プリン体ってなに?
健康診断で 「尿酸値が高い」と指摘され 心配になって来院される患者さんは 糖尿病や脂質異常で来られる患者さんと 肩を並べるほど多いです そこで今日から 高尿酸血症・痛風の解説を始めます まず1回目は プリン体ってなんだ? <尿酸の原料となるプリン体とは?> 世の中には プリン体がフリーのビールなどが出回り プリン体という言葉は かなり広く認識されるようになりました でも 言葉として聞いたことはあるけれど その本体は? と疑問に思われる方は多くおられることでしょう プリン体は 尿酸の原料です プリン体の仲間には さまざまな物質が含まれますが 分子構造の違いから 下図に示す3種類に分類されます プリン体は *体内で産生され *食物成分としても摂取されますが そうしたプリン体が体内で代謝されて 最終的に尿酸になります あとで詳しく述べますが 通常の状態では 尿酸の産生と排泄のバランスが 上手くとられているので 血中尿酸値は上昇してこない この産生と排泄のバランスが異常をきたして 血中尿酸値が上昇してくると 高尿酸血症・痛風に至るわけですが プリン体が体内で増えてくると 尿酸産生過多になるリスクが増えてきます ですから 尿酸値が高い方は プリン体の摂りすぎに注意しましょうと言われ プリン体フリーのビールが注目されたりするわけです でも 実情はちょっと違います <プリン体はどのようにして出来てくる?> 前述しましたように プリン体のソースは *体内で産生されてくるもの *食物成分として摂取されるもの に2分されますが その比率は *体内で産生されるものが80%(1日に約500mg) *食品に含まれるものが20%(1日に約100mg)で 体内で産生されるプリン体の方が 圧倒的に多いのです ちょっと意外でしたか? では 体内では プリン体はどのようにして産生されるのでしょう? 体内でプリン体の原料になるのは2種類の物質です *ひとつは DNA RNAなどの核酸 *もうひとつは ATP DNAやRNAは 遺伝子診断やエピジェネティクスの話題で ご紹介したように 細胞の核の中に存在する遺伝情報を担う物質です 核酸の構成要素であるアデニンやグアニンは プリン体の仲間のプリン塩基ですから 細胞が新陳代謝を繰り返したとき 核酸は分解されてプリン体が産生されます ATPは 初めて聞いたと言われる方も 多いかもしれませんが 中学や高校の生物の授業で一度は習っているはずです (そんなの 憶えていませんよね:笑) アデノシンという プリン体の仲間のプリンヌクレオシドに リン酸が3つ結合している構造で そのリン酸が結合した部位に 化学エネルギーを蓄えていて リン酸の結合が外れて遊離するとき このエネルギーが放出され 生体はこの化学エネルギーを利用して生活しています 生物が 日々の生活の運動 代謝などのさまざまな反応で利用している 重要な高エネルギー化合物で 生命反応におけるエネルギー通貨 と呼ばれることもあります この高エネルギー化合物ATPは 生命活動で使われると リン酸基が外れてADPに分解されます 通常ADPは リン酸と結合して再びATPになりますが 激しい運動などで 急激にたくさんのATPを使った場合は ADPがですぎてしまい 過剰のADPは分解されてプリン体となります ATPという重要なエネルギー物質は この先 いろいろな話題でたびたび登場することになりますから 是非 記憶に留めておいてください このようにプリン体は 細胞が新陳代謝を盛んに行ったり 運動などで激しくエネルギー消費したときに 体内で産生されてくる いわば燃えカスのようなもので プリン体が代謝されて産生されてくる尿酸は まさに生命活動の究極の燃えカスと 言えるかもしれません あとで詳しく解説しますが 高尿酸血症や痛風の患者さんに 筋肉が激しく使われエネルギーが大量に消費される 筋トレなどの無酸素運動をしないように勧めるのは こうした理由によるものです ビールや魚の卵などの プリン体を多く含む飲食物からも プリン体は体内に入ってきて代謝されて 尿酸ができてきますが 実は食物中に含まれるプリン体は 腸内細菌で分解されることが多いことが明らかとなり 昔ほど厳しい食事制限は されないようになっているのが現状です ましてや上述したように 尿酸のもとになるプリン体は ベースとなる生命活動で大量に産生されていて 食品に含まれるプリン体は 生体内のプリン体の 20%を占めるにすぎません しかし そのように基本的な日々の生命活動で プリン体が大量に産生されているからこそ 高尿酸血症や痛風の方は 食物からのプリン体摂取で さらに尿酸の原料が増えないように 気をつけるべきでしょう ビールや魚卵をたくさん食べたら 尿酸は確実に増えますから 食生活の注意が重要なことに変わりはありません プリン体は生命活動で生じた燃えカスであり その燃えカスが代謝されて出来てきた 究極の燃えカスが尿酸である プリン体 尿酸の実態のイメージが なんとなくつかめたでしょうか? 次回は 尿酸の体内動態について説明します
高橋医院