カロリー重視の罠
夏休みも終わったので ブログもいつものスタイルに戻り 中断していたミスマッチ病の話を 続けることにします 前回 紹介したように 倹約遺伝子を持ち 脂肪を蓄積しやすい体質となったヒトは やがて狩猟生活に別れを告げ 農業を始めます では 農業の開始により 食はどう変化したのでしょう? 農民が食べていたものは 小麦 ライ麦 大麦 エンドウ豆 レンズ豆 ミルク チーズ たまに 肉 季節の果物 といったものでした 狩猟民族の食事内容に比べると 質と多様性を犠牲にして 量を優先するように変化しています デンプン質は豊富ですが 食物繊維 タンパク質 ビタミン ミネラル は少ない 保存のために 穀物を精製し始めたのも 食物繊維などが低下した原因のひとつです 困ったことに こうした質の変化は 不健康を導くリスクが高い 農業により 安定した食物の供給が 得られるようになりましたが 皮肉なことにそれは 高カロリーで栄養の質が低い食事の提供に なってしまいました カロリーをとるか 栄養の質をとるか? 農民は 集団を維持し繁殖を維持するために カロリーを優先する食事を 選択せざるを得ませんでした こうした食内容の変化が ミスマッチ病の発症 蔓延に つながっていきます 食物繊維を除去した デンプン質の食事は 血糖を上昇させますが それまで血糖上昇など 経験したことがなかった消化器系は 大量の糖を急速に対処できる機能を 備えていません そこで インスリン産生を高める適応が 生じます 繰返しになりますが ご先祖様の進化を受継いでいるヒトの身体は 余剰エネルギーのほとんどを 脂肪として貯蔵します 余分な糖質は インスリンの作用により 脂肪として貯蔵されます また 糖が多いとインスリンが過剰分泌され すぐに空腹になるので 食べる量が増えてしまいます 一方 食物繊維が欠乏すると 糖の吸収が急速になるので 消化器系の対応が追い付かず 糖は全て脂肪に 変換されてしまいます 脂肪は 一部は肝臓 筋肉で貯蔵されますが それらの貯蔵能を上回った過剰分は 内臓脂肪をはじめとする 全身の脂肪細胞に貯蔵されます その 内臓脂肪こそが 諸悪の根源であることが 明らかにされてきました 内臓脂肪は皮下脂肪に比べて *脂肪の蓄積能が悪く 放出のスピードは速いので 全身に遊離脂肪酸をまき散らす *悪玉アデイポカインを産生して 肝臓や骨格筋などの インスリン抵抗性を誘導する といった 悪しき性質を有しています こんな内臓脂肪が増えるのが まさに生活習慣病の原因なのです ちなみに内臓脂肪は 身体活動レベルを上げれば減少しますが 現代は昔に比べて はるかに運動量が減っています 現代でミスマッチ病が増える理由を 再度 ご理解いただけたでしょうか?
高橋医院