日本内科学会のシンポジウム

ついで藤田医科大学の土井先生治療薬について解説されました

土井先生の講演のタイトルスライド

<治療薬の現状と課題>

@治療効果判定の難しさ

新型コロナウイルスでは
*自然治癒との判別が難しい
*重症化 死亡は少ない
ことが特徴で

治療効果の判定が
なかなかしにくくて 難しい
という前提があると話されます

治療効果判定の難しさについてまとめられたスライド


@病期により治療法が異なる

病初期は
ウイルスが病態の主役で
抗ウイルス療法が治療の中心となる

進行期は
感染個体の炎症反応が病態の主役となり
抗炎症療法が治療の中心となる

病期による治療法の違いを示すスライド


まず 抗ウイルス作用を示す薬です

@レムデシビル

C型肝炎ウイルスの治療用に開発された
RNAポリメラーゼ阻害薬
エボラ出血熱の治療に用いられている

退院可能となるまでの期間が短縮でき
軽症~中等症が適応になりそうだそうです

実際に治療にあたられている知人の先生は
手応えはいいけれど潤沢に入手できない
と言われていました 

レムデシビルの効果についてまとめた図表


@ファビピラビル(アビガン)

新型インフルエンザ用に開発された
RNAポリメラーゼ阻害薬
ウイルス陰性化までの期間が短縮でき
解熱までの期間も短縮できたことが
中国やロシアから報告され

日本の臨床試験でも
最初から投与すると 途中から投与するより
ウイルス陰性化までの期間 解熱までの期間が
それぞれ短縮する傾向が示されました

ちなみに
84%で投与中に尿酸値上昇が見られましたが
ほぼ全例で投与終了後には回復したそうです

アビガンで尿酸値が増加することを示す図

治療薬として引き続き有望な候補であると
まとめられています

ファビピラビルの効果についてまとめた図表


@インターフェロンβ

香港 アメリカなどで検討されていて
ウイルス陰性化までの期間が短縮できたそうです

インターフェロンの効果についてまとめた図表


@シクレソニド 喘息治療薬

軽症例への適応が検討されていて
ウイルス量低減効果が期待できるそうです

シクレソニドの効果についてまとめた図表


ついで 抗炎症作用を示す薬です

@デキサメサゾン

重症化しつつある患者に対する使用で
死亡率の改善が報告されていて
リスク管理ができていれば有益な可能性が
示されています

デキサメサゾンの効果についてまとめた図表

デキサメサゾンの有効性は
先日 WHOも公認していました


@トシリズマブ(アクテムラ)

抗IL-6受容体モノクローナル抗体で
サイトカインストームを呈する重症例への
効果が期待されましたが
症状改善 死亡率の改善は認めず
抗ウイルス薬との併用が
引き続き検討されているそうです

トシリズマブの効果についてまとめた図表


最後に ワクチンについてもまとめられました

@ワクチン

17種類のワクチンが
既に基礎研究を終え ヒトでの検討が始まっていて
現在 ふたつが先行し注目されています

オクスフォードとアストラゼネカが開発した
スパイクタンパク遺伝子を
チンパンジーのアデノウイルスで接種するワクチンは
1077人のヒトでの検討で
中和抗体がほぼ100%検出され
インターフェロンγの誘導も認めていて
期待されています

先日 横断性脊椎炎の副作用が1例認められ
治験が中断しましたが
その後 再開されているようです

アストラゼネカのワクチンの開発状況についてまとめた図表

NIHとモデルナという会社が開発した
mRNA-1273という
スパイクタンパク遺伝子のmRNAワクチンは
45人の検討で 
全員で中和抗体が誘導されているそうです

mRNA-1273ワクチンの開発状況についてまとめた図表

いずれもこれまでヒトではあまりうまくいかなかった
RNAワクチンですが
今回はうまくいくことを願いたいです


最後に感染症学会理事長の舘田先生が
講演されました

舘田先生の講演のタイトルスライド

<感染症学会から>

@第2波の感染の特徴

5月と比べて8月には
感染者数は5倍になったが
死者数は2.7倍の増加に留まり
回復者は9.6倍に増えていて

第2波の感染の特徴についてまとめた図

第2波の感染が増加しているが
第1波に比べると死亡者数が少ない

こうした現象が見られる原因として
*高齢者の割合が少ない
*治療法の進歩
*ウイルスの変異も?
といったことが推察されています

第1波に比べると死亡者数が少ないことを示すグラフ


感染者数が増加傾向にあるのは
間違いありませんが
最近は横ばい傾向になってきているので
それを下げる方向に持って行く必要があり

そのために分科会では
政府に次のような提案をされているそうです

@社会経済と感染対策の両立のための目標と基本戦略

*個人 事業者が協力して
 感染拡大しにくい社会を作る

*社会全体で 集団感染を早期に封じ込める

*重症化予防を行い
 重症者に対する適切な医療を提供する

社会経済と感染対策の両立のための目標と基本戦略についてまとめた図

そして 現時点で早急に取り組むべき対策として

*クラスターの早期封じ込め

*3密回避などの基本的な感染予防の徹底

*水際対策の適切な実施

*人権への配慮 社会課題への対応

などが提案されています


また 感染様式について
新たな事実が明らかにされています

@感染様式と危険な場所

咳 くしゃみ だけでなく
おしゃべりでも感染することが示され
マイクロ飛沫感染の予防策として
マスクの有用性が改めて認識されている

感染様式と危険な場所についてまとめた図
マイクロ飛沫感染について説明した図

誰が感染しているかわからない状況
自分が知らぬ間に感染している可能性もあるので
おしゃべりするときは 必ずマスクですね!

クラスターが発生しやすい場所・要因も
より詳細に明らかにされ

居酒屋などでの会食 宴会 飲み会や
接待をともなう飲食店では
食事中や接待中にマイクロ飛沫が飛び散る

職場 営業所 研修施設 休憩所などでは
接触感染が起こり得る

学校 保育施設 サークル 合宿所などでは
咳 くしゃみなどによる飛沫感染が起こり得る

こうした感染機会を減らすために
改めて 密閉 密集 密接の3密を避けることの重要性
強調されました

3密を避けることの重要性を強調する図


今回の内科学会のシンポジウムでは
これまでにこのブログでも紹介してきたことなどが
コンパクトにまとめられていて
重要な情報 知識の再確認や整理ができて
とても有意義でした

今後の展望を示した図表
高橋医院