオスタシス機構があるので

カロリー制限すると 
代謝率が下がり
エネルギーを節約しようとする

脂肪量を一定に保とうとするホメオスタシス機構について説明する図

その状態が続くので 
ダイエットに飽きて食べ始めたら
必ずリバウンドして
前の体重より太ってしまう

カロリー重視のダイエット法が
失敗するのは
自分の意志が弱いからではなく
体が減量に抵抗するシステムを
有しているからである

体重のセットポイントについて説明する図

果糖中毒でも
同じ内容のことが記されていましたね

また 今後紹介する本でも
ホメオスタシスが
セットポイントと名前を変えて登場します

ヒトの体 脳には
体重や脂肪量を
一定に保とうとする仕組みがある

というコンセプトは
最新のダイエットや肥満に関する解説で
重要なポイントになりますので
忘れないようにしてください


<脂肪でなくインスリンが肥満の元凶>

筆者は 
低脂肪食の効果も否定します

脂肪摂取と肥満の関係性は
ないことは明らかで
太る元凶は 
脂肪でなくインスリンである

これまでも何回か説明しましたが
インスリンは 以下に示す機序により
糖を脂肪に変換して蓄積させます

*血中の中性脂肪を分解する
 リポタンパクリパーゼを活性化するので
 中性脂肪が分解されて
 脂肪酸が脂肪細胞に取り込まれる

*細胞内に糖を取り込ませ
 グリセロールに変換するので
 脂肪が脂肪細胞内に固定される

*細胞内の中性脂肪を分解する
 ホルモン感受性リパーゼを抑制するので
 脂肪細胞からの脂肪酸の放出が鈍る

*アセチルCoAカルボキシラーゼの
 活性化により
 肝内での糖から脂肪の生成を促進する

インスリンは脂肪を蓄積させることを示す図

こうした肥満の元凶となる
インスリンの分泌を促すのは
脂肪でなく炭水化物である


<栄養素のカロリー量だけでなく 
 代謝に及ぼす影響 質が重要>

栄養素の質に関しては
果糖中毒でも言及されていましたが
この本でも しっかりと解説されています

大切なことなので 
こちらでも再度説明します

@体脂肪蓄積に及ぼす影響

まず各栄養素の
体脂肪の調節に及ぼす影響 
こそが重要で

それが三大栄養素により異なります

三大栄養素の説明図炭水化物は  
 インスリン分泌を促すので 
 脂肪を蓄積させる

*脂肪は
 インスリン分泌を促さないので
 脂肪蓄積は起こらない

*タンパク質は
 インスリン分泌を促すが 
 グルカゴンも分泌させるので
 脂肪蓄積効果は相殺される

繰り返しになりますが
脂肪を蓄積させる栄養素は
炭水化物だけなのです

脂肪を蓄積させる栄養素は炭水化物だけであることを説明する図

ですから
*脂肪 タンパク質は適度で
*炭水化物は少ない
食事が理想的で

そうした食事を食べていると
体重だけでなく
血圧 脂質なども改善できることが
明らかにされています 

@代謝上の優位性

筆者はついで 
食物の「代謝上の優位性」が重要
と説きます

代謝上の優位性とは
栄養素が消化 代謝される過程で 
どれだけの量の熱を発生させられるか?
ということです

代謝に多くエネルギーを使えば
痩せられますから有利ですが

タンパク質が代謝される際に
使用されるエネルギー(食事誘発性熱産生)は
全体の約30%で
脂質や糖質(各10%)よりと多く

タンパク質は
代謝上の優位性を有する栄養素と言えます

タンパク質の代謝上の優位性を示す図


@空腹感への影響

また 各栄養素が
空腹感に及ぼす影響 も大切です

炭水化物は
 食後の満足度が低い
 なぜなら 炭水化物を多量に摂取すると
 急激に血糖値が上がり
 インスリンが多量分泌されるので
 低血糖になり空腹感を感じてしまう

タンパク質は
 食後数時間の満足感が高く
 空腹を感じず食べる量を減らせる

脂肪は
 炭水化物より食後満足度が高い
 インスリンを分泌させないし
 脂肪細胞から脂肪の放出を促進し
 エネルギーに使われるので
 空腹感を感じないですむ

 さらに十二指腸から
 コレストキニンを分泌させ
 食物の胃での滞留時間を長引かせるので
 満腹感が持続される

ということで
空腹感を感じさせないという観点からも
脂肪 タンパク質が多く
炭水化物が少ない食事が理想的となります
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