科学と政治経済という
デリケートな話題で始まった対談ですが

どうして日本では感染者 死者がすくないのか?
というサイエンティフィックな話題に
展開していきます


<日本人は感染の感受性が低い可能性がある?>

山中先生は

今でも きちんと対策をとらないと
万人単位の人が亡くなる可能性があるウイルスで
この事実を絶対に忘れてはいけない

語る山中先生
語る山中先生

これは日本でも世界でも同じことだけれど

どうして日本では感染者 死者が少ないのか?
と疑問を呈されます

疑問を呈する山中先生

西浦先生は その疑問にこう答えられます

致死率は 海外と日本では変わらなくて
全感染者の0.5%前後
後期高齢者では10%を超える高さのリスクがある

疑問に答える西浦先生

また 重症化の頻度も 日本と世界では変わらない

疑問に答える西浦先生

ただ 日本人は感染の感受性が低い可能性があり
その明確な理由はまだ特定されていない

山中先生は

東アジアでは どうして感染者 死亡者が少ないのか?

日本人も
クラスターの環境にいけば高頻度に感染している

語る山中先生と西浦先生

隣に感染者がいたら感染するリスクも
感染したあとの重症化リスクも
世界と変わらないにも関わらず
日本人の感染者が少ないのはなぜか?

と さらに問われます


西浦先生は

日本人は感染性が少ないのではないか?

クラスターが形成されたときの2次感染者の数が
日本人は少ない可能性がある

語る山中先生と西浦先生

欧米では2次感染が爆発的に起こっているが
日本ではそれが起こっていない

語る山中先生と西浦先生

その違いが何なのか?

と答えられます


<アジア人に交差免疫があるかどうかは疑問で
 むしろ欧米人のADEが問題かもしれない>

山中先生は
SIRモデルに基づいて 原因を追究しようとされます

新型コロナウイルスの感染過程は

S:多くの人々は新型コロナウイルスに免疫がなく
  感受性(S)がある

感受性について説明する図

I:感受性があるので 人々は感染(I)する

感染について説明する図

R:そして回復して(R) 体内で免疫が成立する

回復について説明する図

と 段階的に進行していく

この感染動態のどのポイントが
日本人と欧米人で異なるのだろう?

最初のSに関して

季節性かぜウイルスのコロナウイルスと
新型コロナウイルスに
免疫学的な共通性があり

日本人やアジア人は
季節性コロナウイルスに感染していて
交差免疫を有しているから
新型コロナウイルス罹りにくいのではないか?
という仮説があるが どうなのだろう?

と問われると 西浦先生は

日本人やアジア人が
季節性コロナウイルスと新型コロナウイルスの
交差免疫を有していて
欧米人は有していないという明確なデータはない

むしろ 欧米人では
ADE・抗体依存性感染増強
による免疫誤作動が起きていて
アジア人ではそれが起きていない可能性がある

可能性を指摘する西浦先生

と答えられます

でも 
それは重症化の差異の説明にはなっても
かかりやすさの差異の説明にはならないように
書き手は感じたのですが、、、


山中先生は少し趣向を変えて
BCGなどの他のワクチンの影響の可能性は?
と問われます

西浦先生は
最初は
BCGをうっていた南米での感染が少なかったので
BCGとの相関があるように見えたけれど
南米での感染者が増えてきて 
相関はなさそうになってきたと答えられ

山中先生が
では 感受性のレベルで
日本人・アジア人と欧米人が異なるという仮説は違う?
とまとめられると

西浦先生は
明確な証拠はつかめていません
と答えられました


<抗体よりもキラーTリンパ球が大事かもしれない>

次に山中先生は
では 回復のレベルはどうか?

新型コロナウイルスでは

*抗体がなかなかでてこない
中和活性を有する抗体を持つ人は少ない
*抗体ができても減少してきてしまう

といった報告があいつぎ

もしそうなら
ワクチン効果が長持ちしない可能性がある

一方で
抗体はダメでも
Tリンパ球レベルの反応はしっかりしているから
Tリンパ球を活性化させるワクチンなら
大丈夫ではないか?
という仮説もある

どうなのでしょう? と問われます

西浦先生は
医科研の河岡先生が
中和抗体の減衰は
急性ウイルス感染症で頻繁に見られる現象で
普通に起こる事実であるので心配しなくていい
と語っておられ

実際に
季節性コロナウイルスに対する免疫反応は
細胞性免疫(Tリンパ球)は大丈夫でも
液性免疫(抗体)はダメなことが多いので
大事なのは抗体よりもTリンパ球ではないか
と推察している

と答えられました

説明する西浦先生

抗体の働きを過剰に評価するのは
いかがなものか?

宮坂先生も指摘されていました
トレンドはそういう考え方なのでしょうか?

液性免疫と細胞性免疫は
決してパラレルに動くものではないというのは
考えてみると不思議はありませんが
なんとなく驚きを覚えました

Tリンパ球の抗原特異的反応は
評価するアッセイ系が抗体のそれより煩雑なので
抗体のように簡単にできませんが

もしかしたら
そうしたことを見ていかないと 
いけないのかもしれません
書き手は 研究していた頃に
Tリンパ球の抗原特異的反応アッセイを
よくやっていたので懐かしいです(笑)
高橋医院