社会疫学
カワチ先生は 「命の格差は止められるか」 というタイトルの小学館新書を 2013年に書かれています NHKの本に参考文献として紹介されていたので 読ませていただきましたので その内容も紹介しようと思います <社会疫学とは?> カワチ先生が専門にされている 社会疫学 お恥ずかしいことに 書き手も初めて聞く用語でしたが 社会全体を見渡して 健康の要因を探す 病気の根本的な原因は何かを探る そうしたことにより 社会全体の健康をいかにして守っていくか考え 社会政策の提案などを行うことを 目的とした研究領域で 1990年代後半に確立された分野だそうです 研究対象とするのは 個人でなく社会 ここが 臨床医学とは根本的に違う点です 社会疫学が行うことは 地域の健康づくり 国の保険政策 などの立案 実行をアドバイスすることで 病気の予防 退院後の生活のケアなどを通じて 人々が健康な生活を作るための 土台を作ることを目的とします 具体的には *禁煙対策 *健診の実施 *学校での食育 *ワクチン接種 *高齢者介護 *孤独死の回避 などについて解決策を探っていきます 日本では健康に関する議論のなかで 社会疫学・パブリックヘルスの視点が 抜け落ちているそうです 確かに書き手も 医学生の頃に公衆衛生を学びましたし 公衆衛生学は医師国家試験の必須項目で 医師として必ず身につけておかなければいけない知識でした 今でもそれは変わらないでしょうが 書き手が当時勉強したのは 以前に紹介したような ハイリスクアプローチ的な方法論が主で 社会疫学が行うポピュレーションアプローチは 勉強したことがありませんでした <ソーシャルキャピタルが日本人を長寿にした> カワチ先生は 日本人が長寿な原因の大きなひとつが ソーシャルキャピタルだと指摘されます 実際に 周囲の人への信頼度が高い地域は 健康状態が良く 要介護になる率が1.5倍も低いそうです 社会における人々の結束により得られるもの 市民同士が助け合い 社会全体の利益のために協調する土壌 隣近所を信頼して思いやる気持ちが 人々の健康を支えてきた と指摘されます そして日本で絆社会が形成された理由は 島国で 多様性が少ない環境で文化が形成されたから と考えられます 多様性は それ自体は良いことですが グループ間の違いから格差が発生し ソーシャルキャピタルは蓄積されにくく 健康格差も生まれやすいとされます アメリカが良い例です しかし 現代の日本では ソーシャルキャピタルに衰えが見え始め それが健康格差の拡大につながっていることは 前回ご紹介した通りです
高橋医院