抗酸化酵素
活性酸素 フリーラジカルの発生を抑える 予防的な働きをする 主な抗酸化酵素を紹介しましょう <スーパーオキシドジスムターゼ・SOD> @抑制する活性酸素の種類 酸素から悪玉ヒドロキシラジカルが 産生される過程で最初にできてくる スーパーオキシドを還元して 酸素や比較的害が少ない過酸化水素に変えることで ヒドロキシラジカルの発生を抑えています @存在する場所 代謝が盛んな肝臓に最も多く存在し *多くの細胞の細胞質に 恒常的に存在しているCu・Zn型 *ミトコンドリアで 酸化ストレス時に誘導されるMn型 *細胞外に存在するEC(細胞外)型 の3種類があります @加齢により減少する SODの酵素量は 加齢とともに減少します <カタラーゼ> @抑制する活性酸素の種類 過酸化水素を 水と酸素に分解して消去します 過酸化水素からも 悪玉ヒドロキシラジカルが 発生しますから SODと同様 ヒドロキシラジカルの発生を抑えています @存在する場所 さまざまな細胞の細胞内小器官の ペルオキシゾームに存在し 脂肪酸やプリン体代謝を行う 酸化酵素の働きで生じた 過酸化水素を分解します <グルタチオン・GSH> @抑制する活性酸素の種類 過酸化水素を 水に変えます また 過酸化脂質を 毒性のないものに変えます @構造 グルタミン酸 システイン グリシン の3つのアミノ酸からできています アミノ酸が連結したペプチドは プロテアーゼという分解酵素で 分解されやすいのですが グルタチオンは特異的な構造をしているので 分解されにくく 細胞内に高濃度で存在できます @SH基・チオールの強力な抗酸化作用 グルタチオンを構成するシステインの 側鎖のSH基(チオール)は 細胞内に存在する 最も強力な抗酸化成分です このSH基が還元状態にある 還元型グルタチオン(GSH)は 細胞内の主要な還元物質として働きます タンパク質のSH基が 活性酸素により酸化され ジスルフィド結合を起こすと そのタンパク質は機能を失ってしまいますが GSHは 他のタンパク質のSH基が 酸化されるのを保護します @グルタチオンペルオキシダーゼ・還元酵素と GSHのコンビ グルタチオンが働くには グルタチオンペルオキシダーゼ という還元酵素が必要で GSHは この酵素の基質として働くため 酵素が過酸化水素を水に変え 過酸化脂質を毒性のないものに 変えることができます @存在する場所 グルタチオンペルオキシダーゼは あらゆる組織の 細胞外 細胞質 ミトコンドリアに 広く分布し GHS・グルタチオンペルオキシダーゼのコンビは 細胞内の構成成分を酸化から守る 最も重要な抗酸化システムとして 機能しています @薬物代謝におけるグルタチオン抱合作用 GSHには 有害な薬物と結合して グルタチオン抱合を行い 水に溶けやすくして 体外に排出させる働きもあり 薬物代謝においても重要な位置を占めています グルタチオン抱合を行わせる酵素が グルタチオンSトタンスフェラーゼ(GST)で ヘム ビリルビン ステロイドホルモンなどの キャリアータンパクとしても働いています <チオレドキシン> @酸化ストレスで誘導される 酸化ストレスにより誘導される 抗酸化酵素です @各細胞内小器官に 特異的ファミリーが存在する 核 細胞質 ミトコンドリア 小胞体 ペルオキシゾームなどの 細胞内小器官に それぞれの特異的ファミリーが存在します @タンパク質のSH基の酸化を保護により 抗酸化作用を発揮する 上述したGSHと同様に 他のタンパク質のシステインの側鎖の SH基の酸化を保護し 酸化により生じたジスルフィド結合の 還元・切断を促進することで 抗酸化物質として機能します @ペルオキシレドキシンとのコンビ ペルオキシレドキシンという 過酸化水素を水に変換し 脂質過酸化物を分解するという 上述した グルタチオンペルオキシダーゼに 類似する働きを持つ酵素が存在し チオレドキシンとペルオキシレドキシンの関係は 上述のグルタチオンとグルタチオンペルオキシダーゼの 関係に似ていて ペルオキシレドキシンは 還元型チオレドキシンを利用して 過酸化水素を消去して 脂質過酸化物を分解するのです 細胞質に存在している ペルオキシレドキシンのサブタイプⅥは 作用発現に還元型チオレドキシンでなく グルタチオンを利用している可能性があり GHS・グルタチオンペルオキシダーゼのコンビと チオレドキシン・ペルオキシレドキシンのコンビは 相互連関があるのかもしれません @抗酸化作用以外のさまざまな作用 チオレドキシンは 酸化ストレス応答を制御するのみならず *遺伝子発現 *タンパク質の合成・分解 *細胞の活性化 増殖 分化 *アポトーシス といった さまざまな細胞の機能制御にも関わっています この作用は 酸化ストレスで発現誘導されたチオレドキシンが 核に移行して行っているもので 転写因子のDNAへの結合促進 細胞内シグナル伝達に関与し この制御の揺らぎが 発がん 炎症 糖尿病などの病態に 関わっています チオレドキシンの レドックス制御の奥は深いのです 書き手はかって このあたりを少し齧って遊んだことがあるので この解説を書きながら なんとなく懐かしい思いを感じています(笑) <まとめ> さて 長くなって恐縮ですが 抗酸化酵素には *細胞内に恒常的に存在するもの *酸化ストレスで誘導されるもの など さまざまな種類があって お互いの働きを補い合うように 複雑なシステムを形成して 抗酸化機構を構成している ことを ご理解いただけたでしょうか? 次回は 食物などに含まれる 抗酸化物質の解説をします
高橋医院