アルコール依存症の治療
中央区・内科・高橋医院の お酒と健康に関する情報 アルコール依存症の治療は 実際にどのようにして行われるのでしょう? 治療の目標は 断酒(今後 一生 一滴も飲まない)を続け その状態を維持することで 治癒(適度な飲酒ができるようになること)は あり得ない と 考えられてきました <従来の治療> 治療は外来でも可能ですが 日本では専門施設への入院治療が主体になります 入院治療は 月単位で *解毒治療 *リハビリ治療 *退院後のアフターケア の3段階で行われます 心身の回復を図りながら *病気に関する教育 *認知行動療法 どうしてお酒を飲むに至ったか 飲まないためにどうすればよいか を一緒に考えること を行います しかし 治療1年後の断酒率は 30%程度に過ぎないのが現状です 現実は厳しいですね、、、 そして 多くの患者さんは 専門施設への入院を 強固に拒まれます ご自分が そうした施設で治療しなければならない状態であることを 認めたくないのでしょう しかし そこを認めないと 治療が始まらないのです <患者会> また 患者会 という組織があり アルコール依存症を克服された方々が中心となり 患者さん同士で 断酒が続けられるように支え合います 日本各地で組織されていて 代表的なのが *断酒会 *AA(Alcoholic Anonymous) というグループです <新たな治療> 最近 新しいタイプの アルコール依存症の治療薬が出てきて 治療の様子が少し変わってきました @抗酒薬 従来からある薬は 抗酒薬 と呼ばれるタイプで この薬を飲んでいると お酒を飲むと 動悸 吐き気 頭痛 顔面紅潮 呼吸困難 などが生じるので 結果的に飲酒を抑制することができます ノックビン という薬が代表的なものですが 二日酔い症状の原因となる アセトアルデヒドを分解する ALDHという酵素の働きを阻害するので 薬の効果がある間に飲酒すると ひどく悪酔いし 耐え難い悪心 嘔吐を自覚して その恐怖感により 飲酒行動が制限されます お酒の誘惑から守ってくれるお守りとして 毎日 起床時に服用するケースが多いようです @飲酒抑制薬 近新しく出てきた薬は 飲酒抑制薬 というタイプで 脳に作用して飲酒効果を抑え 飲みたいという気持ちそのものを 軽減させる薬です 抗酒剤に比べると 症状が穏やかで 高齢者にも投与しやすく 1日3回 食後に服用します 断酒率を10%程度向上させるとされ 断酒がある程度できている人に効果が 出やすいようですが 現在 既に飲酒している人が服用しても 飲酒量を減らせないようです あくまで断酒が前提なので 抗酒薬との併用や 他の社会心理的な治療との組合せが望ましく ただ単に飲んでいれば 解決するわけではありません 既に発売されているのが レグテクト という薬で 2018年には ナルメフェン という薬も 発売される予定です ナルメフェンは 飲酒の1~2時間前に服用すると 飲酒時の心地よさを感じなくなるため 飲酒量が抑えられ 断酒にともなう心理不安も抑制できます こうした飲酒抑制系の薬剤の登場により 従来の「依存症は断酒」という治療目標が変化し 減酒も治療目標となってきました アルコール依存症は 早期発見 早期治療が重要で 早期から治療に介入できれば アルコールによる健康や社会的影響が小さく 家族崩壊も未然に防ぐことができます そういう意味では 軽度の依存症患者を対象にした 飲酒抑制系薬剤による早期介入による減酒も アルコール依存症の新たな治療として 注目されています <女性のアルコール依存症> 最後に 女性のアルコール依存症 について 解説します 既に詳しく述べましたが 女性のアルコール依存症は 昔はまれでしたが 年々増加していて 2008年から13年の間にほぼ倍増 平成25年には14万人で 依存症全体の約1.5割を占めると 推測されています 女性のアルコール依存症には *短期間で依存症となる *患者年代のピークが 30代と若い *摂食障害 うつ 自殺未遂など 様々な精神的問題を抱えていることが多い *配偶者の大量飲酒や家庭内暴力など 環境に大きく影響される *自責感が強い *周りの気づきが遅い といった特徴があります また 以前に説明したように 女性は男性に比べて アルコール性肝硬変になりやすいので 余計に注意が必要です 女性のアルコール依存症の治療には 男性にも増して 周囲の協力が必要なので 周りにそうした方がおられたら 早目に医療機関にご相談ください
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