ワクチンが活性化する獲得免疫反応と免疫記憶
ワクチンによる免疫活性の仕組みの解説を続けます <ワクチンによる獲得免疫系の活性化> @獲得免疫系とは 獲得免疫系は 自然免疫系で対処できない時に働く より高度で洗練された機能を持つ免疫システムで Bリンパ球 Tリンパ球が活躍します Bリンパ球は 形質細胞に分化して抗体を産生し 体液性免疫反応を起こします Tリンパ球は 細胞性免疫反応を起こします ヘルパーT細胞は Bリンパ球の分化 活性化を助けます キラーT細胞は 病原体が感染した細胞を殺します @抗原レセプター Bリンパ球 Tリンパ球は 抗原レセプター(BCR TCR)と呼ばれる 精度が高く正確に抗原の差異を見分けられる 細胞上に発現しているアンテナを用いて 抗原を認識します 抗原と抗体は 鍵と鍵穴 の関係で 厳重な特異性があります 抗原レセプターは何十万種類もありますが ひとつのリンパ球は ひとつの抗原レセプターしか発現しておらず 1種類の抗原にしか反応できません この抗原特異性が 免疫反応のキーポイントになります @自然免疫系と獲得免疫系の共同作業 自然免疫系は獲得免疫系を活性化し 獲得免疫系は 自然免疫系のアクセル ブレーキの強さを変化させ こうした共同作業により 免疫反応全体の強さ 持続時間などが調節されます <ワクチンは免疫記憶を誘導する> ワクチンが効くのは端的に言うと 免疫記憶が形成されるからです @免疫記憶 最初の感染のときに起こる免疫反応を 一次免疫応答といい 免疫系が刺激され特異的反応を起こすのに 数日かかります 同じ病原体が二度目の感染を起こしたときは 二次免疫応答が起こり このとき免疫系は即座に反応できます これは 抗原特異的メモリーリンパ球が 即座に増殖するからです メモリーリンパ球の誘導には Tリンパ球とBリンパ球が 同じ抗原により活性化され ヘルパーTリンパ球がBリンパ球を助けることが必要です ワクチンを接種することにより 再感染時に 特異的なメモリーリンパ球が すぐに反応できる体制を作ることが できます 獲得免疫に対して免疫記憶を与え その病原体が再び侵入してきたときに ただちに反応を起こせるような 出動待機状態を作り出すのが ワクチンの目的です @長期の免疫記憶 腸管と骨髄に20年以上生存し続ける 長寿の抗体産生細胞があります 麻疹などのように こうした長寿の抗体産生細胞を誘導できる ウイルスがあります ワクチンの効果の持続性は 長期の免疫記憶にも規定されます
高橋医院