ライ麦の復活
ライ麦 と聞いて 読み手の皆さんは 何を思い浮かべるでしょう? サリンジャー と答えた方は文学好きですね! ライ麦畑でつかまえて 現代アメリカ文学を代表するあの作品は 書き手も若い頃に読みましたが 正直言って それほど感動しなかった 飲み食いが大好きな書き手にとっては ライ麦と聞いて思い浮かべるのは 文学とは別のものです(笑) <ライ麦ってどんな麦?> そのお話をする前に そもそも ライ麦って どんなものなのでしょう? ライ麦は 大麦や小麦と同じ 麦の仲間ですが 他の種類の麦より 酸性の土壌に強く 寒冷な気候や痩せた土壌などの 劣悪な環境でも 育てることが出来ます ですから主に 小麦の栽培ができない 寒冷地で栽培されることが多く 主要生産地帯は 北欧や東欧 ドイツ ポーランド ベラルーシ ウクライナ リトアニア ラトビア ロシア といった国々です 現在もヨーロッパでは ドイツとポーランドで 全体の80%近くを収穫しています <ライ麦の黄金期> ライ麦の歴史について見てみると ローマ帝国の時代には 貧困者が食べるものと 蔑まれていましたが 16世紀末からは 海運の改善や都市人口の増大にともなって バルト海沿岸諸国で 輸出用作物として 盛んに栽培されるようになりました また こうしたライ麦交易の活況は ポーランド王国の経済を活性化し その黄金時代を経済面から支えました ポーランドのジモピーグルメの ライ麦サワースープ ジュレック 酸っぱくて 美味しいのですよ! <ライ麦の受難> しかし18世紀になると イギリスで 囲い込みや農業革命の進展によって 小麦の生産が急伸し 小麦に比べて マズイ 味に劣るライ麦の輸出は 急減します 確かに フカフカで柔らかく ほんのり甘くて白い小麦パンの方が 固くて酸っぱく 色も黒い ライ麦パンよりも 人気が出るのは当然です それでも 1940年頃までは 小麦とライ麦の供給量はほぼ同量でしたが 1950年には逆転し ライ麦の供給量は小麦の半分になり その後も ライ麦の供給量は急減を続けました こうして ライ麦にとっては 長い受難の時代が続きました <ライ麦の復活> しかし現在では ライ麦は小麦より ビタミンB群や食物繊維が 多いことが判明して 飽食の世における 食物繊維の重要性の クローズアップなどにともなって ライ麦は蔑まれることはなくなり 健康的な食物として ヨーロッパ全土で栽培されています 実際に ライ麦は栄養学的に優れています 小麦粉より 食物繊維 ビタミンB群 ミネラルが 豊富に含まれています ビタミンB1 B2は 炭水化物やタンパク質の代謝を助ける効果や 皮膚や粘膜を強く保つ効能などを 有しています また 現代社会の食生活における 食物繊維の重要性は 既に解説したように 非常に大きいものがあります さらに 小麦粉よりも 糖質もカロリーも低く GI値も 食パンが91 ライ麦パンは58で ライ麦は低い 食後血糖値を上げることもないので 肥満や糖尿病に悩む方々には うってつけの食材です ライ麦の復活です! ただ ライ麦の栽培面積は 減少したまま推移しているので 生産量は少なく そのため 僅かな不作でも価格が急騰する事があり 昔とは逆に 小麦パンよりライ麦パンの方が 高値で取引されることも珍しくないという 奇妙な現象が認められるようになりました ライ麦の受難と復活の歴史 その栄養学的価値が 注目されている現在の環境を イメージしていただくことが できたでしょうか?
高橋医院