喘息の解説シリーズの最後に

特殊な病態である難治性喘息と

臨床的に頻度の多い
COPD アレルギー性鼻炎との合併について
説明します

<難治性喘息>

@重症 難治性の定義

一定量以上の吸入ステロイド・ICSの使用
または
過去1年の50%の期間で
経口ステロイド薬を使用しても
症状 呼吸機能が改善せず増悪する場合で

全患者の5~10%ほどが相当するとされています


難治性喘息の臨床的特徴は非常に多様で
いくつかの表現型(フェノタイプ)が存在すると
考えられています

各表現型により
病態の増悪に関わる因子や治療法の選択が
異なってきます

難治性喘息の多様な表現型について解説した図
難治性喘息の治療について説明した図
例えば 上図に示すように
難治例に後述する生物製剤を用いて治療する場合に
アトピー型なら 抗IgE抗体薬
好酸球優位型なら 抗IL-5抗体薬
が選択されます


@重症と診断する前に確認すべきこと

*本当に喘息か鑑別する

 COPD 気管支拡張症 結核 抗酸菌症
 などではないかを確認します

*適切な薬物治療の実施の確認
 
 アドヒアランス不良は若年者に多く
 不適切な吸入手技は高齢者に多いので
 きちんと治療が行われているか確認します

*肥満 睡眠時無呼吸症 胃食道逆流といった
 併存症の管理状態は良好か?

 特に肥満は女性の喘息重症化の危険因子なので
 注意が必要です

*増悪因子の確認と排除

 喫煙はステロイド感受性を低下させますし
 ペット飼育などがないか確認します

難治性喘息の診断 鑑別について説明した図


@2型炎症バイオマーカーが高値の併存症の鑑別

*好酸球性副鼻腔炎
*アスピリン喘息
*アレルギー性気管支肺真菌症
*好酸球性多発血管炎性肉芽腫

などとの鑑別を行います


@治療・経口ステロイド

短期間の間欠的投与が基本になります

プレドニソロン0.5mg/Kgを1週間以内
PSL5mgを1日1回または隔日投与します

効果が見られなかったり
減量困難な場合には
分子標的薬の使用を考慮します


@治療・生物学的製剤 分子標的薬

2型炎症の原因となる
IgE抗体やサイトカインを標的とした薬剤で
通常の治療が効果を示さない重症例に用います

これらの薬は
数週間ごとに1回皮下注射して用いるのが特徴です

生物学的製剤 分子標的薬についてまとめた図表

*抗IgE抗体 ゾレア

既に2009年から10年の歴史があり
蕁麻疹 鼻炎を合併し
IgE値が規定範囲内(30~1500IU/ml)にある方に
使用されます

2~4W毎に皮下注射で投与し
有効率は60%と報告されています

*抗IL-5抗体 ヌーカラ

2016年から使用されている
IL-5が分化・活性化させる好酸球を標的とし

好酸球が多い症例ほど効き
有効率は50%程度と報告されています

*抗IL-5受容体α抗体 ファセンラ

2018年から使用されていて
好酸球が標的で 好酸球が多いほど効きます

最初は4W毎 8週後は8W毎に投与し
有効率は50%程度と報告されています

*抗IL-4受容体α抗体 デュビクセント

2019年から使用されていて
血中好酸球数>300/μlの中等度 重症例に
週1回投与します

増悪イベントが87%減少するとされ
アトピー性皮膚炎でも使用されています

デュビクセントの作用機序についてまとめた図

*抗TSLP抗体

まだ実用化されていませんが
非好酸球性の重症例への効果が期待されています


<ACO・気管支喘息とCOPDの合併 >

気管支喘息とCOPDの合併は
しばしば見られますが
それぞれの疾患に単独に罹患している場合に比し
合併すると重篤化しやすいので
診断や治療に注意が必要です

気管支喘息とCOPDの合併についてまとめた図

気管支喘息とCOPDの合併は重症化しやすいことを説明する図

@診断基準

40歳以上で
慢性気流閉塞 気管支拡張薬吸入後1秒率が70%未満の
条件を満たす症例です

COPD
喫煙歴 胸部CTでの気腫性変化
などが見られ

喘息
変動性(日内 日々 季節)
発作性の咳 痰 呼吸困難や
気道可逆性の変化が見られます

気管支喘息とCOPDの合併の診断基準についてまとめた図

@喘息へのCOPDの合併

日本では19~49%ほどとの報告あり
固定性の閉塞性障害を認めます

気腫化による肺拡散能障害による
低酸素血症をきたしやすく

普通の喘息に比べ
増悪頻度が高く コントロール状態が不良で
症状が強いとされます

また 心血管系の併存症のため
予後が不良です

@COPDへの喘息の合併

日本では4.2~49%と
報告により頻度に幅があります

労作時だけでなく
夜間 早朝の喘鳴 息切れが出現します


残念ながら 有効な治療薬は検討されていません


<アレルギー性鼻炎>

アレルギー性鼻炎は
喘息の独立した発症リスク因子で
喘息症状の増悪にも深く関連しています

アレルギー性鼻炎と喘息の合併について説明する図

アレルギー性鼻炎の合併は
喘息患者の60~70%に見られ

アレルギー性鼻炎の合併の頻度を示すグラフ



小児の70%以上 成人の40%以上
で認められます

年代別のアレルギー性鼻炎の合併の頻度を示すグラフ

また 喘息の合併は
アレルギー性鼻炎の20~30%で見られま

アレルギー性鼻炎の治療により
喘息も改善することが少なくありません

高橋医院