芸術作品が商品としての側面を持ち
それは極めて資本主義的な存在であること



芸術　美の力は
政治や経済の力を超えたパワーを有すること



が説明されてきましたが


では
現在の閉塞した資本主義の状況を
アートは打開していくことが
できるのでしょうか？

2回にわたる世界大戦で　
人々は近代合理主義の限界　行き詰まりを
実感します

その結果　生まれてきた現象は
文学・思想では　実存主義でしたが



絵画では
抽象表現主義　現代アートでした



言語や理論といった理性でなく
感性　肉体の感覚　運動を重視する

知性でなく肉体で
絵画を描き　作品を造るようになりました


一方　近年は　
資本主義の行きづまり　閉塞感が訴えられています



以前　水野和夫さんの著作を紹介しましたが　
そこに書かれていたように
主たる消費の場となる
周縁　フロンテイアが消失してしまい
資本主義の発展が困難になってきました

そのため
自国内に格差を生み出し　そこで資本を収奪するか
国家間の紛争や戦争により　需要を生み出すかしか
利益を得る手立てがなくなっているのが現状です

そこで　
アートの持つ新しい価値観の創造力で
こうした状況をなんとか超えられないか？

激動の時代であるからこそ
既成の価値観にとらわれない
自由な視点が大切で
新たな価値を生み出すパワーが必要だが

アート的な発想力
アートから学ぶ価値転換の力により
閉塞して行き詰った
今の世界のシステムを超えられないか？



どうなのでしょう？

アートで感じられる価値観の転換が
社会全体の価値観の転換につながるのかな
という疑問も感じます

 
いずれにせよ　山本さんは

だからこそ　
芸術教育　美術教育に力を入れる必要があり

作るだけでなく
もっと作品を鑑賞することに
力を入れた教育が欲しい

と　主張されます



ただ　国は
そうしたことには積極的にならない可能性が大きい

なぜなら
自由な発想　行動力を有する芸術家が増えると
国家体制は困ることになりかねないからです

歴史的に見ても　
政治　特に専制的な国家体制は
往々にして芸術を弾圧したり破壊したりします

ナチスによる前衛芸術の弾圧



スターリンの粛清　
毛沢東の文革時代の伝統文化の弾圧



などがよい例ですが

そうした現象が起こるのは
芸術が既存価値を破壊す性質を
内在しているからです



芸術は　
常に既存の価値観を疑い　時に破壊し
新たな視座と価値観を作り出します

芸術家は
常に　感じ　考え　表現しているのです



ですから　権力　体制にとっては
体制の秩序　価値観を
破壊しかねない芸術は厄介な存在で
抑え込んでしまおうということになる

社会の動きは
わかりやすいようで　わかりにくいですね（笑）

こう指摘された山本さんは
日本の現状を憂います

明治以来の日本の教育の目的は
画一的な人間を作り出し
最も優秀な人間を国家体制に取り込み
体制強化を図ること



ただ　それでは
現在の難局を乗り越えられる人材は
育てられない

美術や芸術は
人と同じことをしていてもダメで
自分なりの感性やモノの見方や
自分だけの表現を重視します

他者と同じになることでなく
違いを作り出すことが求められ



なおかつ
その違いを互いに認め合うことに価値をおく



そうした人材こそが
今の時代に求められているのです

 
特に今の日本は
目先の有用性にばかりこだわりすぎている

すぐに目に見える利益に結び付かないから
文系学部を縮小しようという意見すら
声高に叫ばれている

既成の価値観　社会制度の限界が
指摘されている現代では

有用性のしがらみから抜け出して
自由に発想し自由に作る
新次元に行くことも必要で

そのためには
有用性を敢えて求めない
芸術　文化力を武器にする発想が大切である
と訴えられます



 
ちなみに
現代アートには　ある種のバカバカしさが必要で
そのバカバカしさは
男性のエネルギーであり　魅力でもある
（女性は常に現実的で　あいまいさがない）



だから男性は頑張らねばならない
と言われます（笑）


さて　閑話休題で

近代産業化社会に生まれた人が
孤独　不安と付き合うには
捨て去られた神が必要となりますが

最近は
神の代わりにアートが人を集める時代だし
すべての人が分け隔てなく楽しめるのが
現代アートでもある



だから　芸術や現代アートに
現在の閉塞状況を打ち破る役割を期待したい
というわけです



現代アートは　神になれるか？