新型コロナ・変異株に関する最新情報
このところ 新型コロナウイルスの変異株に関するニュースが 毎日のように報道されています 昨年末に イギリスの変異株やウイルスの変異について解説しましたが その後 南アフリカの変異株 ブラジルの変異株が それぞれ日本で同定されました 今日はそれらの解説をします <南アフリカの変異株 501Y.V2> 南アフリカの変異株は B.1.351系統 501Y.V2と呼ばれるタイプです 12/18に南アフリカは 新型コロナウイルス感染者の急増にともなう 新たな変異株の出現を報告し 現在 この変異株が南アフリカで流行している新型コロナウイルスの 80~90%を占めているそうです また イギリス スイス フィンランド 日本など13ヶ国でも 南アフリカからの帰国者で検出されています 南アフリカでは この変異株が主流になるにともない 感染者数が急増しているので ウイルスの感染性が強まっている可能性が 示唆されています 一方 より重篤な症状を引き起こす可能性や ワクチンの効果への影響を示唆する証拠は 今のところありません この変異株は スパイクタンパクに以下の9カ所の変異を認めます D614G L18F D80A D215G R246I K417N E484K N501Y A701V N501Y変異は イギリスの変異株でも認められ ACE2との結合親和性が強くなることから 感染性増強への関与が危惧されています 1/18には 南アフリカの研究チームが 変異株は従来の株に比べて 約1.5倍感染しやすいと発表しました 一方 E484K変異は 南アフリカ変異株に特徴的で この変異があると 変異していない新型コロナウイルスに感染した患者さんの 体内で形成された血清中和抗体の作用を回避することが示され 変異株による再感染の可能性が心配されています 実際に南アフリカからは この変異株は抗体の効きが悪いと報告されました もし本当ならば 厄介な話です 但し ワクチンの効果が減弱するかどうかは 今のところ明らかにされていません <日本で同定された新たなブラジルの変異株 B.1.1.248> 年明けすぐの1/ 6に国立感染症研究所は 1 /2にブラジル北部から日本に到着した渡航者4名から 新型コロナウイルスの新規変異株を検出したと発表しました この新規変異株は B.1.1.248 というタイプに分類され ブラジル北部で年末から感染者数の増大にともない 感染者の約40%していた変異株の B.1.1.28にさらにいくつかの変異が加わったものです この変異株は スパイクタンパクに12ヵ所の変異を認め イギリス 南アフリカの変異株と同様にN501Y変異があり 南アフリカの変異株が有するE484K変異もあります 現在のところ 感染性 病原性 ワクチンへの影響等については はっきりとしたことはわかっていません これらの3種類の変異株が 最近注目されていますが それぞれの変異株の地元である イギリス 南アフリカ ブラジルでは 変異株が流行の主流になるのにともない 感染者数が急増していることから 変異株を国内に持ち込まないような水際対策が重視されています <イギリスの変異株が世界で広がるリスク?> そんな中で つい先日 静岡県内で イギリスへの渡航歴がなく イギリス滞在歴のある患者さんとの接触もないのに イギリス変異株に感染している患者さんが3名同定されたという とてもショッキングなニュースが飛び込んできました その後 東京でのイギリス変異株の同定も報告されました いまのところ それらの患者さんの周囲の感染者に イギリス変異株に感染している方はいないそうなので 市中感染が広がっている可能性は少ないようですが かなり心配な状況であることに違いはありません 一方 アメリカのCDCは1/15に アメリカ国内における イギリスの変異株の感染動態に関する声明を出し ワクチン接種が順調に進まないと 現在では変異株の比率は0.5%程度に過ぎないけれど 3月頃から急増し始め 5月頃には主流となり 感染者数はさらに増大するリスクがあると警告しています しかしワクチン接種が順調に進めば イギリス変異株の占める割合は増えるものの 全体的に感染者数は減少に向かうだろうと推測しています 日本でもCDCが危惧するような事態に ならないことを願うばかりですが 覚悟はしておいた方が良いかもしれません また1/23にはイギリスから 変異株は感染力だけでなく致死率も高い可能性があると ショッキングな情報が流れてきました こうした情報に接すると とても心配になりますが しかし たとえ変異株でも予防の基本は変わりません そして 感染者が減る すなわちウイルスの複製の回数が減れば減るほど 変異株の発生は少なくなります まだしばらくは 地道な努力を続けていくしかなさそうです
高橋医院