過敏性腸症候群:IBS
これまで説明してきた 機能性ディスペプシアは 胃もたれなどの胃の症状がつらい 機能性胃腸障害でしたが 機能性胃腸障害には 腹痛や便通異常などの症状が つらいケースもあり 過敏性腸症候群(IBS) と呼ばれています <過敏性腸症候群とは?> 通常の検査では 器質的疾患が認められないにもかかわらず *腹部症状(腹痛 腹部膨満感 腹部不快感など)と *便通異常(下痢・便秘)が 慢性的に持続する疾患で トイレの問題で 学校や会社に行けなくなったり 外出を控えるようになったりするなど 生活の質・QOLを低下させることが 大きな問題になります 日本では 1990年代から注目されるようになってきています 電車の広告などで 過敏性腸症候群の名前を見聞きしたことがある方も 多いと思います 日本における過敏性腸症候群の有病率は13.1%で 7人に1人認められるという 大変ポピュラーな病気です 女性の患者さんが 男性より1.6倍多くて 男性は下痢で悩み 女性は便秘で悩む方が多い とされています 思春期から青年期の若い世代に最も多いのも特徴で 患者さんの数は 加齢とともに低下し 特に40歳以降で 男女とも低下する傾向があります また加齢により 症状も軽快することが多いようです 他の機能性胃腸障害の合併も多く 機能性ディスペプシアの合併頻度は 健康な人の2倍以上で 約40% 逆流性食道炎の合併頻度は2倍以上で 28~80% 機能性ディスペプシアと同様に うつ・不安の合併率も高く うつの合併率は約30% パニック障害は15~40% 身体化障害は25~33%で うつや不安は 過敏性腸症候群発症の リスク要因でもあります また 大腸に慢性的な炎症が生じる クローン病 潰瘍性大腸炎といった 炎症性腸疾患(IBD)の合併率も高いのが特徴で 潰瘍性大腸炎の合併率は 健康な人に比べて5.7倍も高く 過敏性腸症候群からIBDへの移行リスクは 16.3倍もあるとされています <過敏性腸症候群の病型> 過敏性腸症候群は 便の形状の違いから *便秘型 硬い便 コロコロ便 *下痢型 泥状便 水様便 *交替型(または混合型)下痢と便秘が交互に出現する *分類不能型 の4つの型に分類されます 便の形状は 便の腸の通過時間を反映していて 下痢型は 通過時間が短いので 泥状便 水様便になり 便秘型は 通過時間が長く 水分が吸収されるので 硬い便 コロコロ便になります 上述したように 下痢型は男性に 便秘型は女性に多くみられます 4つの型の間で移行があり 最初に症状を自覚するときの頻度は 便秘型 下痢型 混合型で ほぼ1/3ずつ 経過中に最初の型に ずっと留まるのは25%で 75%は 他型にいちどは移行しています また 排便頻度は健常者と変わりません 下痢型は 原因不明の下痢が 突発的に起こるのが特徴で 仕事中や通勤電車の中 授業中などに ところ構わず不意に起こるため 「ここでお腹が痛くなると困る」 という心配がストレスになって 症状がより起こりやすくなります 腸のぜん動運動が 必要以上に活発になることで 下痢が起こるとも言われているので 食後すぐに下痢を起こすケースも 少なくありません 便秘型は 腸のぜん動運動が正常に行れなかったり S状結腸の痙攣によって便が出にくくなり 便意はあり お腹も痛くなるけれど 便が出ないため 苦痛を感じる 便は硬く ウサギの糞のように コロコロした状態になります 交代型は 数日おきに下痢と便秘の症状が繰り返されるタイプで 交代の周期は 数日程度が多いようですが 下痢・便秘の周期や程度には 個人差があります また サブタイプとして ガス型があります ガスが腸内に溜まりやすく 頻繁にガスが出てしまうタイプで ガスはおならなので 「ガスが出てしまったらどうしよう」 「臭いがしているのでは」 というストレスから 外出に不安を覚えるようになるなど 日常生活に支障をきたします 腸内環境の悪化や 腸の働きが活発過ぎることが ガス発生の原因だと考えられます 今日の説明を読まれて あー私も、、、 と思われている方は 少なくないと思います 次回は過敏性腸症候群の診断について説明します
高橋医院