せっかくですので
もう少し詳しくワクチンの解説を
続けようと思います

<エピトープ>

これまでも何回かエピトープの話をしましたが

エピトープとは
病原体の構成成分のうち 
免疫系により強く認識される部位で
ワクチン開発のターゲットになります

エピトープについて説明する図

@Bリンパ球エピトープ

Bリンパ球の活性化を起こさせて
病原体が発現する
エピトープタンパクに対する抗体の
産生を誘導します

Bリンパ球エピトープについて説明する図

この抗体は
ウイルスに対して中和作用がある抗体で

中和作用について説明する図

多くの場合
ウイルスの感染過程(受容体への結合 侵入 脱殻)
を直接阻害して感染を抑制します


@Tリンパ球エピトープ

Tリンパ球への抗原提示は
抗原提示細胞内で抗原プロセシングされた
オリゴペプチドの形で起こるので

Tリンパ球への抗原提示について説明する図

ウイルス表面に存在するタンパクだけでなく
内部のタンパクもエピトープになり得ます


@エピトープの同定 エピトープマッピングの方法

*アミノ酸シークエンスからの予測

*タンパク質構造からの予測

*タンパク質分解断片を用いた免疫学的アッセイ

などの手法を用いて
候補となるエピトープを絞りこみます

エピトープの同定方法について説明する図

こうして同定されたエピトープを含む
ワクチンの接種により
体内では免疫反応が誘導されます


<ワクチンが活性化する自然免疫>

ワクチンは
自然免疫系 獲得免疫系の 
両方をともに刺激して増強します

ここで
自然免疫系 獲得免疫系の復習をします

@自然免疫の仕組み

自然免疫系は
病原体が体内に侵入してきたときに
最初に働く免疫システムです

まず食細胞が
侵入してきた病原体を
摂り込んで処理するとともに
炎症性サイトカインを産生して
周囲の細胞に警報を鳴らして
炎症反応の引き金を引きます

自然免疫について説明する図

代表的な食細胞の樹状細胞は
取り込んだ病原体を分解して
その一部を細胞表面に抗原提示し
それを認識したTリンパ球が活性化され
抗原特異的な獲得免疫系が作動し始め
Bリンパ球も刺激して
抗原特異的抗体が作られるようになります

自然免疫と獲得免疫の関連を示す図

また 食細胞が産生する炎症性サイトカインも
獲得免疫系に情報を伝えて活性化します


@異物センサー・パターン認識レセプター

食細胞は
病原体の構造をパターン認識する
TLR CLR NLRなどと呼ばれる
何十種類もの異物センサーにより
病原体を種類を識別 認識します

DNA RNA 細菌などを
特異的に認識する異物センサーがありますが
正式名称は
パターン認識レセプターといいます

種々のパターン認識レセプターを示す表

異物センサーは
さまざまな種類の細胞の
細胞膜表面 細胞内小胞の膜 細胞質などに存在し
それぞれの部位で病原体を認識して
情報を核に伝え
炎症性サイトカインが放出されます

種々のパターン認識レセプターの細胞内局在を示す図

また 病原体だけでなく
宿主の細胞が壊れたときに
細胞内から放出される
タンパク質 脂肪酸なども認識します

異物センサーが認識する

*病原体成分に存在する
 分子パターンがPAMP

*細胞が壊れたときに放出される
 分子パターンがDAMP

と呼ばれます

PAMP DAMPについて説明する図

ワクチンのアジュバントは
生体内の細胞に作用して
色々なDAMPを産生させ
それ自身がPAMPであることもあります

そのために
副反応としての炎症反応が強くなります
高橋医院